セキュリティ

ランサムウェア攻撃で病院のシステムが停止し輸血や手術が行えなくなる非常事態が発生、ロンドンの複数の病院が混乱に陥り予定されていた分娩もキャンセルに


イギリス・ロンドンの病院で利用されている病理サービスが、サイバー攻撃の影響で使用できない状況に陥りました。影響を受けた病院では病理サービスを利用する手術や輸血を行うことができなくなっており、緊急性の高い救急患者などはサイバー攻撃の影響を受けていない別の病院へ振り替え搬送されています。

Services disrupted as London hospitals hit by cyber-attack | NHS | The Guardian
https://www.theguardian.com/society/article/2024/jun/04/cyber-attack-london-hospitals


2024年6月4日、イギリスのロンドンを拠点とする医療サービスプロバイダーのSynnovisが、ランサムウェア攻撃を受けてすべてのITシステムに影響が発生し、多くの病理サービスで中断が生じたことを発表しました。

サイバー攻撃が病院に入院している患者にも影響を及ぼしているとSynnovisは説明しており、すでに問題が起きていない別の医療機関へ振り替え搬送などが行われています。

SYNNOVIS’ STATEMENT ON THIS WEEK’S CYBERATTACK | Synnovis
https://www.synnovis.co.uk/news-and-press/synnovis-cyberattack


イギリスの国営医療サービス事業である国民保険サービス(NHS)は、Synnovisと協力して問題解決に取り組んでおり、6月4日に公式サイト上で声明を発表。NHSによると、ガイズ・アンド・セント・トーマス病院NHS財団トラストキングス・カレッジ病院NHS財団トラスト、ロンドン南東部のプライマリケアサービスで重大な影響が発生しているとのこと。救急医療は利用可能で、緊急作業が優先される一部の医療行為は別の医療機関に振り替えされているそうです。

NHS England — London » NHS London statement on Synnovis ransomware cyber attack
https://www.england.nhs.uk/london/2024/06/04/nhs-london-statement-on-synnovis-ransomware-cyber-attack/


さらに、NHSは現地時間の6月5日にも声明を発表。NHSの広報担当者は「Synnovisに対するランサムウェアによるサイバー攻撃は、ガイズ・アンド・セント・トーマスNHS財団トラスト、キングス・カレッジ病院NHS財団トラスト、ロンドン南東部のプライマリケアサービスに混乱を引き起こし続けています。すべての緊急および救急サービスは通常通り営業しており、外来サービスの大部分も通常通り運営されています。残念ながら、病理サービスに大きく依存する一部の手術や処置は延期されており、最も緊急性の高いケースでは血液検査が優先されているため、一部の患者の採血予定がキャンセルされています」と説明しています。

NHS England — London » NHS London statement on Synnovis ransomware cyber attack
https://www.england.nhs.uk/london/2024/06/05/nhs-london-statement-on-synnovis-ransomware-cyber-attack-2/


イギリスメディアのThe Guardianによると、Synnovisは血液の分析を行う民間企業だそうで、今回のサイバー攻撃により少なくともひとつの病院で予定されていた出産が、延期あるいは別の病院での計画的帝王切開による出産に切り替えなければいけなくなったそうです。

The Guardianに情報提供した医療従事者によると、ランサムウェア攻撃が感染していないシステムにまで波及することを恐れ、病院側とSynnovisのサーバーとの直接的な通信は記事作成時点では切断されています。Synnovisの研究室は機能しているものの、研究室との連絡は紙のみというアナログな方法に限られているため、緊急を要する血液検査以外はすべてキャンセルあるいは別のサービスへ振り替えざるを得ない状況だそうです。


報道によると、ガイズ・アンド・セント・トーマス病院NHS財団トラストおよびキングス・カレッジ病院NHS財団トラストはSynnovisの血液を分析するための病理サービスを利用しており、これを提供するためにSynnovisは総額11億ポンド(約2200億円)もの報酬を受け取っているそうです。

ガイズ・アンド・セント・トーマス病院NHS財団トラストのイアン・アブスCEOは、6月3日に従業員に対して「我々の病理パートナーであるSynnovisが、火曜日早朝に大規模なITインシデントを経験しました。インシデントは現在も継続しており、我々は現在、SynnovisのITサーバーに接続できません」「これにより我々のサービス提供にも重大な影響が出ており、特に輸血が影響を受けています」というメールを送信しています。

なお、記事作成時点ではSynnovisがサイバー攻撃をいつ解決できるのかは不明です。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
ランサムウェア集団がオークションハウス・クリスティーズの顧客情報50万人分を公開すると脅迫 - GIGAZINE

名古屋港サイバー攻撃事件の首謀者とみられるランサムウェア集団「LockBit」のロシア人リーダーが特定され制裁発動 - GIGAZINE

「初心者でも扱える安価なランサムウェア」がダークウェブで大量に出回っている - GIGAZINE

ランサムウェア攻撃の影響が全米7万カ所の薬局のうち90%以上に波及、ハッカーは6TBのデータを盗んだと主張 - GIGAZINE

ランサムウェアに身代金を支払わない方針をアメリカ主導の国際ランサムウェア対策イニシアチブが誓約 - GIGAZINE

in セキュリティ, Posted by logu_ii

You can read the machine translated English article A ransomware attack caused the hospital&….