メモ

お金を使えない金持ち「タイトワッド」とは?


「tightwad(タイトワッド)」は日本語で「けち」と訳され、「お金の使い方に困っている人」を指します。アメリカの月刊誌のThe Atlanticが実際にインタビューした事例やマーケティングの専門家による研究などを合わせて、タイトワッドについて分析して解説しています。

The Anxiety of Spending Money You Definitely Have - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/ideas/archive/2024/08/spending-money-finance-anxiety-tightwads/679373/


ミシガン大学のマーケティング教授であるスコット・リック氏は、タイトワッドの研究に長年取り組んでいます。リック氏は著書「Tightwads and Spendthrifts(タイトワッドと浪費家)」の中で、タイトワッドがお金を使うのをケチるのは貧しいからではなく、むしろある程度裕福で貯蓄額も多い人ほどタイトワッドになりがちであると指摘しています。


シカゴ大学のマーケティング教授アビゲイル・サスマン氏は、「私たちの支出は、場合によっては、私たちのアイデンティティと結びついています。そのため、もし私が『自分は散財しない人間だ』と思っているなら、新しいソファなど、生活をより快適にしてくれるかもしれないものにお金を使った場合でも、私自身のアイデンティティが脅かされる可能性があります」と述べています。実際に、経済的な理由ではなく心理的な理由でお金を使うことを避けるタイトワッドは、自分の経済状況についてパニックに近い動揺や罪悪感、ストレスを抱えていることがあるそうです。

The Atlanticはタイトワッドの傾向がある人に取材をして、その実態や心理を追及しています。毎年数十万ドル(数千万円)を稼ぐデビッド・フォックス氏は、新車を購入するために6万ドル(約880万円)を用意していましたが、ディーラーに着いた時には「3万ドル(約440万円)で買える中古車にしよう」と考えてしまった経験を話しています。結果として節約にはなりましたが、その選択から1週間、フォックス氏はパニック発作に悩まされたとのこと。フォックス氏はThe Atlanticの取材に対し、「もし手持ちが足りなかったらどうしよう、もし、もし……という不安が付きまとって、節約に成功して車を買えた喜びよりも、外出しないで最悪の事態に備えようという気持ちが強くありました」と語りました。


また、金融ブロガーのダリウス・フォルー氏は、趣味と運動習慣のためにロードバイクを購入しようと決意してから、実際に購入するまで1年かかったとブログに投稿しました。フォルー氏はロードバイクを買うための十分な貯蓄があるにもかかわらず、店を訪れるたびに「家や車でもないのに、安くないものを買うのか」「趣味として本当にサイクリングは楽しいのか?」「この価格に見合う価値は本当にあるのか?」と悩んでしまい、価格を見るたびに「高すぎる」と感じてしまっていたそうです。最終的にフォルー氏はロードバイクを購入しましたが、当初計画していたものより安いものを選択しました。

リック氏は、多くのタイトワッドは人生の早い時期に経済的に不安な状況を経験しており、現在は貧しくないとしても、貧困のストレスが常に頭から離れないことを発見しました。「お金を使うことへの不安は、やり過ぎないようにするための防御反応なのです」とリック氏は語っています。

作家のデイモン・ヤング氏は回想録の「What Doesn't Kill You Makes You Blacker」で、タイトワッドの感覚を「破産後ストレス障害」と呼んでいます。ヤング氏は作家になる前は年間3万4000ドル(約500万円)を稼いでいましたが、1年後にその職を解雇されました。その後は自宅近くでトラックがバックする音を聞いただけで、「自分の車を差し押さえに来たのかもしれない」と恐怖を感じた経験を述べています。ヤング氏によると、こうした恐怖はローンを全額返済していた場合でも、ある程度稼ぐことができるようになった後でも、なくなることはないそうです。


ニューヨークで金融セラピストを務めるアジャ・エバンズ氏は、貯蓄のある人でも脅迫的な倹約癖や浪費への恐怖を感じる理由として、「いったんお金を使い始めると止められなくなるのではないか」という心配もあると指摘しました。また、大金を稼いでるからと言ってそのお金の管理方法は知らないため、お金の使い方に不安を持つ人もいるとのこと。

小説家のデイビッド・ユン氏は、韓国系移民の両親が必需品以外にほとんどお金を使わなかった経験から、十分な余裕を持ってからも、旅行や外食に抵抗感があるそうです。The Atlanticの取材に対し、「私たちは両親から恐怖を学び、それを自分たちの中に染み込ませたのだと思います」とユン氏は語りました。一方で、ユン氏はクールな上司のようなもう一人の自分を作って、自分に対して意見させることで、キャリアの節目やイベント時には散財するよう言い聞かせてコントロールする方法を明かしました。The Atlanticは「経済的な悩みが頭の中にある場合、それを克服するコツも頭の中にあるのです」と不安を解消する策について述べています。

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in メモ, Posted by log1e_dh

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