Amazonの書籍レビューサイト「Goodreads」で頻発するレビュー爆撃に対し「悪質なアカウントの報告にユーザーも協力してほしい」と運営が呼びかけ
Amazonが運営している書籍のレビューサイト「Goodreads」は、なりすましアカウントによる「荒らし」への対策をほとんど実施していないと繰り返し批判されており、書籍や著者を攻撃する「レビュー爆撃」もしばしば問題になっています。作家が自分の作品を高く評価し他の作家を中傷する投稿を繰り返していたことが発覚し、それを受けてGoodreadsは「Goodreadsの評価とレビューの信頼性を保護するために、ユーザーが協力してほしい」と呼びかける声明を公開しました。
Goodreads asks users to help combat 'review bombing' : NPR
https://www.npr.org/2023/12/17/1219599404/goodreads-review-bombing-cait-corrain
Announcements: Working Together to Protect the Authenticity of Ratings and Reviews on Goodreads
https://help.goodreads.com/s/announcements/a038V00000dLkCZQA0/working-together-to-protect-the-authenticity-of-ratings-and-reviews-on-goodreads
世界最大の出版社のペンギン・ランダム・ハウス傘下であるアメリカの出版社「デル・レイ・ブックス」は2023年12月13日に、ケイト・コレイン氏の小説「CROWN OF STARLIGHT」の出版を中止すると発表しました。デル・レイ・ブックスは本書だけではなくコレイン氏との契約も継続しない旨を明らかにしており、投稿ではその理由を説明していません。
Del Rey will no longer publish CROWN OF STARLIGHT by Cait Corrain or any other works on that contract.
— Del Rey Books (@DelReyBooks) 2023年12月12日
ナショナル・パブリック・ラジオのニュースサイトによると、コレイン氏がGoodreadsで「レビュー爆撃」をしていたことが出版停止の原因とのこと。この問題は、有志が問題点をまとめたGoogleドキュメントを公開したことで発覚しました。ドキュメントでは、多くのGoodreadsアカウントが「CROWN OF STARLIGHT」を称賛するレビューを投稿しており、同時に同じアカウントが他の作家の作品を低評価していることが指摘されています。特に、作者が有色人種である作品を人種差別的な内容で低評価しているレビューも多く、書籍の評価を不当に下げる「レビュー爆撃」であると問題視されました。
レビュー爆撃の関与を疑われたコレイン氏は、「友人のリリーが私の本の評判を高めようとしてやったこと」と弁明し、リリー氏を問い詰めて繰り返し謝罪を受けたというメッセージのやりとりを公開しました。
しかし、公開されたメッセージも「レビューと同じくなりすましのものだ」と指摘された結果、コレイン氏は友人・リリー氏との会話がねつ造であることや、レビュー爆撃をしたことを認めました。コレイン氏は公開した謝罪文の中で、「完全な精神的衰弱によるもの」と告白しています。
A sincere apology. I know this is long, but that's because I'm trying to own and openly address every aspect of what I did. pic.twitter.com/MEtyDLCkDw
— Cait (@CaitCorrain) 2023年12月12日
Goodreadsはユーザーの認証にほとんど努力をしておらず、このことがレビュー爆撃を可能にしているとしばしば批判を受けています。過去にも、SF小説家のパトリック・S・トムリンソン氏に対して、トムリンソン氏の友人の名前や写真を無断で使用したなりすましアカウントによる、大規模な荒らし行為が行われて大きな問題となりました。トムリンソン氏は、Goodreadsの問題点として「アカウント登録する際にメールの認証が行われないため、既存のユーザー名や他人のメールアドレスで容易になりすましアカウントを増やすことができる」という点や、「不正なレビューを報告することはできても、なりすましや荒らし行為などを行っているアカウントそのものを通報する手段がない」ことを指摘しました。
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By master1305
また、2023年夏には、1930年代のソビエト連邦を舞台にした作品が、一部のウクライナの読者から強い反発を受けてレビュー爆撃が行われたことが話題になりました。ここでは、Goodreadsの問題点としてモデレーションの手薄さが指摘されています。Goodreadsには「Goodreadsエキスパート」なる肩書きの人物がいて、「本の内容とは無関係に著者を攻撃している」などのルール違反の投稿を削除していますが、管理は手動で行われているため、処理に時間が必要となっています。
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コレイン氏の件を受けて、Goodreadsはコレイン氏の投稿したレビューを全て削除したと述べました。そして、合わせて「Goodreads の評価とレビューの信頼性を保護するために協力してください」という声明をヘルプページに公開。声明では、「私たちは、Goodreadsのレビューが読者と著者にとって信頼でき、偽りがないことを保証するために尽力しています。私たちは、レビューやコミュニティガイドラインに違反するコンテンツやアカウントを迅速に検出して管理するための改善に投資を続けています。これまで、アカウント認証の強化や、カスタマーサービスチームを拡大して応答時間を短くするなど実施してきました。ユーザーの皆さんに強力してほしいこととして、ふさわしくないレビューや偽のアカウントを見つけた場合には、フォームから連絡して下さい」と呼びかけています。
出版業界で長いキャリアのあるジェーン・フリードマン氏は、Goodreadsの対応により、レビュー爆撃は一時的に止まるだろうと述べています。しかし、注目度が高く多くの人がレビューの問題点を報告してくれるような作品ではない場合、悪質なアカウントを報告するユーザーを獲得できないことで、守ってもらえない可能性が高いともフリードマン氏は指摘しています。
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