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「本物のスパイはジェームズ・ボンドをどう思っているのか?」を元諜報員の作家が語る


「スパイ」のイメージを想像するとき、「007シリーズ」に登場するジェームズ・ボンドを思い浮かべる人は多いはず。しかし、アメリカの対外情報機関である中央情報局(CIA)やアメリカ国防総省の情報機関であるアメリカ国家安全保障局(NSA)のような秘密情報組織で働いた経験があり、スパイ小説の作家でもあるアルマ・カツ氏は、「ほとんどのプロの情報機関職員は007が好きではなく、真実とは違うことをよく知っています」とボンドについて語っています。

What Do Real Spies Think of James Bond? ‹ CrimeReads
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カツ氏は、NSAとCIAで29年間務めたキャリアがあり、テクノロジー問題を中心に秘密情報や外交政策に関わるさまざまな役職の諜報(ちょうほう)員として活動してきました。さらに、引退後は「Red Widow」「Red London」といったスパイを主役にした小説を執筆し、リアルで質の高い設定が高い評価を受けています。そのため、カツ氏は諜報員としての経験と、作家という立場から大人気キャラクターであるボンドに憧れや嫉妬を交えて、ボンドについて「私は嫌ってはいませんが、愛憎関係にあると言ってもいいでしょう」と語っています。


カツ氏が2024年7月にリリースした「The Spy Who Vanished(消えたスパイ)」シリーズには、ボンドへのカツ氏の思いや考えが含まれているとのこと。シリーズでは「スパイという職業」を検証するような試みをしており、その過程で象徴的な存在であるボンドに触れないわけにはいかなかったとカツ氏は述べています。


「The Spy Who Vanished」の執筆を通して考えた、「ボンドはスパイとしてどう評価されるだろうか」という検証をカツ氏は語りました。カツ氏によると、映画で描かれるようなスパイは、優れた諜報活動とは対極にあるそうです。現実の作戦担当官の主な仕事は、必要な秘密にアクセスできる外国人を説得し、その秘密を明かさせることにあります。秘密を打ち明けさせるための武器は、通常は金銭やイデオロギーであり、スパイは殺人許可証を持って動く暗殺者や破壊工作員ではありません。

また、ボンドと現実のスパイとの大きな違いは、ボンドが単独で動いている点にあります。ボンドには女性の相棒がいたり、道具や情報を提供する協力者はいますが、たいていの仕事を単身でこなします。実際の諜報活動ではチームワークが重視され、さまざまなスキルや専門性の組み合わせに頼ることが一般的だとカツ氏は指摘しています。

ボンドのスパイぶりが現実離れしていることに、現職から意見が上がったことがあります。MI6の名前で知られるイギリスの情報帰還である秘密情報部(SIS)は、2021年にTwitter(現X)で「#ForgetJamesBond(ジェームズ・ボンドを忘れよう)」というキャンペーンを実施しました。以下の投稿は、MI6のリチャード・ムーア長官が「#ForgetJamesBond」というタグを付けてMI6の雇用形態についてせんでんしたもの。また、MI6の元長官らは、ボンドがスパイ活動を宣伝する「優れた採用ツール」であり「強力なブランド」であることを認めつつも、特に女性を勧誘する場合に多様性を阻害する要因にもなってきたと話しています。また、オーストラリア保安情報機構(ASIO)の元長官は、「ボンドのエゴとナルシシズムは、一緒に仕事をする上では難しい性質です」と指摘しました。


さらに、スタンフォード大学の国際問題研究所で上級研究員を務めるエイミー・ゼガート氏は著書「Spies, Lies, and Algorithms(スパイ、ウソ、アルゴリズム)」の中で、「議会の補佐官や軍の指揮官が、作戦計画を策定するために『24 -TWENTY FOUR-』のような『スパイエンターテインメント』を参考にしたことを認めた」という例を挙げています。


カツ氏は「現実世界の専門家の意見を聞いてみてください。私たちはタキシードを着こなして魅力的になれるほど見栄えは良くないかもしれませんが、組織全体としては、画面の向こうのスパイよりも思慮深く、法を守り、プロフェッショナルです」と語りました。

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in メモ, Posted by log1e_dh

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