映画

観客の評価が最も二極化した映画はどんな作品なのか?


観客の評価が二極化した作品にはどんなものがあるか、データを題材にしたエッセイを公開しているサイト・Stat Significantのダニエル・パリス氏が映画レコメンドシステム用のデータセット・MovieLensを用いて調査し、結果を報告しています。

Which Movies Are The Most Polarizing? A Statistical Analysis
https://www.statsignificant.com/p/which-movies-are-the-most-polarizing


観客の評価が最も二極化した映画の第1位は、エド・ウッド監督の「プラン9・フロム・アウタースペース」でした。地球とのコンタクトがうまくいかなかったため、宇宙人が死者を蘇らせて地球を征服する「第9計画」を発動した……という作品で、「史上最低映画」にたびたび挙げられる怪作です。一方で、その独特の雰囲気を味わい深く楽しむファンもいて、カルト映画として有名です。


なお、エド・ウッド監督は本作のほかに、同じく「史上最低映画」クラスの作品である「死霊の盆踊り」も手がけています。

死霊の盆踊り HDリマスター版&プラン9・フロム・アウタースペース 総天然色版 特報映像 - YouTube


15位までのランキングは以下の通り。

1位:プラン9・フロム・アウタースペース(1959)
2位:パッション(2004)
3位:トワイライト~初恋~(2008)
4位:ピンク・フラミンゴ(1986)
5位:テキサス・チェーンソー(2004)
6位:トランスフォーマー(2007)
7位:ブレア・ウィッチ・プロジェクト(1999)
8位:トランスフォーマー:リベンジ(2009)
9位:ベイブ/都会へ行く(1999)
10位:コックと泥棒、その妻と愛人(1990)
11位:ジャッカス・ザ・ムービー(2002)
12位:タンク・ガール(1995)
13位:ロッキー・ホラー・ショー(1975)
14位:エビータ(1996)
15位:バイオドーム(1996)

これらの結果から、パリス氏は評価が分かれる作品を4種類に分類しています。

◆1:低予算カルト映画
「プラン9・フロム・アウタースペース」「ピンク・フラミンゴ」「ロッキー・ホラー・ショー」といった作品は、小規模な映画館で公開された低予算映画で、背徳的なテーマやシーンが悪名高い作品群です。たとえば、「ピンク・フラミンゴ」の劇中に登場する吐瀉物や役者の性器はすべて本物で、ドラァグクイーンのディヴァインが本物の犬の糞を食べるシーンが登場します。こうした部分を、一部の「逆張り映画ファン」は愛してやみませんが、映画観客の大多数からまったく共感されないポイントにもなっています。

◆2:避けて通れないシリーズもの映画
シリーズ化されるような作品は、賛否が大きく分かれる傾向があります。「トワイライト」は特に極端で、ファッションや文学、さらには舞台探訪と熱烈なファンを多く生み出しましたが、一方でその文化的な広まりが嫌悪される一幕もありました。パリス氏は、「『トワイライト』や『トランスフォーマー』は、質の高いストーリーテリング抜きでも興行成績がいい」と、褒めているのかけなしているのか微妙なコメントをしています。

◆3:主流化したホラー映画
ホラー映画愛好家が評論家やレビューの声を参考にすることはほとんどなく、ホラー映画の質と興行成績の間に相関関係はまったく見られないとのこと。しかし、メジャー映画としてホラー作品が出てくると、その不気味さを評価する人がいる一方で、ジャンルごとホラーを否定する人も出てくるため、評価は分かれてしまうようです。

◆4:キリストの受難
要するに、2位の映画「パッション」です。この作品はキリストの受難を描いたもので、パリス氏は作品を直接見たことがないものの、周囲の大人たちがみんな厳しい意見だったことを覚えているとのこと。

The Passion of the Christ - HD (Trailer) - YouTube


さらに、ジャンルごとで見ていくと「ホラー映画」「ファミリー向け映画」「SF」の順で評価が分かれやすいことがわかりました。


ホラー映画の評価が分かれるのは、社会的・文化的規範の境界に挑戦するような作品が多いためだとパリス氏は分析しています。

ファミリー映画は、大人と子どもの両方に向けてアピールするような作品作りが難しく、たとえば「アイス・エイジ4/パイレーツ大冒険」は子どもを引きつけることはできても、大人からは評価されないと考えられます。

年代別で見ると、1980年代から1990年代にスコアのばらつきが広がり、2000年代初頭からはスコアのばらつきは収束する傾向が見られたとのこと。

パリス氏は、1980年代から1990年代にスコアがばらつくようになった理由として、「ホラー映画の本数が爆増した」「性的・暴力的表現が増加した」「インディーズ映画の隆盛」の3点を挙げました。

一方で、2000年代からは「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズやマーベル・シネマティック・ユニバースなど、シリーズ化される作品のストーリーテリングのレベルが上がったり、すべてをぶち壊すような要素が入る余地がほとんどなくなったりしたことで作品全体の質が向上したことや、インターネットの普及で即座にフィードバックが得られるようになったことなどにより、スコアがばらつくような作品が減ったのではないかと推測しています。

ただしパリス氏は、「時計じかけのオレンジ」や「アメリカン・ヒストリーX」「オールド・ボーイ」といった人によって評価が大きく異なる作品でも、公開から数十年経過してなお消えることなく語られているという事実を挙げ、「失敗することや、仕事をクソだと言われることは楽しいことではありませんが、同時に、全員の意見が一致してしまうと、アートについての話は面白くなくなってしまいます」と、評価が分かれるような個性的な作品について語り合うことの楽しさを述べています。

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in 動画,   映画, Posted by logc_nt

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