「大人のおもちゃ」にホルモンを乱す可能性がある化学物質が含まれているという研究結果、粘膜接触するため影響が大きい懸念も
いわゆる「大人のおもちゃ」は人間の粘膜と直接触れるものであるにもかかわらず、その安全性について考えてみたことがある人はあまり多くないはず。新たな研究では、市場で入手可能な大人のおもちゃは摩耗するとマイクロプラスチックを放出するだけでなく、ホルモンを乱すことが知られる化学物質を含んでいることが判明しました。
Bringing sex toys out of the dark: exploring unmitigated risks | Microplastics and Nanoplastics
https://link.springer.com/article/10.1186/s43591-023-00054-6
Sex Toys Shed Hormone-Disrupting Chemicals With Unknown Effects : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/sex-toys-shed-hormone-disrupting-chemicals-with-unknown-effects
「大人のおもちゃ」として用いられるバイブレーターやビーズなどの製品は、主にプラスチックやシリコン、ゴム、ラテックスなどの素材で作られています。大人のおもちゃはその性質上、人間にとって敏感な粘膜と直接触れ合いますが、大人のおもちゃから放出された化学物質が粘膜から吸収される可能性はあまり考慮されていません。
そこでデューク大学の研究チームは、市販されている4つの大人のおもちゃ(アナルトイ・アナルビーズ・通常のバイブレーター・挿入型バイブレーター)を研磨機で摩耗させ、実際に体に当てて使用した際のプラスチックの摩耗を模倣する実験を行いました。
その結果、いずれの大人のおもちゃも機械的な刺激によってマイクロプラスチックやナノプラスチックを放出することが判明。以下のグラフは大人のおもちゃの摩耗率を示したもので、摩耗率が高い順にアナルトイ・アナルビーズ・挿入型バイブレーター・通常のバイブレーターとなっています。
また、これらの大人のおもちゃには、ホルモンの作用を妨害する内分泌かく乱物質である可能性が疑われている、フタル酸エステルと呼ばれる物質が含まれていることもわかりました。
フタル酸エステルは高濃度だと肝臓・腎臓・肺・生殖器系に損傷を与えると考えられており、ヨーロッパやアメリカでは規制する動きが強まっています。今回研究に用いられた大人のおもちゃのうち1つは、「フタル酸エステルフリー」とうたっていたそうで、別の大人のおもちゃは「人体に安全」とパッケージに記されていたとのこと。
アメリカでは異性愛者の男性の約50%、異性愛者の女性の50%以上がバイブレーターを使用しているという調査結果があります。また、LGBTQコミュニティの間ではさらに大人のおもちゃの利用率が高いとのことで、大人のおもちゃに含まれる化学物質がもたらす影響は重大なものになる可能性があります。
これまでのところ、フタル酸エステルの悪影響はげっ歯類を用いた実験で確認されているものの、人体にとってフタル酸エステルがどれほど危険なのかは不明です。しかし、成人の粘膜と接触することが安全なのかどうかも確かめられていません。
研究チームは、「私たちの実験で同定されたフタル酸エステルのいくつかは、ネズミにおける高濃度の暴露と同時に、深刻な生殖合併症や生殖能力の喪失が観察されています。因果関係は証明されていませんが、この相関関係はさらなる調査を正当化するのに十分なものです」とコメントしました。
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