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ロゼッタ・ストーンには実際に何が書かれていてなぜ歴史学の研究で重要な役割を果たしたのか?


ロゼッタ・ストーンはエジプトの地中海沿岸にある都市・ロゼッタで1799年に発見された石柱で、19世紀初頭から大英博物館で一般に公開されています。そんなロゼッタ・ストーンの解読の歴史と重要性について、YouTubeチャンネルのTED-Edがアニメーションで解説しています。

Why was the Rosetta Stone so important? - Franziska Naether - YouTube


1799年、ナポレオン・ボナパルトのエジプト遠征中、フランス軍兵士ピエール=フランソワ・ブシャール大尉がエジプトのロゼッタ(ラシード)という都市で発見した石がロゼッタ・ストーンです。


ロゼッタ・ストーンは3つの異なる種類の言語でテキストが記載されていました。


一番上は古代エジプトで用いられた、「神聖文字」とも呼ばれるヒエログリフ。主に象形文字となっています。


2つ目はデモティック。ヒエログリフが石に刻むための文字なのに対し、デモティックは筆記用の文字として古代エジプトで作られたと考えられています。


一番下が古代ギリシャ語です。


この石を回収したイギリス軍は国に持ちかえり、1802年には大英博物館で展示され人気の展示品となりました。


大英博物館に持ち込まれて以降、イギリスの物理学者であるトマス・ヤング、スウェーデンの外交官であるヨハン・ダヴィド・オケルブラッド、フランスの古代エジプト研究者であるジャン=フランソワ・シャンポリオンなどが、ロゼッタ・ストーンに刻まれた文字の解読に取り組みました。


重要なポイントとして、一番下の古代ギリシャ語のセクションには、プトレマイオスやアレキサンドロス、アルシノエという王家の名前など、人物名が含まれていました。そのため、ヒエログリフおよびデモティックのセクションにも同じ名前が含まれると考えられ、どのような文字でどの名前を表現しているか判明すると、言語を理解する大きなヒントになります。


デモティックのセクションには、カギ括弧のような形で区切られたセンテンスが何個かあります。


また、ヒエログリフにおいては、丸で囲まれたセンテンスがいくつかありました。


そのため、オケルブラッドはこれらのセンテンスを王の名前であると仮定し、古代ギリシャ語で読み取れた名前と照合を行いました。すると、その照合結果から「MUCH(たくさん)」や「TEMPLES(寺院)」など、デモティックテキスト内の簡単な単語を追加でいくつか解読することに成功しました。照合結果から単語を解読できたということは、デモティックはアルファベットと同じように各文字が個別の音を表していると考えることができます。


対照的にヤングは、デモティックを表音文字ではなく表語文字、つまり単語やフレーズ全体をコード化した記号であると考えました。最終的にはオケルブラッドの考えが正しく、ヤングはデモティックおよびヒエログリフが表音文字ではなく表語文字だという誤解を信じていましたが、ヤングはヒエログリフのテキストを研究することで、ロゼッタ・ストーンのヒエログリフから「プトレマイオス」という名前を解読することに成功しました。


シャンポリオンは他の文字や言語の知識を活用して、丸で囲まれたヒエログリフのほとんどが表音文字であることに気づいたそうです。例えばハゲワシは「A」、キツネの皮3つの絵は「MES」という音など、1つの象形文字は1つの音を示しています。これにより、シャンポリオンは「ラムセス」「トトメス」という王の名前を解読しました。


そして1822年、シャンポリオンはヒエログリフの解読結果を発表し、今では「古代エジプト学の父」と呼ばれています。シャンポリオンはほとんどのヒエログリフが表す音を解読したことに加えて、一部の象形文字は単語を「職業」「植物」「抽象概念」などのカテゴリーに分類する類別詞であることも発見しました。


ロゼッタ・ストーンの内容に関する最初の英語訳は、ペンシルベニア大学の有志が出版した「Report of the committee appointed by the Philomathean Society of the University of Pennsylvania to translate the inscription on the Rosetta stone(ペンシルベニア大学フィロマト会により任命された、ロゼッタ・ストーンのテキストを翻訳する委員会の報告書)」で報告されました。


ペンシルベニア大学の報告書によると、ロゼッタ・ストーンのテキストには「紀元前196年」と時期が記されています。その年に13歳を迎えたファラオであるプトレマイオス5世の戴冠1周年を記念して、エジプトの司祭がどのような恩恵をもたらすかなどが記録されています。またその他、寺院の維持や神聖な動物の埋葬など、儀式を行うための法律が記載されています。


当時のエジプトは、エジプトを征服した人たちがもたらした古代ギリシャ語と、伝統的な2種類のエジプト語が主に用いられる多文化社会でした。そのため、法令は多くの石に3種類の言語で書かれ、石碑としてさまざまな寺院に建てられました。その後、寺院の取り壊しや再建などが繰り返されて残った石碑が、ナイル川を通って地中海沿いのロゼッタまで流れ着いたものがロゼッタ・ストーンであると考えられています。


かつて、エジプトのピラミッドにある地下室は聖職者としての入門と研究を行う秘密の空間だと考えられていました。しかし、ロゼッタ・ストーンによってヒエログリフが解読可能になったことで、ピラミッド自体が死後の世界への神聖な準備をするための墓だとわかりました。このような古代エジプト文化に関するいくつかの誤解が、ヒエログリフの解読によって解消されています。

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in 動画, Posted by log1e_dh

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