サイエンス

本来8日間だったはずのミッションで宇宙飛行士が国際宇宙ステーションから帰還できず最大2025年まで滞在延期になる可能性

by NASA Johnson

現地時間の2024年6月5日、ボーイングの有人宇宙船であるCST-100(スターライナー)の有人試験飛行の打ち上げが行われ、2人の宇宙飛行士が国際宇宙ステーション(ISS)到着しました。ところが、本来は8日間の滞在予定だったにもかかわらず、スターライナーの問題によって宇宙飛行士の帰還が延期されており、2カ月が経過した記事作成時点でも2人はISSに滞在し続けています。

ISS astronauts on eight-day mission may be stuck until 2025, Nasa says | SpaceX | The Guardian
https://www.theguardian.com/science/article/2024/aug/07/spacex-delay-international-space-station-boeing-nasa


NASA Says Boeing Starliner Astronauts May Fly Home on SpaceX in 2025 - The New York Times
https://www.nytimes.com/2024/08/07/science/boeing-starliner-nasa-spacex.html

ボーイングが開発したスターライナーは、ISSや民間の宇宙ステーションに人員を輸送するミッションに使われる予定の有人宇宙船です。本来は2024年5月に有人試験飛行が行われる予定でしたが、ロケット上段のバルブに異変があったとして延期され、6月5日にようやく有人試験飛行に成功しました。

スターライナーは打ち上げ後もヘリウム漏れやスラスターの故障といったトラブルに見舞われましたが、6月6日に無事ISSとのドッキングに成功し、搭乗していたブッチ・ウィルモア氏とスニ・ウィリアムズ氏はISSに滞在することとなりました。


当初、2人の宇宙飛行士は8日間ISSに滞在した後で再びスターライナーに搭乗し、地球へと帰還する予定でした。ところが、試験飛行で判明した推進システムなどの問題を地上で検証し、帰還の安全性をチェックする作業に時間がかかったため帰還が延期されています。ドッキングから2カ月が経過した記事作成時点でも、2人はISSに滞在し続けています。

スターライナーはすでに60日以上もISSにドッキングされ続けており、次の宇宙飛行士を輸送するためのドッキングポートがふさがっています。そのため、8月中旬に予定されていたSpaceXのドラゴン2(クルードラゴン)を用いた宇宙飛行士の輸送が9月24日以降に延期される事態となりました。

by Andrew Roberts

NASAとボーイングはスターライナーの問題を特定するための調査を続け、帰還に向けた取り組みを進めてきました。ところがNASAの当局者は8月7日に、問題は当初考えられてきたよりも深刻であり、宇宙飛行士がスターライナーで帰還しないかもしれないと認めました。

日刊紙のニューヨーク・タイムズによると、地上試験ではスターライナーのスラスターがテスト後に顕著な劣化を示すといった問題が見つかったとのこと。NASAの商業乗員輸送プログラムのチーフであるスティーブ・スティッチ氏は、「私たちにとってこれは少し驚きであり、不安感を増しました」「物理的に何が起こっているのかを理解したいと皆が強く思っています」と述べています。

8月第2週に開催されたNASAの商業乗員輸送プログラムの会議では、ボーイングによるスターライナーの検証データが持ち込まれ、一部の関係者がスターライナーを用いた帰還に反対しました。しかしスティッチ氏は、「私たちは結論を出すための投票をしたわけではありません」と述べ、スターライナーによる帰還にも含みを持たせています。NASAの副管理者であるケネス・バウワーソックス氏も、「私たちはどちらの道を選ぶこともできます」とコメントしています。

ボーイングの広報担当者は声明で、「私たちはスターライナーの能力と、フライトの理論的根拠をまだ信じています。NASAがミッションの変更を決定した場合は、スターライナーを無搭乗帰還させるために必要な行動を取ります」と述べました。

スターライナーでの帰還を諦める場合、2人の宇宙飛行士は今後打ち上げが予定されているSpaceXのクルードラゴンで帰還するとみられます。この場合、本来は4人乗りであるクルードラゴンに2人分の空席を作って打ち上げ、帰還する際に搭乗時から乗っていた2人と、ISSに取り残されていた2人の合計4人を乗せることになります。


Space Studies Instituteの上級アソシエイトであるジェリー・ストーン氏は日刊紙のThe Guardianに対し、実験的な宇宙飛行が問題を起こすのは珍しいことではないと語っています。ストーン氏は、「これは有人試験飛行と名付けられたテストミッションです。その目的のひとつは、予定外の問題に対処することです」とコメントしました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
NASAが月面探査ミッション「アルテミス計画」の有人月面着陸を1年延期し2026年9月に実施へ、理由は「安全のため」 - GIGAZINE

宇宙飛行士は半年宇宙にいるだけで完全回復不可能なレベルの骨量減少に見舞われると判明 - GIGAZINE

長期にわたる宇宙飛行は人の免疫を低下させてウイルス感染症を引き起こす可能性 - GIGAZINE

宇宙に長く滞在すると人間の脳に構造的な変化があらわれると判明 - GIGAZINE

ボーイングの有人宇宙船「スターライナー」は打ち上げられた後に重大なソフトウェアのバグが発見されていた - GIGAZINE

ボーイングの内部告発者が「ボーイング787型機は廃棄すべき」と語る - GIGAZINE

離陸直後にドア落下事故を起こしたボーイング737MAX9は外注部品製造の品質保証がずさんであるという告発 - GIGAZINE

ボーイング 737 MAX墜落事故の原因は安全性向上より納期・コストを重視する社風にあるという内部告発 - GIGAZINE

ボーイングCEOが欠陥機「737 MAX」への対応の不手際により事実上解任される - GIGAZINE

in 乗り物,   サイエンス, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.