サイエンス

地球上で最初に「セックス」をした動物はどれ?


繁殖をするのに2つの個体が必要な有性生殖は、一見すると単体で増殖できる無性生殖に比べて不利なように思えます。しかし、人間を含む多くの動物が地球上で繁栄しているのは、2つの遺伝子を掛け合わせることによって生じる多様性が、環境の変化への迅速な適応を可能としてくれたおかげです。現生人類まで連綿と受け継がれてきた「交尾」を最初にした動物はどんな生き物だったのかについて、サイエンス系ニュースサイト・Live Scienceが専門家の話や著書からまとめました。

What were the first animals to have sex? | Live Science
https://www.livescience.com/animals/what-were-the-first-animals-to-have-sex

◆有性生殖
動物は進化の過程で常に有性生殖を行ってきたため、交尾をした最初の動物は「地球上に最初に登場した動物」だと言えます。生物学者らは、そのような動物の直接的な証拠を追い続けていますが、おそらく約8億年以上前の海に出現した海綿動物がそれにあたると考えられています。

海綿動物は無性生殖をすることもありますが、有性生殖をする場合は精子と卵子を水中に放出し、それらが結合して新しい海綿動物の幼生が生まれるというサイクルで繁殖します。


◆減数分裂
最初に有性生殖をした動物は海綿動物かもしれませんが、生物はそのずっと前からお互いの遺伝子を掛け合わせて新しい命を生み出す営みを続けてきました。

「交尾をした最初の動物は、動物になる前からすでに交尾をしていました」と、アイオワ大学の生物学者であるジョン・ログスドン氏は語ります。


ログスドン氏は、動物や植物、菌類といった細胞の中に核を持つ生き物である真核生物が、生殖細胞を作り出す減数分裂を行ってきた形跡をたどることで、有性生殖の歴史をさかのぼる研究をしています。

そんなログスドン氏によると、あらゆる真核生物は減数分裂を行う能力を持っているか、あるいは過去に減数分裂を行っていたとのこと。そのため、人間を含むすべての真核生物の減数分裂は、共通の祖先から受け継がれたものだという推論が成り立ちます。

では、最初の真核生物はいつ登場したのかというと、ログスドン氏は「単純な細菌が何らかの形で遺伝子を交換した始めた約20億年前にさかのぼる」と考えています。

by Carolina Biological Supply Company

◆交尾と体内受精
このように、遺伝子の掛け合わせは太古から行われてきましたが、原始的な生物の減数分裂や海綿動物の精子と卵子の放出は、人間のセックスや動物の交尾とは様子がまったく異なります。そういう意味での交尾の源流を探究している研究者たちは、古代の魚の化石に注目しています。

オーストラリア・フリンダース大学の古生物学者であるジョン・ロング氏は「交尾による親密な有性生殖の最も古い痕跡は、4億1920万年前から3億5890万年前のデボン紀に生息していた板皮類(ばんぴるい)の魚類、例えばミクロブラキウス・ディッキのものです」と話しました。

体内受精が確認された最古の顎口類(がっこうるい)であるミクロブラキウス・ディッキの化石から、オスには交尾のための交接器(クラスパー)が、メスにはそれに対応した交尾板があったことがわかっています。

ロング氏の研究によると、この魚類は交尾の際に腕を組むようにして体肢をつなぎながら並んで泳いでいたため、原始の交尾は水中の社交ダンスように見えたと考えられているとのこと。

by Dr. Brian Coo, Flinders University

ロング氏は2024年の自著「The Secret History of Sharks」の中で、「私たちはセックスの喜びと産みの苦しみの両方について板皮類に感謝しなけれならないでしょう」と語っています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
人類とネアンデルタール人が想定よりも古くからセックスしていたことが判明 - GIGAZINE

古代の人類がどのような交配を行っていたかがシミュレーションから明らかになる - GIGAZINE

ヘリコプターが低空飛行したせいでワニが大乱交を始めてしまう事態が発生 - GIGAZINE

人類のセックスを進化させてきた歴史的な6つの発明とは - GIGAZINE

「セックスする男女をMRIで撮影する」という偉業はどのようにして成し遂げられたのか? - GIGAZINE

「ウナギは泥から自然発生する生物である」「虫の体内から生えてくる生き物だ」など珍説が飛び交ったウナギの研究史を解説するムービー - GIGAZINE

in サイエンス,   生き物, Posted by log1l_ks

You can read the machine translated English article here.