長時間通勤がメンタルヘルスの悪化と関連しているという研究結果
通勤時間はできるだけ短い方が良いと思う人は多いはずですが、家賃や住環境などの兼ね合いから、どうしても長時間通勤が避けられないこともあります。韓国の研究チームが2万3000人以上を対象に行った研究では、「1時間以上かけて通勤する人は通勤時間が30分未満の人と比べ、抑うつ症状を経験するリスクが16%も高い」という結果が示されました。
Association between commuting time and depressive symptoms in 5th Korean Working Conditions Survey - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2214140523001676
Commuting over 60 minutes increases depression risk by 1.2 times: study < Hospital < Article - KBR
https://www.koreabiomed.com/news/articleView.html?idxno=22721
Massive Study Finds a Link Between Commuting And Poor Mental Health : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/massive-study-finds-a-link-between-commuting-and-poor-mental-health
近年では、長時間通勤が人間の心身にさまざまな悪影響を及ぼすことが複数の研究で示されています。たとえば、通勤に週5時間以上を費やしている人は運動不足や睡眠障害を抱えている可能性が高いという研究結果や、通勤時間が20分増えると仕事の満足度が「給与が19%減少する」のと同じくらい減るという研究結果が報告されています。
韓国はOECD(経済協力開発機構)諸国の中で最も平均通勤時間が長く、抑うつ症状がある人の割合も最も高いといわれています。そこで仁荷大学校やソウル大学校の研究チームは、通勤時間の長さと抑うつ症状の関連性について研究しました。
今回の研究で用いられたデータは、2017年に実施された第5回韓国労働状態調査で収集されたものです。研究チームは20~59歳の給与労働者2万3415人を対象に、通勤時間・抑うつ症状・性別・年齢・学歴・収入・居住地・婚姻状況・子どもの有無・職業・週の労働時間・交代勤務の有無などの項目を分析しました。
被験者の平均通勤時間は1日あたり47分で、1週間に5日働いたとすると1週間あたりの通勤時間は約4時間でした。また、WHOのウェルビーイング指数に基づいたアンケートに回答した2万3415人のうち、4分の1は抑うつ症状を経験したと報告していたとのことです。
分析の結果、1日の通勤時間が1時間以上の人は、通勤時間が30分未満の人と比べて抑うつ症状を経験する割合が16%も高いことが判明しました。また、長時間通勤とメンタルヘルスの悪化との関連は、男性の場合は未婚・週52時間以上勤務・子どものいない人で強く、女性では低所得・交代勤務・子どもが2人以上いる人で強かったと報告されています。
研究チームは、「時間に余裕がなくなると、睡眠や趣味、その他の活動を通じてストレスを軽減したり、肉体的な疲労に対処したりする時間が足りなくなる可能性があります」と述べています。
なお、今回の調査では「抑うつ症状が長時間通勤を引き起こす」とは考えられていないものの、通勤時間と抑うつ症状の因果関係を示したものではありません。また、年齢・週の労働時間・収入・職業・交代勤務の有無といった要因は考慮したものの、遺伝的要因など抑うつ症状に関連するいくつかの危険因子は分析できなかったとのこと。それでも、通勤時間の長さとメンタルヘルスの悪化に関連性がみられたという研究結果は、多くの人々の感覚に合致するものです。
今回用いられたデータには、被験者らがどのような方法で通勤していたのかは含まれていません。しかし、過去には「徒歩または自転車で通勤する労働者は仕事のパフォーマンスが高い」という研究結果や、「自動車通勤から徒歩や自転車での通勤に切り替えるとメンタルヘルスが向上する」という研究結果も報告されています。
研究チームは、「交通手段の改善による移動時間と移動距離の短縮は、人々の通勤環境を向上させ、健康状態を改善する可能性があります」と述べました。
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