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本業とは別に200万円以上をサイドプロジェクトで稼いだエンジニアがその一長一短について語る


Pythonコンサルタントのセバスティアン・ウィトウスキー氏が、本業とは別のサイドプロジェクトで200万円以上を稼いだ経験をブログで共有しています。

I've Built My First Successful Side Project, and I Hate It
https://switowski.com/blog/i-have-built-my-first-successful-side-project-and-i-hate-it/

ウィトウスキー氏は欧州原子核研究機構(CERN)でソフトウェアエンジニアとしてのキャリアをスタートし、CERNで作成された出版物のデジタルライブラリーであるCERN Document Serverの構築に携わったという人物です。その後、独立系のPythonコンサルタントに転身し、記事作成時点では金融業界やエネルギー取引業界をメインに活動しています。

そんなウィトウスキー氏は、2020年後半に初めてサイドプロジェクトをスタートさせました。ひとつ目のサイドプロジェクトでは数カ月かけてPython学習用のコースを作成。その後、ハーモニックパターンを用いて株式をいつ買っていつ売るかを判断するためのデイトレード用スクリプトを作成したそうです。

当時、ウィトウスキー氏はデイトレード用ツールとしてTradingViewを利用していたそうですが、これにはハーモニックパターンを描画するスクリプトが存在していなかったため、プロセスを自動化するための開発に着手した模様。これにより取引する株を探すのにかかる時間を大幅に短縮することができたと語っています。

ウィトウスキー氏はこのTradingViewで使えるハーモニックパターン生成スクリプトを販売することに決めます。TradingViewはサードパーティー製のスクリプト販売もサポートしているため、これを用いて決済サービスのGumroad経由でスクリプトを販売し始めたそうです。

ウィトウスキー氏はスクリプトの購入を検討している人に向けて、スクリプトの一部機能を使える機能制限版のスクリプトを無料で配布。この無料版スクリプトでは「いくつかの種類の価格形成しか見つけることができない」「確認できる過去の日数に制限あり」「新しいパターンが現れても自動通知なし」といった制限が存在したものの、一部のユーザーが利用するようになったそうです。そして、ユーザーから制限のないスクリプトがないか尋ねられた場合にのみ、有料版のスクリプトを勧めた模様。さらに、スクリプトを宣伝するためにYouTubeチャンネルも開設しています。

リリースから最初の2週間は何も起こらなかったものの、そのうち少しづつ売上を記録するようになります。一時は月間1000ドル(約14万5000円)の売上を記録したそうで、「自分の作ったものをインターネット上で販売し、報酬を受け取ったのは人生で初めてのことでした。これはとても素晴らしい気分でした」とウィトウスキー氏は記しています。


ユーザーが増えたため、ウィトウスキー氏は「コメントを残してくれたユーザーに有料版の1週間無料トライアルをプレゼントする」というキャンペーンをスタート。すると、ユーザーからのコメントが激増。コメントが投稿されるたび、手動で1週間の無料トライアルをユーザーにプレゼントしたそうです。この無料トライアルから実際に有料版を利用するようになったユーザーもいるものの、ほとんどは有料版を使わず終わった模様。

利用者が増えるにつれ、質問や新機能のリクエストといった問い合わせが増えます。メールでの問い合わせのほとんどが無料版へのアクセスを求める声だったそうですが、中にはスクリプトのソースコードの購入を申し出る人もいたそうです。


また、株式以外に外国為替や暗号通貨の売買に関するヒントを提供するような機能を求める声もあったそうです。これらの問い合わせには、「私は貧乏な学生で、お金を稼ぎたい」だとか「トレードでいくらか損をしたものの、あなたのスクリプトはとてもクールなので、それを使ってお金を取り戻そうと思っている」といった裏話が付いていることもある模様。

ウィトウスキー氏は「いったいなぜ理解もできないランダムなツールにお金を賭けるのでしょうか。そして、インターネット上の見知らぬ人に金融アドバイスを求めるのでしょうか。これは悲しいことです。私はハーモニックパターンが何であるかを知っている人のためにツールを作成しました。これは投資戦略があり、通常は手で描くチャートの描画を自動化するツールだけが必要な人向けのスクリプトです。投資戦略が『5分前に見つけたこのスクリプトによると、この株式は上がるとのことなので、買います』といった人のためのものではありません」と記しています。


スクリプト販売における面倒な出来事として、ウィトウスキー氏は返金問題を挙げています。「サブスクリプションをキャンセルするのを忘れていた」だとか「14日間の返金保証期間が過ぎたもののスクリプトが役に立たないことがわかりました」という理由で返金を求める声には可能な限り応じてきたそうですが、本人の確認不足が原因でウィトウスキー氏側からはどうしようもない問題を理由に返金を求める声もあったそうです。また、盗んだクレジットカードでウィトウスキー氏のスクリプトを購入し、自身の銀行口座に返金させようとする詐欺にも遭遇しています。こういった雑事の対応に徐々に心をすり減らされたと同氏は語っています。

これらの雑事は本業がひまなタイミングでは「少し煩わしく思うレベル」だったそうですが、本業が忙しくなってくると一日中働いた後に対応しなければならず、「燃え尽きてしまった」とウィトウスキー氏は記しています。そもそも本業が忙しくなってくるとデイトレード自体に手を出さなくなっていったそうで、ウィトウスキー氏は「本来は自分のために作ったはずのスクリプトを、自分がそもそも使わなくなってしまった」と記しました。

以下はウィトウスキー氏のスクリプトの売上を時系列でまとめたグラフ。539人がスクリプトを購入し、売上の合計は1万5000ドル(約220万円)以上です。これだけの売上をもたらしたものの、ウィトウスキー氏はプロジェクトを手放したいと思うようになります。それでも「ほとんど何もせずに毎月得られる200ドル(約2万9000円)は素晴らしい不労所得です」と記しました。


ウィトウスキー氏はサイドプロジェクトで学んだこととして、「ほとんどのプログラマーが苦労して学ぶ恐ろしい事実は、製品のリリースは始まりに過ぎないということです。いったん製品が世に出たら、バグを修正し、新機能を実装し、紛争や詐欺に対処し、大量のメール(多くの場合、決して有料顧客にはならない好奇心旺盛なウィンドウショッピング客からのメール)に返信するなど、メンテナンスを行う必要があります。製品の数が多く、サポートを一括して行う場合は、このメンテナンスが簡単になります。プロジェクトがフルタイムの仕事に取って代わることができ、そのメンテナンスが日中の唯一の仕事である場合も、メンテナンスは簡単です。ただし、本業とこのようなメンテナンス作業を並行すると、多くの時間が無駄になります。何らかの制限を設けないと、サイドプロジェクトの作業に利用可能な時間のすべてを取られてしまいます。サイドプロジェクトに取り組むことは、自分がそのプロジェクトのユーザーのひとりであり、それを本当に改善し続けたいと思っている場合、はるかに楽しいものとなります。プロジェクトを愛していれば、それは信じられないほどスムーズで、フルタイムで取り組むという展望は夢の仕事のように思えます。一方で、プロジェクトを維持することに興味がなくなったが満足させなければならない既存の顧客がまだいるといった場合、プロジェクトをサポートすることははるかに困難になります。サイドプロジェクトが心から楽しいものではなく、他に優先すべきことがある場合、境界線を設定することが重要です。私はサポートを有料顧客のみに集中させることにしました。また、新機能の追加もやめ、スクリプトが壊れない限りコードには触れないと自分に言い聞かせました。いつか追加で改善したい点をまとめたリストがありますが、そのリストは削除しました。もちろん、新しい機能を追加して新しい顧客を引き付けることはできます。しかし、それは新しい顧客を引き付けるチャンスであると同時に、さらに多くのコーディングとメンテナンスが必要になることを意味します」と語っています。

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in メモ, Posted by logu_ii

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