新型コロナウイルスによる死亡率と州の党派意識は強く関係していることをエキスパート統計学者ネイト・シルバーが示す
アメリカでは、保守系の共和党とリベラル系の民主党による2大政党制が敷かれており、ミネソタ州では共和党支持傾向、オクラホマ州では民主党支持傾向が強いように、州によって支持政党が異なることが特徴です。アメリカの著名な統計学者であるネイト・シルバー氏が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡率と州の支持政党が強く関係していることを示しています。
Fine, I'll run a regression analysis. But it won't make you happy.
https://www.natesilver.net/p/fine-ill-run-a-regression-analysis
2020年初頭に始まったCOVID-19の流行ですが、アメリカではワクチン接種が始まるまで州の共和党支持・民主党支持傾向に関わらず、COVID-19による死亡率に差はほとんどありませんでした。
しかし、ワクチン接種が開始された2021年以降は、ワクチン摂取率が低かった共和党支持傾向が強い州での死亡率が高くなりました。
実際に、共和党支持傾向が非常に強いウエストバージニア州での、人口100万人当たりのCOVID-19での死亡者数は3454人と概算された一方、共和党支持傾向が強いフロリダ州では2992人、民主党支持傾向が強いメーン州では1881人、民主党支持傾向が非常に強いバーモント州では1210人と、共和党支持傾向が強い州におけるCOVID-19の死亡率が高くなっていることが確認されています。なお、これらの州における高齢者人口はほぼ同じとのことです。
この主張を裏付けるために、シルバー氏は回帰分析を実行しました。手始めにシルバー氏は、州の支持政党がCOVID-19による死亡率を変化させることを確認するため、単回帰分析を実行。その結果、COVID-19用のワクチンが広く国民に接種され始めた2021年2月以降、共和党または民主党を支持する州におけるCOVID-19の死亡率が有意に変化していることが確認されました。
さらに、65歳以上の州の人口割合を分析に加える重回帰分析を実行したところ、確かに高齢化が進む州ではCOVID-19による死亡率が有意に上昇していることが明らかになりました。しかし、この結果がCOVID-19による死亡率と州の党派意識との関連性に影響することはなく、年齢を問わず州の党派意識によって死亡率が変化していることが示されました。
シルバー氏によると、COVID-19による死亡率はワクチンを接種しないと高まるとのこと。また、これまでの調査で、共和党支持者は民主党支持者に比べてCOVID-19のワクチン接種率が比較的低いことが明らかになっています。これらを合わせると、共和党支持か民主党支持かという、州の党派意識はCOVID-19による死亡率の高さを如実に表すそうです。
また、年齢とワクチン接種率だけでCOVID-19による死亡率の変動をほとんど説明できることから、異なる地域間のCOVID-19による死亡率に影響を与える要因として、シルバー氏は「年齢とワクチン接種状況」を指摘しています。
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