メモ

赤い丸に斜線を引いた「禁止」シンボルはいつどうやって生まれたのか?


赤い丸を斜めに分割するように斜線を入れたシンボルは、「禁止」や「NG」という意味でしばしば用いられます。日本の道路標識に見られるほか、アメリカ特許商標庁(USPTO)にはこのシンボルを前提としたデザインが数多く含まれており、複数の国でシンボルの大まかな意味が理解されていることがわかります。このシンボルがどのように生まれてなぜ広まったのか、ニュースレター配信サービスのTediumが解説しています。

The No Symbol: The History Of The Red Circle-Slash
https://tedium.co/2024/03/09/red-circle-slash-no-symbol-history/


「赤い丸と斜線」は主に禁止を意味するシンボルとして使用されています。例えば日本の道路標識では赤丸と斜線だけの標識を「車両通行止め」としているほか、中央にさまざまな乗り物の絵を入れることで「当該車両通行止め」、矢印を組み合わせて「横断禁止」「転回禁止」など、さまざまに組みあわせながら禁止を意味するシンボルとして用いられています。


また、アメリカのコメディ映画「ゴーストバスターズ」では以下の画像のように、ゴーストのキャラクターと赤丸&斜線を組み合わせたシンボルをパッケージ等で使用しました。このことから、赤丸と斜線で「禁止」や「NG」を意味するシンボルは、世界である程度共通して理解されるものだということがわかります。


Tediumはこの禁止シンボルの起源についてアメリカ国内にある新聞のアーカイブで調べてみたところ、1970年代以前の情報はほとんど確認できなかったそうです。この理由についてTediumは、「禁止を示すシンボルは、アメリカ的なアイデアではありません」と推測しています。

アメリカにも赤丸と斜線で立ち入り禁止を示す道路標識はありますが、最も一般的なものは、赤い標識に「STOP」と書かれたもの。アメリカでは英語がほぼ単一の公用語として使用されているため、「STOP」という文字で示したとしても、ほとんどの地域でまったく問題なく理解されます。そのため、道路システムが構築された際に、英語が読めることをある程度前提としたシステムになったとTediumは指摘しています。


一方で、ヨーロッパ諸国では公用語だけで約24種類の言語が使用されていることから、看板には特定の言語ではなく、シンボルを主に使用する傾向にあったとのこと。

アメリカ中西部における主要な新聞であるシカゴ・トリビューンで編集者を務めたハル・ファウスト氏は1962年の論説で、「アメリカ人はヨーロッパを訪れても外国の交通標識を読むのにほとんど苦労しません。しかし、アメリカを訪れる毎年50万人のヨーロッパ人は、英語で書かれた標識に苦労する可能性が高いです。アメリカ人は、自国以外の言語に無関心であることで有名です」と述べていました。

ヨーロッパの道路標識について、Tediumは以下の2種類を示しています。以下の画像左は、1929年頃のドイツで「駐車禁止」を示すために用いられた道路標識を再現したもの。画像右は、1937年頃の「駐車禁止」。これによると、ドイツでもアメリカ同様に文字で示していたものが、シンボル主体に変化したことがわかります。


1931年3月に当時の国際連盟は、世界で急速に発展する道路交通管理の一貫として、道路標識の統一に関する条約を示しました。その議論の中で「多くの自動車運転者は、三角形は危険標識、円は情報標識として慣れ親しんでいました。したがって、これらの形状とともに、非常に単純な記号コードを採用することを推奨します」と記録が残されています。

会議では具体的なシンボルについても議論されており、当時の記録によると、「駐停車禁止」と「駐車禁止」の両方で赤い丸と斜線のシンボルが採用されています。ここでの決定は標準化する強制力を伴うものではありませんが、重要な出発点になりました。


ヨーロッパでは1930年代から広まりましたが、アメリカでは1970年代初頭からようやくこのシンボルが使われるようになりました。1984年に国際標準化機構が安全基準としてシンボルを組み込んだことと、同年に「ゴーストバスターズ」が公開され高い人気を得たことで、このシンボルはアメリカの大衆文化でさらに浸透したとTediumは指摘しています。

赤丸と斜線で示されるシンボルについて研究することを難しくしている理由に、その明確な名前がないことが挙げられます。アメリカのコネチカット州で主に発行される日刊紙であるハートフォード・クーラントで2016年にコラムを掲載したロブ・キフ氏は、「とあるデモに関するニュースにおいて『デモ参加者の多くは、円の中心に斜線が入ったゴーストバスターズのロゴと同一のステッカーを着用していた』と記述がありました。多くの人が理解できる単純なシンボルにもかかわらず、このシンボルにはスマートな表現がありません」と述べました。Tediumは「何でも検索して調べることができる現代において、私たちは視覚的なシンボルについて調べることが、依然として得意ではありません」と語っています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
ウィンドウを閉じる「×」ボタンはいつから使われるようになったのか? - GIGAZINE

なぜマウスカーソルはまっすぐではなく少し傾いているのか? - GIGAZINE

現代生活の必需品である「ボールペン」はどのように生まれて受け入れられていったのか? - GIGAZINE

マイクロフィルムの不思議な歴史、伝書鳩からマンガ本まで - GIGAZINE

「BMP」や「PCX」など忘れ去られた画像ファイル形式10選 - GIGAZINE

in メモ, Posted by log1e_dh

You can read the machine translated English article here.