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AppleがSafariのデフォルト検索エンジンにMicrosoft Bingを採用することを拒否した5つの理由とは?


2024年8月5日、コロンビア特別区連邦地方裁判所は「Googleはその巨大な規模、高い資本コスト、主要な流通経路の支配などによって競合他社の検索エンジンを事実上締め出している」という判決を下し、Googleの反トラスト法違反を認めました。裁判所は判決の中で、GoogleとAppleの間で結ばれた契約がGoogleの独占的地位を維持する上で重要な役割を果たしていると判断し、AppleがGoogleの競合エンジンであるMicrosoft Bingを採用しなかった理由をまとめています。

UNITED STATES DISTRICT COURT FOR THE DISTRICT OF COLUMBIA Case 1:20-cv-03010-APM
(PDFファイル)https://www.tn.gov/content/dam/tn/attorneygeneral/documents/pr/2024/pr24-59-Google.pdf


‘There’s no price Microsoft could ever offer’: 5 reasons Apple refused to put Bing on Safari | Mashable
https://mashable.com/article/apple-on-bing-antitrust-case

iPhoneやiPad、MacなどのApple製デバイスにはApple製ブラウザのSafariが標準搭載されており、Safariは標準検索エンジンとしてGoogleを採用しています。Googleはこの契約の見返りとして、SafariとChromeを通じて得られる広告収益の一定割合をAppleに支払っているとのこと。2022年にはこの支払いは推定200億ドル(約2兆9000億円)に達したとされています。

Appleは「Google検索を採用する代金」としてGoogleから年間3兆円を受け取っている - GIGAZINE


判決では、AppleがBingなど他の検索エンジンをデフォルトにすることを検討したものの、結果として採用しなかったことにも触れられています。

AppleがBingを採用しなかった理由について、判決では主に以下の5つが述べられています。

1:Bingの検索品質
Appleは2021年にGoogleとBingのベンチマーク調査を実施したそうですが、デスクトップ版のユーザーインターフェースに関してはBingの方が優れていたものの、検索結果の関連性や速度、カバレッジなど他の点ではすべてGoogleがBingを上回っていたと結論づけたそうです。Appleのサービス担当シニアバイスプレジデントであるエディ・キュー氏は「ベンチマークの結果、Bingの検索品質がGoogleに劣ると判断した」と証言しています。


2:Bingの広告収益
MicrosoftはAppleに対し、最終的に「広告収益の100%をAppleに提供する用意がある」とまで言及したとのこと。しかし、Bingの広告収益化能力がGoogleに大きく劣るため、実際の収益額はGoogleとの契約を下回ると予想されました。Appleの分析によると、Googleとの契約を継続した場合は5年間で約400億ドル(約6兆6000億円)の収益が見込まれるのに対し、Microsoftの提案では200億ドル程度にとどまると予測されました。

判決では、Googleは優れたブランド認知度を持っているため、AppleがGoogleをSafariのデフォルト検索エンジンとして維持するインセンティブがあると主張されています。キュー氏は「Googleの検索エンジンが当社の顧客にとって素晴らしい製品であり、Safariで利用できることを顧客に知ってもらいたかったのです」と述べています。

3:ビジネスリスク
すでにGoogleをSafariのデフォルト検索エンジンに設定していたAppleにとって、GoogleからBingへの切り替えには大きなリスクが伴います。ユーザーが慣れ親しんだGoogleの検索体験を変更することで、ユーザー満足度が低下する可能性があります。また、検索品質の低下により、iPhoneなどのApple製品の売上が悪影響を受ける可能性も懸念されました。加えて、Googleとの長年の協力関係を損なうリスクも考慮されたと考えられます。


4:財務的な損失
Appleの内部分析によると、Bingに切り替えた場合、最初の5年間で約100億ドル(約1兆4500億円)の収益損失が予想されました。これは単に検索からの直接的な収益だけでなく、製品販売への潜在的な影響も含めた総合的な予測だと考えられます。この損失は、Appleの事業にとって無視できない規模であり、財務的な観点から大きな障壁となりました。

5:長期的な不確実性
Googleとの契約は、Appleに長期的な収益の安定性を提供していました。一方、Bingへの切り替えは検索エンジン市場の動向、Bingの将来的な成長や改善の可能性、ユーザーの反応など、多くの不確定要素があり、長期的な収益の不確実性をもたらす可能性があります。Appleにとって、安定した収益源を不確実な選択肢と交換するリスクは大きすぎると判断された模様。

キュー氏は「仮にAppleがGoogleとの提携を解消する時は、Appleが『もうGoogleと取引したくない』と考えた場合のみでしょう。Googleとの提携はほぼ確実であるため、それ以外の契約を真剣に検討したことはありません」と証言しています。


なお、コロンビア特別区連邦地方裁判所のアミット・メータ判事は判決の中で、「AIはいつか検索を根本的に変えるかもしれないが、すぐにはそうならないだろう。現時点ではAIはウェブクローリング、インデックス作成、ランキングなど、検索の基本的な構成要素を置き換えることはできない。AI技術が検索市場をどのように変革するかはまだ不確実であり、今後の展開を注視する必要がある」と述べており、AI技術が検索市場に大きな影響を与える可能性を認識しつつも、現時点では従来の検索技術やユーザーデータの重要性が依然として高いという見方を示しています。

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in ソフトウェア,   ネットサービス, Posted by log1i_yk

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