先進技術を詰め込んだ「スーパースパイク」は中距離走のタイムを最大3.1%短縮するとの研究結果
近年では、厚底のランニングシューズを履いたアスリートがマラソンの世界記録を何度も更新するなど、先進的なランニングシューズが陸上界を席巻しています。新たにマサチューセッツ大学の研究者らのチームが、カーボンファイバープレートなどを使った「スーパースパイク」は、800mから1500mの中距離レースに出場するアスリートのスピードを平均2%、最大3.1%向上させることができると報告しています。
Self-perceived middle-distance race pace is faster in advanced footwear technology spikes - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2095254624001315
New UMass Study Shows that ‘Super Spikes’ Can Increase Track Running Speed by 2% : UMass Amherst
https://www.umass.edu/news/article/new-umass-study-shows-super-spikes-can-increase-track-running-speed-2
Super Shoe Technology Put to The Ultimate Test For Middle Distance Athletes : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/super-shoe-technology-put-to-the-ultimate-test-for-middle-distance-athletes
マサチューセッツ大学アマースト校のウーター・ホーフカマー氏によると、中距離ランナーがスーパースパイクを履くようになったのは2019年頃からで、近年では高いレベルの競技シーンにおいて、ほぼ全てのランナーがスーパースパイクを履いているとのこと。研究チームのモンゴメリー・バーツキー氏は「スーパースパイク」について「厚みがありながらも軽量で、弾力性が高く、しなやかなミッドソールに硬いカーボンファイバープレートが組み合わされていることが一般的です」と述べています。
これまで、ランナーのエネルギー効率やスピードなどの要素を簡単にテストできる短距離レースや長距離レースとは異なり、中距離レースのテストは複雑で、スーパースパイクの優位性については明らかになっていませんでした。ホーフカマー氏は「多くの人が最近のスパイク技術の発展を認めていますが、ランナーが速く走れるのはスパイクのおかげなのか、それとも単にランナーのトレーニング技術が向上しているのか、速く走れるトラックが建設されているのか分かっていませんでした」と指摘。
研究チームは実験用スパイクとしてスーパースパイクに属する「PUMA製の中距離用プロトタイプスパイク」「PUMA製の長距離用プロトタイプスパイク」「PUMA evoSPEED Long Distance Nitro Elite+」「Nike ZoomX Dragonfly」「Adidas adizero Avanti TYO」とスーパースパイクではない「PUMA EVOSPEED DISTANCE 9」を用意し、12人の参加者に対して「800mから1500mのレースで走るようなペースで200m走を行う」という実験を実施しました。
一般的にランナーのパフォーマンスを測定するには、トレッドミルを使って短距離走またはマラソンのペースで走るランナーが吐き出す空気を測定します。しかし、中距離のレースでは、無酸素性エネルギー代謝がランナーにとって重要となり、呼吸だけを測定しても正しい結果が得られません。そこで研究チームは被験者に中距離のレースペースで短距離走を実施させることで、呼気の測定と分析を実施できるようにしたそうです。
実験の結果、PUMA evoSPEED Long Distance Nitro Elite+とNike ZoomX Dragonflyを履いたアスリートは1.8%から3.1%、平均2%のパフォーマンス向上を記録しました。これは、1500mのレースに換算すると最大5秒のタイム短縮が可能なスピードです。また、スーパースパイクがパフォーマンスを向上させる要因について、研究チームは「ランナーの歩幅が広くなる」ことを突き止めています。ホーフカマー氏は「1500mのレースでは、従来のスパイクと比較してスーパースパイクを履いたアスリートは17~21歩少なくなることが示されました」と報告しました。
ニューブランズウィック大学のイーサン・ウィルキー氏は「歴史的に見ても、オリンピックのような競技会において金メダルとそうでないアスリートのレースタイムの差はわずか0.5%未満です。今回の調査で得られた2%というスピードの優位性は、スーパースパイクを履かないランナーに対し大きなアドバンテージになることを示しています」と語りました。
また、これまでの研究で、スーパースパイクは男性よりも女性ランナーにとって有益であることがわかっています。ホーフカマー氏は「2024年のパリオリンピックでは、32の世界記録が更新されました。その一因は、スーパースパイクをはじめとするシューズの性能向上にあります」と主張しています。
・関連記事
「1マイル4分の壁」を超えたエリートランナーは一般人より長生きすることが判明 - GIGAZINE
速く走るためにできることは? - GIGAZINE
最もカロリー消費の激しいオリンピック競技は何か? - GIGAZINE
オリンピックで活躍する人の「アスリート脳」は一般人と何が違うのか? - GIGAZINE
多くのアスリートが大きな大会の後に精神の健康を崩してしまう理由とは? - GIGAZINE
・関連コンテンツ