500年越しに神聖ローマ皇帝の暗号が解読される、極秘の暗号文の内容とは?
1519年に19歳の若さで神聖ローマ皇帝に即位したカール5世は、神聖ローマ皇帝とスペイン国王を兼任し、40年以上にわたる在位中に西ヨーロッパとアメリカの大部分を支配下に収める「太陽の沈まない帝国」を築いた16世紀で最も力ある人物の1人でした。そんなカール5世が残した暗号文が解読され、その内容が約500年の時を経てよみがえったことが報告されました。
It took nearly 500 years for researchers to crack Charles V’s secret code | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2022/11/cracking-charles-vs-secret-code-reveals-suspected-assassination-attempt/
Emperor Charles V's secret code cracked after five centuries | Spain | The Guardian
https://www.theguardian.com/world/2022/nov/24/emperor-charles-vs-secret-code-cracked-after-five-centuries
French Scientists Decode 500-Year-Old Letter Of King Charles V
https://www.ndtv.com/offbeat/french-scientists-decode-500-year-old-letter-of-king-charles-v-3564229
今回解読されたのは、カール5世がフランス王国に派遣した大使であるジャン・ド・サン=モーリスに宛てた1547年の手紙です。
カール5世の署名と共に謎めいた暗号文が記されたこの手紙は、フランスのナンシー市立図書館の所蔵品になってから長らく忘れ去られていましたが、その存在を聞きつけた暗号学者のセシル・ピエロ氏によって見つけ出されました。
コンピューターを駆使して解読にあたったピエロ氏によると、カール5世が残した暗号は120の記号で構成されているとのこと。しかし、それらの記号は単純にアルファベットや数字に置き換えられるわけではなく、1つの記号が丸ごと1つの単語を意味していたり、解読者を欺くために全く意味のない記号が紛れ込ませてあったりと、複雑を極めるものでした。
難航した解読作業の突破口となったのは、フランスと神聖ローマ皇帝の関係に詳しい歴史家のカミーユ・デザンクロ氏が研究チームに示したもう1つの暗号文です。フランスのブザンソンに保管されていたその暗号文は、カール5世から手紙を受け取った人物によって非公式に解読が行われていたので、古代エジプトのヒエログリフ解読の鍵となったロゼッタ・ストーンのように重要な手がかりとなりました。
ピエロ氏はインタビューに対して、「単にコンピューターに入力して計算させるだけでは、文字通り宇宙の歴史より長い時間が必要だったでしょうね」と振り返っています。
ピエロ氏らの研究チームは、今回解読できたカール5世の暗号文を論文にまとめて発表する予定なので手紙の全容はまだ明かされていませんが、手紙は執筆当時の数週間前にイングランド王のヘンリー8世が死去し、ドイツでシュマルカルデン同盟というプロテスタントのグループが反乱を起こしたことを受けて書かれたものだとのこと。
マルティン・ルターによる宗教改革に手を焼いていたカール5世は、在フランス大使に宛てた手紙の中で、「同盟との戦いに戦力を集中させるべくフランスと和睦を結びつつ、イギリスやフランスが同盟に援助を送るのを阻止したい」との意向を示した上で、フランス宮廷の動向を細大漏らさず把握するよう指示しました。
またカール5世は、フランスで神聖ローマ皇帝の暗殺計画が企てられており、自分がイタリアのコンドッティエーレ、つまり雇い兵のリーダーであるピエール・ストロッツィに狙われているといううわさに言及し、情報の真偽を可能な限り詳細に調べるよう大使に命じています。
研究チームは、数年かけてカール5世が書いた他の手紙も解読して、ヨーロッパにおけるカール5世の政治戦略を明らかにしたいと考えており、デザンクロ氏は「今後、さらに多くの発見があるでしょう」と話しました。
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