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ゆったりと寝るための旅行を提供する「スリープツーリズム」ビジネスについて専門家が語る注意点とは?


休みの日には遊びに出かけたり旅行をしたりするのが好きな人もいる一方で、休みの日には休みたいと家にいる人もいるはず。そんな休日には全力で休みたいという人のために快適に眠るためのプランを提供してくれるビジネスが「スリープツーリズム」ですが、スリープツーリズムにはいくつかの注意点もあると睡眠と栄養の専門家が解説しています。

‘Sleep tourism’ promises the trip of your dreams. Beyond the hype plus 5 tips for a holiday at home
https://theconversation.com/sleep-tourism-promises-the-trip-of-your-dreams-beyond-the-hype-plus-5-tips-for-a-holiday-at-home-231718


休息やリラクゼーション、睡眠に特化したスリープツーリズムのビジネスは世界中で出現しています。例えば、オーストラリアのシドニー西部にあるプルマン・シドニー・ペンリスというホテルでは、フェイスマスクやアイマスク、アロマセラピーや選べる枕メニューのほか、睡眠を促進する紅茶などの睡眠セラピーメニューが客室に備わっており、ホテルでの休息を重要視してます。また、スイスのビクトリア・ユングフラウ・グランド・ホテル&スパでは、ヨガや瞑想(めいそう)、栄養アドバイスや睡眠パターン分析などを含む「睡眠プログラム」を企画しています。

ウェルネスツーリズム産業の中でスリープツーリズムという流行は世界中に拡大しており、アメリカの経済紙であるForbesはスリープツーリズムの市場規模が世界全体で8000億ドル(約120兆円)以上と伝えているほか、ドイツのデータ収集プラットフォームのStatistaが提供したデータによると、2027年までにさらなる急成長が見込まれているとのこと。

オーストラリアのセントラルクイーンズランド大学で睡眠と栄養を専門とする上級博士研究員のシャーロット・グプタ氏は、スリープツーリズムが流行している原因を、「私たち全員がいかに慢性的に睡眠不足であるかを示す兆候かもしれません」と指摘しています。グプタ氏によると、成人の3分の1以上が推奨睡眠時間である7時間~9時間を確保できていないとのと。睡眠不足は精神衛生の悪化や心臓病リスク増加など長期的な健康問題につながり、年間450億オーストラリアドル(約4兆円)のコストが睡眠不足によって失われていると推定されています。


スリープツーリズムでは、睡眠に最適化された寝室で、良質のマットレスと枕を使って静かな環境で寝ること、就寝前にリラックスすることなど、良質な睡眠を促す健康的な習慣を提供しています。また、グプタ氏によると、ホテルで宿泊するという行為自体が、日常生活のストレス要因から離れることができるため、睡眠の質を向上させる可能性が高くなるそうです。

一方で、グプタ氏はスリープツーリズムの落とし穴についても指摘しています。人間の脳には睡眠を求める生物学的衝動である「睡眠圧」が蓄積され、睡眠圧が高まると眠くなり、また深く長い眠りに就くことができます。睡眠不足が続いている時は「睡眠圧が高まっている」というストレスに直面しているため、スリープツーリズムによる快適な睡眠を経験すると短期的なストレスは軽減されます。しかし、解消されるのはあくまで蓄積された睡眠圧のみであり、睡眠不足が脳や体に及ぼす影響は元に戻りません。睡眠不足を解消するために「寝だめ」をすることは一定の効果があるものの、埋め合わせにはならないとする研究もあります。

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スリープツーリズムは一時的なストレスを解消できるのみとなりますが、ストレスを解消する目的であっても、適切ではない場合が考えられます。私たちの体は睡眠時間が大きく変化することを好まないため、休日のじっくりとした睡眠が平日の睡眠とのギャップを生むことで、かえって「社会的時差ぼけ」を引き起こして体調が万全でなくなる可能性があります。

そのため、休息を取ることを目的とするならば、スリープツーリズムのように休みの日にじっくり眠ることだけではなく、毎晩一貫して十分な睡眠をとるための環境づくりが重要であるとグプタ氏は結論づけています。自宅で睡眠休暇を過ごすためのヒントとして、グプタ氏は以下の5点を挙げています。


・明るい照明やスマートフォン、PCなど、夜間の明るい人工光を避ける

・清潔な枕とサポート力のあるマットレスでベッドを快適にする

・遮光カーテンで外光をさえぎり、室温を涼しく保つ

・就寝前に暖かいシャワーを浴びたり本を読んだりといったリラックスルーティンを確立する

・良い睡眠習慣の鍵は一貫性であるため、平日と週末の就寝時間と起床時間を同じにするよう心掛ける

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in メモ, Posted by log1e_dh

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