米粒の中で牛の細胞を培養して作った「ハイブリッドビーフライス」が登場、普通の米より高タンパクで肉より環境に優しい食材
米粒で家畜の細胞を培養することで、環境負荷や価格を抑えつつ栄養価を高めたハイブリッド米を開発することに成功したと、韓国の研究チームが発表しました。
Rice grains integrated with animal cells: A shortcut to a sustainable food system: Matter
https://www.cell.com/matter/abstract/S2590-2385(24)00016-X
By growing animal cells in rice grains, scien | EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/1033922
Scientists Invent New Hybrid Food by Growing Beef Inside Grains of Rice : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/scientists-invent-new-hybrid-food-by-growing-beef-inside-grains-of-rice
「細胞から培養された『タンパク質米』で生きるのに必要な栄養素をすべて得られることを想像してみてください。米は元から栄養が豊富ですが、家畜の細胞をプラスすることで栄養価をさらに高くすることが可能なのです」と話すのは、韓国・延世大学のソヒョン・パク氏です。
多孔質なことから細胞が成長する足場として最適な上に、培養に必要な栄養素も豊富な米に目を付けたパク氏らの研究チームは、米を使って動物細胞を増殖させる研究に着手しました。
研究チームはまず、米を魚ゼラチンと食物酵素でコーティングしました。魚ゼラチンは食品グレードの素材で、細胞が米粒にしっかりと定着できるようにする働きがあります。そして、米に牛の筋肉と脂肪の細胞を加えてペトリ皿で9~11日間培養した結果、食物アレルギーを起こしにくいという米の特徴と、動物性タンパク質をはじめとする牛肉の栄養価を併せ持つハイブリッド食品が誕生しました。
できあがったハイブリッド米の特徴を調べるため、サンプルを炊いて栄養価を分析したところ、ハイブリッド米は普通の米よりタンパク質が8%、脂質が7%多いことが判明しました。研究チームによると、調整によりさらに栄養価を高めることができるとのこと。
また、筋肉細胞の比率が高いハイブリッド米には牛肉やアーモンドと関連した臭気化合物が含まれていることや、脂肪細胞の含有量が多いハイブリッド米にはクリームやバター、ココナッツオイルのような化合物が含まれていることもわかりました。一方、食感はもちもちした普通の米に比べて固く、ぼそぼそしていたそうです。
培養肉を生産するための現行の技術には、普通の食肉を生産するよりも大量の二酸化炭素が発生する上に、できあがった培養肉は非常に高価だという課題があります。
実験室で育てる「培養肉」は本物の牛肉の最大25倍も環境に悪いことが判明、安価かつ低エネルギーで培養する技術に課題 - GIGAZINE
一方、研究チームが生産されるタンパク質100g当たりの二酸化炭素(CO2)を計算したところ、牛肉が排出するCO2が49.89kgなのに対し、ハイブリッド米は6.27kgしかありませんでした。また、ハイブリッド米が実用化されれば1kg当たり2.23ドル(約334円)で生産することが可能なので、14.88ドル(約2200円)する牛肉に比べて家計にも優しい食材になるとみられています。
パク氏は「米で培養した細胞がこれほど順調に成長するとは思っていませんでした。この穀物ベースのハイブリッド食品は、いつか食糧難対策や軍用レーション、宇宙食などに役立てられるかもしれません」と話しました。
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