iPhoneの背面に搭載されているMagSafeはなぜ吸い付くようにくっつくのかを磁気モデリングで分析
iPhone 12およびiPhone 12 Pro以降のiPhoneシリーズには背面にMagSafeが搭載されており、ワイヤレスでの充電が可能となっています。MagSafeには磁石が内蔵されており、MagSafe充電器を近づけた際に適切な位置へと吸い付くようにくっつくのですが、こうした「体感」がどのように生み出されているのかをエンジニアのカヴィさんが磁気モデリングを用いて分析しています。
Magnetically Modelling MagSafe – kavi's blog
https://kavi.sblmnl.co.za/magnetically-modelling-magsafe/
MagSafe充電器がくっつくときの動作の様子については下のムービーを見ると確認できます。
Magnetically Modelling Magsafe - Intro Video (Link in Description) - YouTube
カヴィさんがMagSafe対応のアクセサリをゆっくりと近づけます。
ある程度近づけると、「カチッ」という音と同時にアクセサリが適切な位置へと飛びつきました。
方向を変えてもまったく同じように動作します。
MagSafeは円形の磁石を採用しているため、方向に関係なく同じように動作するというわけです。
上記のように「適切な位置へ自動でくっつく」という動作の原理を知りたくなったカヴィさんは、Magpylibを使用して磁気モデリングを行い分析することにしました。まずは(PDFファイル)Appleのアクセサリ設計ガイドライン(R21・p148)を調べ、Google Colabを使用して下図の通りモデルを作成したとのこと。
くっついている時の磁界の様子はこんな感じ。より詳しくみていくため、赤枠部分を拡大します。
2つのパーツがくっついている際には多くの磁力線が2つのパーツをつないでいます。
パーツを横に移動させていくと中心部から磁力線が分かれていきます。
約6mm移動したところで磁力線が分かれました。
こうして視覚化を行えたので、カヴィさんは続いて磁石にかかる力を計算しようとしました。ところがMagpylibには力を計算する機能がなかったため、代わりに自力で計算を行う必要があったとのこと。2つの磁石の間にかかる力「F」は磁気モーメント「m」および磁束密度「B」の内積と勾配を用いて下記のように表せます。
上の式のままでは複雑すぎるため、カヴィさんは磁石のモデルを2Dモデルで置き換え、磁石の寸法を点に縮小することで下記の式で計算できるようにしました。
こうしてカヴィさんはMagSafe全体にかかる力を視覚化することに成功しました。下図の赤い線がMagSafeにかかる力で、黒い線はそれぞれの双極子にかかる力を表しています。緑色の線はトルクの方向を示しているとのこと。MagSafe充電器が数mmレベルで十分近い位置にある時にはくっつく方向に大きな赤い矢印が発生していることが分かります。
カヴィさんはもう少しインタラクティブなモデルが作成できないか探してみたところ、p5.jsを使用して下図のようなアプリを開発することに成功したとのこと。このアプリはGitHub上でホスティングされているので、MagSafeにかかる力を体感してみたい人は確認してみてください。
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