AppleがiPhoneを通じて行った最大規模の耳鳴り調査「Apple Hearing Study」で得られた予備的な知見を発表
実際には音がしていないのにさまざまな音が鳴っているように感じる耳鳴りは、不快感をもたらし不眠や聴力の低下といった問題を引き起こします。Appleが2024年5月28日、iPhoneを通じて収集したデータを利用した耳鳴りの大規模調査「Apple Hearing Study」の予備的な調査結果を発表しました。
Apple Hearing Study shares preliminary insights on tinnitus - Apple
https://www.apple.com/newsroom/2024/05/apple-hearing-study-shares-preliminary-insights-on-tinnitus/
Apple Hearing Study shares initial findings on tinnitus – and tips
https://9to5mac.com/2024/05/28/apple-hearing-study-tinnitus/
Appleは2019年にリリースしたApple Researchアプリを通じ、アプリをインストールしたiPhoneユーザーからさまざまな人口統計学的情報や健康状態のデータを収集して、複数の科学研究に役立てています。そのうちのひとつが、ミシガン大学と共同で行っている耳鳴りについての大規模調査「Apple Hearing Study」です。
Apple Hearing Studyは、音への暴露が聴覚やストレス、その他の聴覚関連の健康状態にどういった影響を及ぼすのかを分析することが目的です。研究では、16万人以上のユーザーに耳鳴りの有無やライフスタイルなどのアンケート調査を行い、これまでに約4億時間にわたる環境騒音レベルを収集したとのこと。
研究の結果、人生で耳鳴りを経験したことがある参加者の割合は77.6%に達しました。
また、「毎日耳鳴りを経験している」という参加者は約15%で、その割合は年齢が上がると共に上昇していきました。毎日耳鳴りを聞く割合は、55歳以上の参加者が18~34歳の参加者に比べて3倍も高く、男性参加者の方が女性参加者より2.7%多かったとのこと。その一方で、「一度も耳鳴りを聞いたことがない」という参加者の割合は、男性の方が女性より4.8%高かったそうです。
参加者の大多数は短時間の耳鳴りを報告していますが、14.7%は継続的に耳鳴りが聞こえると報告しています。55歳以上の参加者では継続的な耳鳴りの割合が有意に増加し、なんと35.8%は絶えず耳鳴りが聞こえると述べています。
耳鳴りの大きさについては、34.4%が「気になるほどの大きさ」と回答し、「非常に大きい」「あり得ないほど大きい」と回答した人の割合は8.8%でした。参加者の10%は、耳鳴りが音を明瞭に聞き取る能力を妨げていると回答しました。
Apple Hearing Studyでは「耳鳴りでどのような音が聞こえているのか」を調べるため、アプリベースのサウンドテストも実施しています。参加者の大多数は耳鳴りを「純粋な音」(78.5%)あるいは「ホワイトノイズ」(17.4%)と認識していました。耳鳴りが純粋な音に聞こえると回答した人のうち、90.8%が4000Hz以上の高音が聞こえると感じていたとのこと。また、耳鳴りがホワイトノイズに聞こえると回答した人のうち、57.7%が「安定した音」、21.7%が「コオロギの鳴き声」、11.2%が「エレクトリカルな音」、9.4%が「パルス音」だと報告しました。
耳鳴りを経験する参加者が症状を和らげるために行っていることとしては、「ノイズマシン(心を落ち着かせる音を流す装置)の使用」(28%)、「自然の音を聞く」(23.7%)、「瞑想(めいそう)の実践」(12.2%)などが挙げられました。一方で、耳鳴りを管理するために認知行動療法を選択した参加者は2.1%未満でした。
耳鳴りを引き起こすメカニズムは複雑であるため、予防するための確実な方法や明確な原因を特定することは難しいとのこと。しかし、聴覚を適切に保護したりストレスレベルを管理したりすることで、耳鳴りが起きる可能性を下げることが可能だとAppleは述べています。
Appleは耳鳴りを軽減するため、Apple Watchで周囲の騒音を測定できる「ノイズ」アプリや、AirPods Proのアクティブノイズキャンセリングなどが役に立つと主張しています。また、iPhoneでは「設定」から「サウンドと触覚」を開き、「ヘッドフォンの安全性」の項目から「大きな音量を低減」をオンにすることで、ヘッドフォンやイヤホンから特定のデシベルレベルを超える音を低減できるとのことです。
ミシガン大学公衆衛生大学院の環境健康科学教授であるリチャード・ナイツェル氏は、「耳鳴りは人生に大きな影響を与えるものです。Apple Hearing Studyを通じて得られた耳鳴りの経験についての傾向は、耳鳴りのリスクが最も高いグループをよりよく理解するのに役立ちます。その結果、耳鳴りに関する影響を軽減する取り組みの指針を得ることができるのです」と述べました。
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