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フィリップスが2009年から2021年に製造した人工呼吸器をリコール、関連が疑われる死亡例が561件あり補償は700億円以上に


睡眠時無呼吸症候群のCPAP(持続陽圧呼吸)療法で用いられるフィリップスの人工呼吸器に、内部のポリウレタンフォームが剥離して装置使用者が吸い込んだり飲み込んだりする不具合があることがわかりました。フィリップスは数百万台を対象としてリコールを行っていますが、これまでに関連が疑われる死亡報告が561件あるとのことです。

UPDATE: Certain Philips Respironics Ventilators, BiPAP Machines, and CPAP Machines Recalled Due to Potential Health Risks: FDA Safety Communication | FDA
https://www.fda.gov/medical-devices/safety-communications/update-certain-philips-respironics-ventilators-bipap-machines-and-cpap-machines-recalled-due


Philips Kept Complaints About Dangerous CPAP Machines Secret While Company Profits Soared — ProPublica
https://www.propublica.org/article/philips-kept-warnings-about-dangerous-cpaps-secret-profits-soared

FDA says 561 deaths tied to recalled Philips sleep apnea machines - CBS News
https://www.cbsnews.com/news/fda-sleep-apnea-philips-recall-cpap/

フィリップスは2021年6月、人工呼吸器に対して不具合の指摘があったことでリコールを行いました。このとき「問題の潜在的重大性を知り、ただちに行動した」という声明を発表しています。

Philips Respironics recall notification/field safety notice* announced on June 14, 2021
https://www.documentcloud.org/documents/23990842-rp-faq


しかし非営利ニュースサイト・ProPublicaとPittsburgh Post-Gazetteの共同調査によると、フィリップスはアメリカ食品医薬品局(FDA)から11年間で3700件以上の苦情を受け取りながら、対応していなかったとのこと。

苦情が出始めた2010年は、フィリップスが当該機器の内部にソファやマットレスに用いられるのと同様のポリウレタンフォームを詰め込んだ静音設計に変更したタイミングでした。


この直後から「機械内部に汚れがある」「チリが付着する」「変な油がついている」などの報告が出始めたとのこと。中には、具体的に「ポリウレタンフォームがバラバラになっているのではないか」と指摘する意見も2015年末までに少なくとも25件はあったことがわかっています。使用されていたポリウレタンフォームについて、アメリカで行われた検査では呼吸器疾患やがんとの関連が指摘されているホルムアルデヒドが含まれていることがわかっています。

なお、医療機器が患者の死亡や重傷に関与したり、誤作動を起こした可能性があるとき、機器メーカーはFDAに医療機器報告書(MDR)を提出する必要があるのですが、フィリップスが「ポリウレタンフォームの劣化」に関連する事象があったとして提出したMDRは2011年から2021年4月までの約10年間で30件で、いずれも患者の死亡や負傷の報告はありませんでした。

一方、FDAが2021年4月から2023年9月までに受領したMDRの総数は11万6000件以上あり、そのうち「ポリウレタンフォームの劣化や破損」に関連すると疑われる死亡報告は561件あったとのこと。

フィリップスの対応が遅れたことについて、ProPublicaとPittsburgh Post-Gazetteは、当該機器のもたらす収益が大きかったためだと指摘しています。

リコールが遅れた結果、問題を抱えたまま出荷された人工呼吸器の数はアメリカほぼ全域と数十カ国で数百万台に上るとみられています。

今回のリコールを巡っては集団訴訟が起こされ、2023年9月に和解に至っていて、リコール対象機器の購入・リース・レンタルに関わった金銭的な損失の請求が可能となっています。具体的には以下の3点です。

・購入・リース・レンタルされたリコール対象機器1台につき代金補償1万ドル(約149万円)
・2024年8月9日までに返却されたリコール対象機器1台につき機器返却補償費100ドル(約1万4900円)
・2021年6月14日以降、2023年9月7日までにリコール対象機器と交換するために同等機器を購入するのに要した機器交換費実費

フィリップスは少なくとも4億7900万ドル(約711億円)を支払うことが決まっています。

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in ハードウェア, Posted by logc_nt

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