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クレジットカードで発生した債務不履行はどのように回収されるのか?


クレジットカードを用いた決済により発生する債務と債権について、金融ビジネスのスペシャリストであるパトリック・マッケンジー氏がまとめています。

Credit card debt collection
https://www.bitsaboutmoney.com/archive/the-waste-stream-of-consumer-finance/


アメリカにおける債務不履行の大部分はリボ払いによるものです。不正ではないクレジットカード債務のほとんどは比較的遠い過去に発生したもので、リボ払いにより何年にもわたり返済しなければいけない金額が増加していき、債務不履行に陥ってしまう模様。

経済全体の2.5~5%ほどの少数の借り手のみが、クレジットカード債務を滞納するようになります。クレジットカード発行会社により延滞率は大幅に異なり、例えばアメリカン・エキスプレスの延滞率は1%近くです。


債務不履行は通常、予定された支払いを延滞するところからはじまります。延滞は契約違反ですが、クレジットカードの発行会社にとってそれほど異常な出来事ではありません。通常、ほとんどの借り手は30日以内に指定の料金を支払い、クレジットカードは再び使用可能となるためです。

延滞から30日が経過すると、クレジットカードの発行会社は複数の通信方法を組み合わせ、ユーザーに支払いを促します。なお、消費者負債の発行は、法律により規制された金融機関の独占的な特権とされており、この「規制された金融機関」となるには、正確な帳簿を持つことが求められるそうです。

金融機関は延滞などによる負債を帳簿に記録する必要があるため、延滞引当金を積み立てるなどして、負債を相殺することが求められます。そのため、金融機関は負債をパッケージ化して非金融機関に売却することで、確実に負債を回収するそうです。これにより帳簿上からクレジットカード利用者の延滞による負債がゼロになるというわけ。


金融機関が発行する負債パッケージを購入するのが、債権回収業界です。債権が債権回収業界に渡ると、債務者は元の延滞金だけでなく「法的に合法である契約に定められた手数料」や「非常に疑わしい契約に定められていない手数料」を支払う義務が発生します。そして、債務者から回収した金額から負債パッケージの購入額を差し引いた分が、債権回収業界の利益となるわけ。なお、クレジットカードの債務不履行の平均額は2000ドル(約30万円)程度だそうです。

クレジットカードには共同ブランドがついているケースが多く、AmazonやBest Buy、Appleなど大手企業のサービスと連携したクレジットカードもあります。こういったブランドはクレジットカードビジネスによりブランドの価値が損なわれることを非常に気にしているため、共同でクレジットカードを発行している金融機関に対して、どの債権回収業者をパートナーとしているか言及しないよう契約で義務付けているケースがあるとマッケンジー氏は指摘しています。

そのため、債務者は突如見知らぬ機関から借金の返済を求められることがあり、「自分に不利な借金が意図的にでっち上げられてしまった」と誤解してしまうこともあるそうです。


借金取りが借金の取り立てが下手な理由について、マッケンジー氏は「その理由の一部は、クレジットカード発行会社が国家的な大企業であり、企業買収やIT移行などの遺産の上に大規模で自動化されたプロセスを構築してしまっているため、特に重要ではない情報が非常に断片化されてしまっているためです。そして、この無駄に複雑な情報がCSVファイルという非常に小さなパイプを通じて債権回収業界に投げられます」と指摘しました。

金融機関が発行する負債パッケージの4分の3は債権回収業界の大手10社が買い取り、残りの4分の1は家族経営などの小規模な企業が買い取ります。大手企業は買い取った負債パッケージのうち、債権の回収ができなかったものを再び転売しており、これを小規模な企業が再び買収するのですが、この時、負債パッケージは大幅に割引された価格で転売されることとなるそうです。

債権回収業者はまずデータを自動あるいは半自動のプロセスを用いてチェックし、債権回収に優先順位を付けます。例えば、信用プロファイルをできるだけ多くの負債に関連付けることで、信用スコアをベースに「借金を支払う能力がある債務者」を特定することなどが可能になったり、死亡した債務者は除外することで債権回収効率を上げることができたりするわけです。

債権回収業者は回収時に公正債権回収法(FDCPA)や関連州法を守る必要がありますが、マッケンジー氏いわく「業者は頻繁に法律に違反している」とのこと。マッケンジー氏は高校教育を受けた債権回収歴3カ月の労働者が、わずか数分間の会話で3件の違法行為を犯したことを確認しています。この労働者は債務者に対して「もし私にお金を支払わなければ、私はあなたを訴えます。入国管理局が訴訟に気づけば、あなたのグリーンカードは取り上げられることになるでしょう」と語ったそうで、この短い会話の中に違法行為が3つも含まれているそうです。

債権回収業者は自身が違法行為を行っていることを理解しているため、裁判所への提出書類をベースに「どの債務者が債権回収業者を訴えたことがあるのか」といった情報もデータ化している模様。こうすることで、不要なリスクを避けながら債権回収が行えるようになるというわけ。


また、債権回収業者が扱うデータが複雑に断片化してしまっていたり、借金を抱える人は頻繁に連絡先や住所を変更しがちであったりするため、同姓同名の別人に借金の返済を迫ってしまうというケースもあるそうです。

金融機関が提供した負債パッケージに紐づけられているデータベースから債務者の連絡先を入手することができたら、債権回収業者は直接電話をかけます。債務者本人に連絡することができなければ、その友人や親せきといった関係者に連絡を入れることもあります。この電話対応はコールセンターなどで行われており、これにより回収業者が対応できる通話数は近年大幅に増加しているそうです。

コールセンターからの通話は1日に2度ほどかかってくるようになっており、同じ債権が複数の異なる機関により回収されている場合、その数はさらに増えることとなります。つまり、1つの借金を滞納すると、複数の借金取りから絶え間なく電話がかかってくるようになるというわけです。


債権回収業者による電話の目的は、借金の支払いを口頭で合意させ、支払い資格情報を取得することにあります。最も便利なのは債務者が利用している銀行の口座番号を入手することで、他にもクレジットカードやデビットカードのカード番号を入手するというケースもあるそうです。

借金の支払い約束は、全額支払うというものではなく、時間の経過と共に累積していった利息をどのように支払うかについての計画を立てるようなものになるそうです。ただし、この時に口頭で合意した支払い計画を、正常に完済させる債務者は少ない模様。

そんな債権回収業界について、マッケンジー氏は「アメリカに存在する最も忌まわしいクズと悪党の巣窟であり、何十年にもわたる努力にもかかわらず、このビジネスは下劣で事実上改革の影響を受けないままです」と批判しています。実際、債権回収業者は賃金が低く、ストレスも高く、大手企業ですら年間離職率は75~100%と非常に高い劣悪な労働環境だそうです。

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in メモ, Posted by logu_ii

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