通勤距離が3kmを超えると運動不足や太り過ぎになる
新型コロナウイルス感染症の流行により多くの企業がオフィス勤務からリモート勤務へと移行しましたが、時間の経過に伴いオフィス勤務に戻す企業が増え始めています。オフィス勤務を始めるにあたり必ず発生する「通勤」という行為を健康状態の悪化と結びつけた研究が、ストックホルム大学から発表されました。
Commuting time to work and behaviour-related health: a fixed-effect analysis | Occupational & Environmental Medicine
http://dx.doi.org/10.1136/oemed-2019-106173
Home and Workplace Neighborhood Socioeconomic Status and Behavior-related Health: A Within-individual Analysis | Annals of Behavioral Medicine | Oxford Academic
https://doi.org/10.1093/abm/kaaa116
Working in an office can harm your health – depending on where it is and the length of your commute
https://theconversation.com/working-in-an-office-can-harm-your-health-depending-on-where-it-is-and-the-length-of-your-commute-204064
ストックホルム大学心理学科のヤーナ・ハロネン氏らは、スウェーデン国民を対象に複数回実施された健康調査の結果を利用し、運動の頻度、飲酒や喫煙の有無、体重などのライフスタイルに関するものや、職業、仕事に対するストレスの程度、持病の有無といったさまざまな項目について、16~64歳の約1万3000人の参加者が回答した内容を調べました。また、参加者の自宅から職場までの距離や、地域の社会経済状況も調べ、これらの要因が生活習慣にどのような影響を与えるかを把握しました。
その結果、週に40時間以上働いている人のうち、通勤に週5時間以上を費やしている人は、通勤時間が週当たり1~5時間しかない人と比べて運動不足や睡眠障害を抱えている可能性が高かったとのこと。また、通勤距離が3kmを超える場合も、運動不足や体重過多、睡眠不足になる可能性が高まることが分かりました。
通勤時間と健康状態がなぜ結びつくのかは明確になっていませんが、通勤時間が長くなることにより、睡眠や運動の時間、健康的な食品を準備するのにかかる時間が不足することが関係しているかもしれないと考えられているとのこと。
一方で、通勤距離が3km以下の参加者は身体活動がより活発であることが示されていました。これに関しては、自転車や徒歩で通勤しやすい距離であること、あるいは通勤時間が短いことで、仕事の前後に運動する時間が確保できることが理由と考えられるそうです。
また、職場の立地がライフスタイルや健康に与える影響が大きいことも明らかになっています。健康状態と密接に関わる人々の飲酒量を調べた先行研究によると、社会経済的地位の高い地域に職場がある場合、緊張をほぐしたり二日酔いを和らげたりするために朝一番に飲酒するなどの有害な飲酒習慣を持つ人が多いことが分かっているとのこと。別の研究では、職場がバーの近くにある場合、有害な飲酒習慣を持つ人の割合が高いことも分かっています。
ハロネン氏は「転職や引っ越しを考えている人は、職場の立地を意識しておくといいかもしれません。また、都市計画には生活のさまざまな側面を考慮した開発が重要であるということも本研究から示されています。今回はスウェーデンの人々を対象とした研究なので、世界のさまざまな地域に住む人々が同じような結果を得られるかどうかについても、今後調査することが重要でしょう」と述べました。
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