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Amazonの最高技術責任者(CTO)が考える「2024年以降の技術動向予測」はどんな感じなのか?


印刷機や組み立てラインなど、人類はさまざまな発明を行う事で自分自身の能力を強化してきました。2023年には生成AIが特に飛躍的な発展を遂げ、メールの作成からソフトウェア開発やガンの早期発見など生活のあらゆる側面に影響を与えています。そうした状況において、2024年の技術動向はどうなりそうなのかという予測をAmazon.comで最高技術責任者(CTO)を勤めるワーナー・ヴォゲルスさんがブログに投稿しています。

Tech predictions for 2024 and beyond | All Things Distributed
https://www.allthingsdistributed.com/2023/11/tech-predictions-for-2024-and-beyond.html


◆生成AIは文化を意識するようになる
大規模言語モデルは文化的に多様なデータでトレーニングされ、人間の経験や複雑な社会的課題をより微妙なニュアンスまで理解できるようになり、世界中のユーザーが生成AIをより利用しやすくなります。


語り継がれる物語や食べ物、服装、価値観、マナー、偏見、問題への取り組み方、意思決定の方法など、文化はあらゆるものに影響を与えます。例えば日本では麺類を食べるときに「すする」のはおいしそうな食べ方ですが、多くの文化では失礼な行為にあたったり、ギリシャでは幸運を祈るためにドレスに唾を吐きかけたりするように、文化が違えば行為の意味も異なります。ヴォゲルスさんは今後の数年間でテクノロジーの設計・導入・利用において文化が重要な役割を果たすようになると予測しています。

大規模言語モデルベースのシステムを世界中のユーザーに届けるにはさまざまな文化を理解して適切に対応させることが必要です。2023年時点でリリースされた多くの大規模言語モデルのトレーニングデータは文化的に西洋のものに偏っており、イスラム教について明示的に言及したアラビア語のプロンプトに対して友人とアルコール飲料を飲むという文章が生成されるなど、内容が文化的に正しくない場合が存在しています。アラビア語のテキストで事前トレーニングすると同じプロンプトでも文化的に適切な内容の返答が生成されるという研究結果があり、ヴォゲルスさんはさまざまな文化のデータでトレーニングされた大規模言語モデル同士が交流し、互いに学び合うことで大規模言語モデルに多様な文化的視点を与えて複雑な社会的課題に対してより繊細な理解が可能になると述べています。

◆フェムテックが本格化
女性の健康課題を解決するテクノロジーであるフェムテックが本格化します。


女性は人口の50%を占めるだけでなく、消費者の医療に関する意思決定の80%を占めていますが、現代医学の治験や研究は男性をベースにしており、女性は一般的に多くの病気について男性よりも遅く診断されたり、心臓発作後の誤診率が50%高くなったりするなどの問題が発生しています。

AmazonのクラウドサービスであるAWSは女性主導の新興企業と緊密に連携し、フェムテックの成長を直接見ています。フェムテックの分野への資金調達は2023年だけでも197%増加しており、こうした資金の流入と同時にオンライン医療プラットフォームや低コストの診断機器などが登場し、女性の医療サービスへのアクセスが劇的に増加中とのこと。さらに、女性主導のチームは男性だけで構成されたチームよりも幅広い健康問題を解決する傾向にあるとのことで、医療システム全体の改善が進んでいくと期待されています。

◆AIアシスタントが開発者の生産性を再定義する
AIアシスタントは基本的なコードの作成者というだけでなく、ソフトウェア開発ライフサイクルの全体を通してサポートを提供する教師や精力的な協力者という立場へと進化します。AIアシスタントが複雑なシステムを簡単な言葉で説明したり、的を絞った改善を提案したり、反復的なタスクへと取り組んだりすることで開発者は最も影響を与える部分の作業に集中できるようになります。


ヴォゲルスさんは2022年の予測において、ソフトウェア開発において生成AIが大きな役割を果たすと予測していました。実際に生成AIはさまざまなコードを生成できるようになり、自然言語のプロンプトに基づいて関数やクラス、テスト全体を生成することが可能になっています。

将来的に登場するAIアシスタントはコードを理解して記述するだけでなく、精力的な協力者や教師という立場でチーム全員をサポートし、コードレビューから製品戦略まであらゆることをこなすようになります。AIのサポートによって若手の開発者は不慣れなインフラストラクチャをすぐに使えるようになり、熟練エンジニアは新しいプロジェクトやコードベースを迅速に理解して有意義な行為に時間を割けるようになるとのこと。以前はコードの変更による下流への影響を完全に把握するのに数週間かかることもありましたが、AIアシスタントは変更を即座に評価してシステムの他の部分への影響を要約し、必要に応じて追加の変更を提案できるようになると述べられています。

◆技術革新のスピードに合わせて教育も進化する
テクノロジーの変化スピードは速く、高等教育だけでは追いつくことは難しくなっています。業界主導のスキルベースのトレーニングプログラムが提供されて熟練職人のような継続的な学習へ移行することで、個人と企業の両方に利益をもたらすようになります。


1990年代のソフトウェア開発サイクルでは製品が顧客の手に届くまでに5年以上も開発が行われることがありましたが、2023年時点ではそうしたスピードでは製品が実際に使用される前に大幅な時代遅れとなってしまいます。クラウドコンピューティングサービスや継続的に改善していく文化、実行可能な最小限の製品(MVP)アプローチの登場によりソフトウェア開発サイクルは短縮され、企業はかつてないスピードで製品を市場に投入し、顧客も以前では想像もつかないスピードで新たなテクノロジーを採用するようになりました。

高等教育はこうしたスピードに取り残されており、学校で教えられる内容と雇用主が必要としている内容との間のギャップは拡大しています。かつては一部の人のみを対象にオーダーメイドで行われていた実地訓練が業界主導のスキルベースの教育へと進化するとヴォゲルスさんは予測しています。


実際に、電気技師や溶接工、大工などについて考えてみると、こうした熟練労働者のスキルは大部分が教室ではなく研修生から見習い、そして熟練労働者やさらなるエキスパートへと成長していく過程で仕事を通して継続的に学習したものとなっています。スキルアップへの道筋が明確に定義されるような生涯教育スタイルは個人と企業の双方にとってより良いものとなります。

ヴォゲルスさんは2021年の予測以降、2022年2023年と毎年技術動向の予測を行っています。過去の予測内容が気になる人は確認してみてください。

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in ソフトウェア, Posted by log1d_ts

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