スパコンで1年かけてシミュレートしたブラックホールがスパゲッティ化した星を取り込む動画が公開される
宇宙空間に存在する超高密度かつ大質量の天体であるブラックホールは、物質はおろか光さえも脱出できないと考えられています。ブラックホールに取り込まれた物質は強力な重力による潮汐(ちょうせき)力でまるでスパゲッティのように細長い形状に引き延ばされる「スパゲッティ化現象」が起こるとされています。そんなスパゲッティ化現象をモナッシュ大学のダネル・プライス氏らの研究チームがスーパーコンピューターを用いてシミュレーションしました。
[2404.09381] Eddington envelopes: The fate of stars on parabolic orbits tidally disrupted by supermassive black holes
https://arxiv.org/abs/2404.09381
Watch a star get destroyed by a supermassive black hole in the first simulation of its kind
https://theconversation.com/watch-a-star-get-destroyed-by-a-supermassive-black-hole-in-the-first-simulation-of-its-kind-237032
What happens if you throw a star at a black hole? Things get messy (video) | Space
https://www.space.com/black-holes-devoured-stars-messy-simulation
ブラックホールに恒星が取り込まれると、強力な重力を受け、長く細い糸状に引き延ばされます。しかし、スパゲッティ化した恒星が全てブラックホールに取り込まれるという訳ではなく、実際に取り込まれるのはわずか1%にすぎません。残りの99%の物質は宇宙空間に吐き出されることになります。
一般的な万有引力の法則が機能しない超大質量ブラックホールを研究するのは困難で、スパゲッティ化をコンピューターでシミュレートするためには一般相対性理論の効果を網羅する必要があり、これまで研究が進んでいませんでした。
しかし、研究チームはスーパコンピューター「Ngarrgu Tindebeek」の力を借りて、スパゲッティ化する恒星の様子のシミュレーションに成功。シミュレーションの作成には1年以上を要したとのことです。
以下は研究チームが作成したスパゲッティ化する恒星のシミュレーションの様子です。
Tidal SHREDDING of a solar mass star by a black hole ONE MILLION TIMES the mass of the Sun - YouTube
ブラックホールに取り込まれた恒星は一筋の尾を引いてブラックホールに取り込まれます。
しかしその物質の大部分は宇宙空間にそのまま放出されます。
放出された物質が徐々に取り込まれていきます。
物質のほとんどが取り込まれるまで、およそ1年を要しました。
以下の動画はブラックホールから物質が放出される様子を拡大したシミュレーションです。
TIDAL DISRUPTION of a star by a SUPERMASSIVE black hole: Director's cut - YouTube
研究チームは「今回のシミュレーションによって、スパゲッティ化現象の実在とブラックホールが明るく輝く現象の理由を突き止めることができました」と述べています。
なお、今回の研究で用いられたシミュレーションはオープンソース化されており、以下のリンクからダウンロードすることが可能です。
GitHub - danieljprice/phantom: Phantom Smoothed Particle Hydrodynamics and Magnetohydrodynamics code
https://github.com/danieljprice/phantom
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