サイエンス

光すら逃げられないブラックホールに近づくと人間はどうなるのか?

by Ashok Boghani

重力があまりにも大きく、この世で最も速い光でさえも脱出不可能な天体がブラックホールです。ブラックホールは人間が到達可能な距離には存在しませんが、もし仮にブラックホールに人間が近づいたらどうなってしまうのかについて、グリネル大学物理学科のレオ・ロドリゲス准教授とシャンシャン・ロドリゲス准教授が解説しています。

Could a human enter a black hole to study it?
https://theconversation.com/could-a-human-enter-a-black-hole-to-study-it-153364


ブラックホールの大きさは一般的な天体とは異なり、シュヴァルツシルト半径と呼ばれる距離で測定されます。このシュヴァルツシルト半径はおおまかにいうと「ブラックホールの質点から光すら脱出できなくなる範囲の半径」のことであり、この範囲のことを「事象の地平面」と呼びます。

by Leo and Shanshan Rodriguez

ブラックホールを特徴づける物理量は「質量」「角運動量」「電荷」の3つ。このうち質量が大きければ大きいほど、シュヴァルツシルト半径は大きくなります。例えば、太陽と同じ質量のブラックホールである場合、シュヴァルツシルト半径は約2.98kmになります。

また、私たちの太陽系を含む銀河である天の川銀河系の中心には太陽のおよそ400万倍もの質量を持つブラックホールがあると考えられており、このブラックホールのシュヴァルツシルト半径は約1200万kmとなります。

太陽と同じ質量のブラックホールに人間が近づいた場合は、シュヴァルツシルト半径が小さいため、人間の体がブラックホールの質点に向かって「落下」しようとします。この時、潮汐(ちょうせき)力によって頭とつまさきに重力勾配が生じます。ブラックホールの質点に向かって足から落下する場合、足にかかる重力は頭にかかる重力よりもはるかに大きくなり、体は水平方向に圧縮を受けてしまうため、まるで練った小麦粉を引っ張って麺にするように細長く引き延ばされてつぶれてしまうと考えられます。ブラックホールに近づいた物体が細長くなってしまう現象は「スパゲッティ化」あるいは「ヌードル効果」と呼ばれています。

by Leo and Shanshan Rodriguez

一方で、銀河系の中心にあるような超大質量ブラックホールの場合は、シュヴァルツシルト半径が非常に大きいため、潮汐力の影響はほぼゼロになります。事象の地平面に入った時点で、人間はブラックホールの質点に向かって落下していきますが、しばらくはスパゲッティ化することはなく、生きたまま事象の地平面を通過することが可能です。

by Leo and Shanshan Rodriguez

もちろんそのまま超大質量ブラックホールの質点へ落下し、潮汐力の影響が大きくなればスパゲッティ化するかもしれませんが、ブラックホールは天体のガスや塵(ちり)がらせん状になって落下する 降着円盤を形成しており、強力なX線が放射されています。そのため、超大質量ブラックホールに近づくと、人間はスパゲッティ化する前に確実に死に至ります。

ロドリゲス准教授は「ブラックホールへ安全に吸い込まれるためには、『完全に隔離されて、周囲の塵やガス、天体も吸収していない超大質量ブラックホール』を見つけなければなりません」と論じ、「事象の地平線を通過できたとしても、シュヴァルツシルト半径内から地球に向けて発見に関する情報を送信することはできません。吸い込まれた人の旅と発見は宇宙の一部となって失われてしまうことでしょう」と語りました。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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