新型コロナウイルスに感染した回数が多いほどロングCOVIDのリスクは高くなる
ワクチンのおかげで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を発症した際の致死率はパンデミック初期よりもはるかに低くなりました。しかし、複数の研究結果から軽度に見えるCOVID-19であっても、複数回にわたり発症すれば、ロングCOVIDを発症するリスクが高まることなどが明らかになっています。
Every COVID Infection Increases Your Risk of Long COVID, Study Warns : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/every-covid-infection-increases-your-risk-of-long-covid-study-warns
COVID-19による疲労感や息切れ、認知機能の低下などの症状が数カ月にわたり続くという「ロングCOVID」に関する研究は多数存在しており、ロングCOVIDはセロトニンの枯渇に関連していることやロングCOVIDの発症リスクを高める遺伝子が存在すること、ロングCOVIDによる認知機能の低下が2年以上持続するケースもあることなどが明らかになっています。
ロングCOVIDを発症するリスクは「ワクチン接種者」や「若者」の場合は比較的低いものの、COVID-19を発症した回数が増えると、ロングCOVIDを含むさまざまな健康問題を発症するリスクが高まっていく可能性が明らかになっています。
アメリカ医師会公式ポッドキャストの中で、ランボード・ロウバクシュ医師は「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染するたび、糖尿病・腎臓病・臓器不全・メンタルヘルス問題などの慢性的な健康問題を発症するリスクが高まります」「『SARS-CoV-2に複数回感染しても、症状が軽度であるため心配する必要はない』と言われることがありますが、実際は感染により起きる症状はロシアンルーレットのようなものです」と警告しました。
ロングCOVIDはさまざまな臓器に壊滅的な影響をおよぼすことが知られているため、生涯にわたる影響をもたらす可能性のある多系統疾患として定義されています。SARS-CoV-2に感染した人のうち、ロングCOVIDの罹患率は研究や調査地域によって大きな差がありますが、10~50%程度と報告されました。
2023年1月に発表された研究では、世界で6500万人がロングCOVIDに苦しんでいると推計されています。幸いなことに、子どもが受ける影響は大人と比べてはるかに軽微ですが、ロングCOVIDの影響を全く受けないというわけではありません。
疫学者のベンジャミン・ボウ氏らはロングCOVIDの影響をより詳細に分析するために、SAR-CoV-2に感染したアメリカの退役軍人13万8818人を2年間にわたり追跡調査するという研究を行いました。このデータによると、COVID-19を再発症すると患者は複数の臓器系で長期にわたるリスクが増加することが明らかになっています。
ボウ氏らの研究はアメリカの退役軍人を対象としたものであるため、この傾向がすべての人に当てはまるとは限りません。ただし、複数回のCOVID-19感染による懸念を示す研究は、これだけではありません。カナダの10州で行われた18歳以上を対象とする研究でも、COVID-19に感染した回数が増えるほどロングCOVIDの罹患率が増えることが明らかになっています。
以下のグラフはCOVID-19に感染した回数と、ロングCOVIDの罹患率をまとめたグラフ。「1 infection(1回COVID-19に感染)」した場合のロングCOVID罹患率は14.6%、「2 infections(2回COVID-19に感染)」した場合のロングCOVID罹患率は25.4%、「3 or more infections(3回以上COVID-19に感染)」した場合のロングCOVID罹患率は37.9%となっており、COVID-19に感染した回数が増えるほどロングCOVIDを発症するリスクが高まっていることがわかります。
同研究を主導したマギル大学の統計学者であるシアン・クアン氏は、「この研究はCOVID-19の再感染とロングCOVIDの関連性に関する新たな証拠を増やすものです」と語りました。
さらに未査読の別の研究では、アメリカの150万人分の医療データを駆使し、初期のCOVID-19とその後の感染での重症度を比較するという調査が行われています。この調査でも、SARS-CoV-2のデルタ株やオミクロン株に続く変異株で、COVID-19の再感染後にロングCOVIDの罹患率が増加することが確認されました。ただし、ロングCOVIDの罹患率が上昇するのは「複数回COVID-19に感染しているため」なのか「SARS-CoV-2の変異株による影響」なのかは不明です。
SARS-CoV-2は人間の免疫システムを変化させることでも知られており、長期的な免疫の形成に必要なメモリーT細胞を破壊することも明らかになっています。また、COVID-19の症状が軽度であっても重度であっても、SARS-CoV-2はメモリーT細胞を破壊することも判明しました。他にも、ロングCOVIDにより肺炎やRSウイルスに感染するリスクが高まる可能性も指摘されています。
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