サイエンス

ミツバチの数が2017年以降のアメリカで急増している原因とは?


災害や異常気象などの影響を受けて、アメリカでは2000年以降ミツバチの数が大幅に減少していることが報告されていましたが、アメリカ国家農業統計局(NASS)による国勢調査では、近年ミツバチの数が急速な成長を見せていることが明らかになっています。

Wait, does America suddenly have a record number of bees? - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/business/2024/03/29/bees-boom-colony-collapse/


アメリカでは2000年以降、病気や寄生虫、農薬、災害、異常気象などの影響を受け、ミツバチのコロニー数が大幅に減少しており、2020年の冬には、ミツバチの年間損失率が非営利団体「Bee Informed Partnership」による2010年の調査開始以来、最高となる37.7%を記録したことが報告されています。

しかし、NASSによる調査では、2007年以降ミツバチはアメリカ国内で最も急速に成長している家畜で、その数は2007年から2022年にかけて31%増加していることや、380万個ものコロニーが存在することが明らかになりました。The Washington PostがNASSのデータをもとに、2007年以降の家畜の増減割合をグラフ化したものが以下。バーが黄色く表示されているのは減少傾向にある家畜、バーが青く表示されているのは増加している家畜で、ニワトリやアヒルも増加しているのですが、ミツバチの増加率は群を抜いています。


NASSによる調査ではミツバチのコロニーは急速な増加傾向にあることが示された一方で、アメリカ合衆国農務省(USDA)のミツバチの年次レポートでは、実際にはミツバチのコロニー数が減少傾向にあることが確認されています。以下はThe Washington PostがNASSの調査結果とUSDAのレポートを1枚にまとめたグラフで、NASSのデータが濃い茶色、USDAのデータが薄い黄色で描かれています。NASSの数値はミツバチのコロニー数が2002年以降増加し、2017年にいったん落ち込んだものの、2022年に過去最高に増加したことを示している一方、一方、USDAの数値は、2017年以降減少傾向にあります。


この要因について、農務省のエコノミストであるスタン・ダバーコウ氏は「NASSの調査は1000ドル(約15万円)以上の農産物を販売する国内の全ての農場を対象としている一方で、USDAのレポートは5つ以上の巣箱を持つ大規模な養蜂家に焦点を当てている」と指摘。ダバーコウ氏によると、NASSによる「1000ドル」という定義は調査が始まった1975年以降変更されていないとのことで、近年のインフレによってハチミツの価格や受粉料などが増加するにしたがって調査対象に含まれない小さな農場でも次第にNASSによる調査対象に含まれていく可能性があるそうです。

このような小規模養蜂家はテキサス州などの州で急速に増加しており、テキサス州では2012年以降、5エーカー(約2万平方メートル)から20エーカー(約8万平方メートル)の土地でミツバチを5年間飼育することで農業税制優遇措置の対象となる制度を導入しています。この結果テキサス州では養蜂家の数が爆発的に増加し、2012年から2022年にかけてその数は4倍以上になっています。


こうした取り組みは人為的な受粉が必要な農作物にも良い影響を与えており、アメリカではミツバチの増加によってアーモンドの収穫量が急速に増加傾向にあるそうです。実際に以下のグラフでは2007年以降、濃い色で示されたアーモンドの作付面積が右肩上がりに広がっていることがわかります。


一方でBee Informed Partnershipの調査では、2022年から2023年4月までの1年間で調査対象の養蜂家はミツバチのコロニーの半数を失い、調査開始以来過去2番目に高い損失率を記録したことが報告されています。それでも、頻繁な入れ替えや女王蜂の入れ替え、徹底した病原菌への対処などの管理を実施してこれらの損失に対抗しているとのこと。

しかし、ビンガムトン大学の昆虫学者イライザ・グラメス氏は「養蜂家によるミツバチの管理はチョウやガなどの花粉媒介者となる在来種にとって良いことではありません」と指摘。グラメス氏によると、養蜂家の下で飼いならされたミツバチはアメリカに住む4000種もの花粉を媒介する在来種にとって脅威となり、その40%が絶滅寸前だとのことです。


昆虫保護団体であるXercesで花粉媒介者と農業の生物多様性を説くメイス・ヴォーン氏は「ミツバチと養蜂家の両方を支援しながら、在来の花粉媒介者を救う方法は、農場や庭に花が咲き乱れる美しい生息地を作ることです」と述べました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「光や温度が制御された人工施設内でミツバチを飼育する実験」にはどんな意義があるのか? - GIGAZINE

ミツバチは「波が一切立たない湖面」の上では突然墜落する、一体なぜ? - GIGAZINE

「ミツバチは魚である」という判決が下る - GIGAZINE

ミツバチは木製ボールをコロコロ転がす遊びに興じることが研究で明らかに - GIGAZINE

ネアンデルタール人が遺体と一緒に花を埋葬したという痕跡は「ミツバチの気まぐれ」によって作り出された可能性 - GIGAZINE

in サイエンス,   生き物, Posted by log1r_ut

You can read the machine translated English article here.