サイエンス

体内で「炎症」が起きるとソーシャルメディアの使用が促進されることが判明、免疫反応とSNSの意外な関係とは?


印象的な出来事や意見を共有したくなった時や、誰かとつながりたくなった時など、多くの人は社会的な関係を求めてソーシャルメディアを利用します。新しい研究により、外傷や感染症などで発生する炎症が、人をソーシャルメディアの利用へと駆り立てることが判明しました。

Can inflammation predict social media use? Linking a biological marker of systemic inflammation with social media use among college students and middle-aged adults - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0889159123001289

Study: Inflammation drives social media use - University at Buffalo
https://www.buffalo.edu/news/releases/2023/08/lee-inflammation-drives-social-media-use.html

今回、アメリカ・バッファロー大学で人文科学を研究しているデビッド・リー氏らは、2023年8月に査読付き科学誌の「Brain, Behavior, and Immunity」に掲載された研究で、体内で発生する炎症反応とソーシャルメディアの利用の関係を調査しました。


調査は3回にわけて実施されました。最初の調査では、アメリカの2つの大規模研究の両方に参加した成人863人を対象にアンケートと血液採取が実施され、ソーシャルメディアの利用実態に関するデータと血液サンプルが提供されました。また、2番目と3番目の調査にはそれぞれ288人と171人の大学生が参加し、同様のデータ収集に協力しました。

これらの調査結果をまとめた結果、体内の炎症に反応して肝臓で作られるC反応性タンパク質(CRP)の値とソーシャルメディアの使用回数の多さとの間に正の相関があること、つまり炎症反応の数値が高い人はソーシャルメディアの利用頻度も高いことが確かめられました。


また、ソーシャルメディアの使い方に焦点を当てた分析により、炎症反応と関連しているのはメッセージのやりとりなどの社会的交流を目的としたものであって、面白い動画の共有やゲームの共同プレイといった暇つぶしが目的の利用は炎症とは無関係だということもわかりました。

リー氏らの研究チームによると、今回の研究は免疫系がSNSの使用を促す潜在的な要因となることを初めて示した研究とのことです。

傷や感染症に対する防御反応である炎症がSNSの利用を促進するのは、体がダメージを受けたというサインが社会的な親和動機、つまり誰かと一緒にいたいという欲求を高め、それを満たす手段としてソーシャルメディアに目を向けるからではないかと考えられています。

リー氏は「一般的に、炎症は体を病気から治癒させるような行動や症状につながります。人間は社会的な存在ですので、病気やけがをした時に、社会的なサポートやケアができる他者と接近するのは理にかなっていると言えるかもしれません」と話しました。

一方で、SNSの利用がなんらかの原因で炎症を発生させ、それがさらに人をSNSへと駆り立てるサイクルである「正のフィードバックループ」が起きている人もいるのではないかと、リー氏は考えています。例えば、以前発表された別の研究では、SNSの利用が若者にいい影響をもたらす反面、深刻なリスクにつながる場合もあるとの調査結果が報告されました。

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研究チームは今後、炎症がオンラインとオフラインの社会的行動にどのような影響を及ぼすのかや、炎症とSNSの使用の関連性が10代の若者や自尊心が低い人など特定のグループで異なってくるのかなどを解明するため、さらなる研究を進める予定とのことです。

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in ネットサービス,   サイエンス, Posted by log1l_ks

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