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パブリックドメインの作品を高品質な電子書籍にするオープンソースプロジェクト「Standard Ebooks」の特徴とは?


オープンソースプロジェクトの「Standard Ebooks」は、パブリックドメインの書籍を市販されている電子書籍と同等以上のクオリティで電子書籍化するという、ボランティア主導の非営利の取り組みです。Standard Ebooksは古典を電子書籍として残すことを目的としているというよりも、「一般的な読者を想定して、読みやすさの向上に努めた電子書籍化」を実施しています。具体的にどのような特徴があるのか、実際にEPUBリーダーを使って読むことで確かめてみました。

Standard Ebooks: Free and liberated ebooks, carefully produced for the true book lover.
https://standardebooks.org/

実際にStandard Ebooksで公開されている本にはどのようなものがあるのか、Standard Ebooksで公開されている電子書籍を読むにはどうすればいいのかなどは、以下の記事にまとめてあります。

ホームズからアリストテレスまで無料で古典の傑作をサクッと読み放題な海外版青空文庫「Standard Ebooks」 - GIGAZINE


Standard Ebooksの特徴として、本の詳細ページにはタイトルやジャンルなどの情報の他、本の単語数や読むのにかかる推定時間、さらに独自の評価で「本の難易度」が数値化されています。本の難易度は数値が高い方が「読みやすい本」となっており、記事作成時点では詩の作品集である「North of Boston」が最も読みやすい評価の「93.34」、哲学書の「有閑階級の理論」が最も難しい「28.91」となっていました。

以下の画像は1928年に出版されたアガサ・クリスティの「青列車の秘密」のページで、著作権保護期間が2023年末で満了となり、2024年1月にパブリックドメインとなったばかりの作品です。作品ページからは、作品に含まれているのが7万1121単語であること、読むのにおよそ4時間19分かかるということ、本の難易度は「77.23」という評価で「読みやすい作品」ということがわかります。また、「ポアロ」シリーズの6作目だということも示されています。


Standard Ebooksの特徴としては、パブリックドメインの本をただコピーして読めるようにしただけではなく、タイポグラフィや本の装丁などを当時の形式から現代の形式に刷新することで、「読みやすさ」を重視しています。例えば、引用府を現代的なスタイルにしたり、全角ダッシュと半角ダッシュの使い分けを統一したりと、Standard Ebooksで定めた厳格なマニュアルに従って編集することで、現代の商用電子書籍とそん色ないレベルのものに仕上げているそうです。


その他、パブリックドメインの本は紙の本をスキャンしている関係もあり、スペルミスや記号・句読点の抜けなどが発生することがよくあります。Standard Ebooksでは新しい本を追加する前に全体を注意深く読み返し、元の本と見比べながら表記のミスを修正しています。


さらに、Standard Ebooksからダウンロードした本は、電子書籍リーダーでさまざまな機能を使えるように最新のテクノロジーを活用しているとのこと。

以下の画像はStandard Ebooksからダウンロードした本を無料のEPUBリーダーである「Librum」で開いて目次機能を使ってみたところ。章ごとの細かい目次が表示され、目次をクリックすることで章の始まりにジャンプできます。


また、以下はバートランド・ラッセル「自由への道」をLibrumで開いた画像で、「自由への道」には本文中に脚注が含まれています。脚注をクリック。


本末尾のページに移動して、脚注の内容を読むことができます。各脚注の末尾にある矢印ボタンをクリックすると元のページに戻ることができます。


以下は本の末尾にある奥付のページ。奥付は独自に作成されており、作者名にはリンクも埋め込まれています。奥付の作者名をクリック。


ブラウザで作者のWikipediaが開きました。その他、表紙をパブリックドメインの美術品から選択することで美麗な装丁にしたり、本に含まれる画像を高品質にしたりと、読書体験を向上させるさまざまな試みが行われています。


このように、Standard Ebooksは単なるオープンソースの電子書籍化プロジェクトではなく、「一般的な読者を想定した上で、現代の電子書籍技術を最大限活用した上で、古代の一貫した標準に基づいた内容と品質の電子書籍を作成する」というコンセプトで進められているプロジェクトです。Standard Ebooksの目的については、以下の記事でまとめています。

無料&高品質でさまざまな古典作品を電子書籍化するプロジェクト「Standard Ebooks」の目的とは? - GIGAZINE


Standard Ebooksはオープンソースのプロジェクトのため、電子書籍やサイト上などにエラーや問題があった場合は、積極的に報告フォームから連絡してほしいと求めています。また、Standard Ebooksの詳細はGitHubでも公開しており、さらなる改善を目指していると開発者は述べています。

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in ネットサービス, Posted by log1e_dh

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