大手広告主のボイコットに悩むX(旧Twitter)が中小企業に頼る方針を加速、サードパーティに広告販売の一部をアウトソーシングも
X(旧Twitter)のオーナーであるイーロン・マスク氏の差別的発言を契機に、Appleやディズニーなどが相次いでXへの広告出稿を停止しているのに対し、マスク氏は「私を金で脅すつもりならくたばっちまえ」と応酬するなど、大企業とXとの対立は深まっています。大手広告主の撤退による大幅な収益源を埋め合わせるため、Xが中小企業から広告を誘致する姿勢を強めていることが報じられました。
X ramps up new advertising strategy following Elon Musk’s tirade
https://www.ft.com/content/cdf789a2-8872-41fe-94e7-ff30ebe631b7
X turns to small businesses; tells big ones to go f*ck themselves
https://9to5mac.com/2023/12/01/x-turns-to-small-businesses/
経済紙・Financial Timesは2023年12月2日に、Xが小規模事業者による広告支出を促進するための投資を倍増していると報じました。
XはFinancial Timesへの声明で、「中小企業は非常に重要な原動力ですが、我々は長い間、明らかにそれを過小評価してきました。中小企業への注力は、常に計画の一部でした。今後はそれをさらに進めていきます」と述べました。
平行して広告事業のアウトソーシングも進められており、既にアメリカの新興マーケティング企業・JumpCrewなどのサードパーティとの提携を進めているとのこと。Xは今後、中小企業をターゲットにした広告販売の一部を同社に委託する予定です。
大手広告主のボイコットにより、Xは2023年末までに最大7500万ドル(約110億円)の収益損失に見舞われると報道されています。Xはこの試算に異議を唱えており、逸失した広告費は1000万ドル(約14億6500万円)から1200万ドル(約17億5800万円)だと述べました。
Xの問題は収入減だけではありません。イーロン・マスク氏は、2022年に440億ドル(当時のレートで約6兆3300億円)でXを買収しましたが、Xは従業員に対して同社の資本価値はわずか190億ドル(約2兆8000億円)、つまり買収額の半分以下しかないとの見積もりを示しました。また、Xの財政には年間10億ドル(約1465億円)にのぼる多額の利息の返済ものしかかっています。
Xの元上級営業幹部のひとりは、「マスク氏は大規模な広告チームを維持するか、販売のさらなるアウトソーシングや自動化された『中小企業向けのセルフサービスプラットフォーム』の採用など、より安価なソリューションに移行するかの選択を迫られるでしょう」と語りました。
ただし、Xには「世界クラスの広告プラットフォーム構築への取り組み」が不足しているため、MetaやGoogle、TikTokなどのライバルに後れを取っており、「そのような転換は難しいでしょう」と元幹部は付け加えました。
マスク氏の舌禍による大手広告主のX離れは、広告業界へのコネクションからCEOに登用されたリンダ・ヤッカリーノ氏にとっても災難で、2023年11月に開かれた娘の結婚式に出席したヤッカリーノ氏には、友人や知人から「評判が傷つくからXのCEOを辞めた方がいい」という連絡が殺到したとのことです。
IT系ニュースサイトの9to5Macは「たとえXが中小企業にぴったりのツールを持っていたとしても、大手ブランドの撤退から失われた広告収入を埋め合わせられるかはわかりません。また、マスク氏の過激な言動は今に始まったことではありませんが、なぜヤッカリーノ氏が自分の評判を犠牲にしてまでマスク氏を支持しているのかを理解するのも困難です。彼女がどれくらいXにいるかで賭けをしていたら、きっと負けていたことでしょう」と評しました。
実は、GIGAZINEにもXから「中小企業に積極的に広告を出してもらうためのミーティングを開きたい」との連絡があり、2023年10月30日にGoogle Meetでオンライン会議を行いました。その際、Xからは「課金方式は『リンククリック課金』ではなく『インプレッション課金』にした方が成果が出やすい」「ターゲティング設定は『or』ではなく『and』なので、多く配信したいならターゲティングは最低限必要なものだけにした方がいい」といった提案がありました。
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