サイエンス

天文学者が1991年以来最大エネルギーの宇宙線「アマテラス粒子」を検出


1991年に観測された「オーマイゴッド粒子」以来、最大エネルギーの宇宙線が観測されました。この宇宙線は2008年からアメリカのユタ州で稼働している高エネルギー宇宙線観測実験であるテレスコープアレイ実験の観測史上最大のエネルギーをもつ宇宙線であり、日本神話に登場する天照大神になぞらえて「アマテラス粒子」と名付けられました。

An extremely energetic cosmic ray observed by a surface detector array | Science
https://www.science.org/doi/10.1126/science.abo5095

テレスコープアレイ実験史上最大のエネルギーをもつ宇宙線を検出 | 京都大学
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2023-11-24


Meet “Amaterasu”: Astronomers detect highest energy cosmic ray since 1991 | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2023/11/meet-amaterasu-astronomers-detect-highest-energy-cosmic-ray-since-1991/


The most powerful cosmic ray since the Oh-My-God particle puzzles scientists
https://www.nature.com/articles/d41586-023-03677-0

宇宙から降り注ぐ高エネルギーの放射線である宇宙線には非常に高いエネルギーのものが存在しています。100エクサ電子ボルトを超える宇宙線がこれまで複数回にわたり検出されているのですが、100エクサ電子ボルトというエネルギーは地上最大の粒子加速器で到達できるエネルギーよりも7桁以上も多いというすさまじいエネルギーです。

これだけ莫大(ばくだい)なエネルギーを持った宇宙線は、宇宙最大の爆発現象であるガンマ線バーストや、活動銀河核中心の超巨大ブラックホール、もしくはそこから吹き出すジェット、宇宙最強の磁場を持つ強磁場中性子星(マグネター)といった宇宙における極限物理現象を起源に持つと予想されていますが、正確な発生源はこれまでの研究では明らかになっていません。

宇宙線は荷電粒子であるため宇宙磁場で曲げられてしまいますが、非常にエネルギーの高い宇宙線の場合、磁場では曲げられにくいため、到来方向が発生源を指し示す「次世代天文学」となることが期待されています。観測史上最大エネルギーを持つ宇宙線は、1991年にアメリカ・ユタ州にあるダグウェイ実験場で観測された「オーマイゴッド粒子」で、そのエネルギー量は320エクサ電子ボルトにもおよぶと推定されました。

このオーマイゴッド粒子の観測以来最も高エネルギーである「244エクサ電子ボルト」を記録する宇宙線が、アメリカのユタ州で稼働中の高エネルギー宇宙線観測実験・テレスコープアレイ実験で観測されました。大阪公立大学などの研究チームは、宇宙線が明け方に観測されたことや、宇宙線の起源解明に向けた道しるべとなる期待などから、今回観測した宇宙線を日本神話になぞらえて「アマテラス粒子」と名付けました。


テレスコープアレイ実験は2008年から15年以上にわたり行われていますが、その観測史上最も高いエネルギーの宇宙線が今回報告されたアマテラス粒子です。アマテラス粒子が観測されたのは現地時間の2021年5月27日4時35分56秒。テレスコープアレイ実験で使用されている検出器はそれぞれ1.2km以上離して設置されていますが、合計23台の検出器がマイクロ秒の時間差を持ってほぼ同時に連続的にアマテラス粒子を検出しています。


アマテラス粒子を分析すると、到来方向には有力な候補天体が見あたらず、天の川銀河近傍の宇宙大規模構造ではローカル・ボイドと呼ばれる宇宙領域から到来したことが明らかになりました。アマテラス粒子の発見を報告する論文の共著者であるユタ大学の天文学者であり、テレスコープアレイ実験の広報担当者を務めているジョン・マシューズ氏は、「しかし、オーマイゴッド粒子とこの新しい粒子の場合、その軌道を発生源まで追跡しても、生成するのに十分な高エネルギーを見つけることができません。それが発見の最大の謎です。一体何が起こっているのでしょう」と述べました。そのため、未知の天体現象や暗黒物質(ダークマター)の崩壊といった、標準理論を超えた新物理起源が発生源である可能性も示唆されています。

研究に携わった大阪公立大学の藤井俊博准教授は「この極めて高いエネルギーの宇宙線を初めて見つけたとき、かつてないエネルギーの値が表示されていたため、何かの間違いだろうと思いました。その後、到来方向に候補天体が見つけられず残念に思うと同時に、ではこの宇宙線はどこから来たのか、という新しい謎が見つかったワクワク感を覚えています。今後は、稼働中のテレスコープアレイ実験拡張計画や、次世代実験によって極高エネルギー宇宙線の発生源を明らかにしたいと考えています」とコメントしています。

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in サイエンス, Posted by logu_ii

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