ソフトウェア

なぜアプリは時間の経過とともにゴミになっていくのか


X(旧Twitter)はサードパーティーアプリを締め出しRedditはAPIを有料化して公式アプリに誘導するような動きを見せていますが、その公式アプリが何よりも使いにくいという声を上げる人は少なくありません。これらに限らず、アプリの使い勝手が悪かったり、長くサービスが続くと「前はよかったのにだんだん使いづらくなった」と感じられたりすることがしばしばあります。なぜアプリがそのような劣化の一途をたどるのかについて、元AI研究者のイワン・ヴェンドロフ氏が解説しています。

The Tyranny of the Marginal User - by Ivan Vendrov
https://nothinghuman.substack.com/p/the-tyranny-of-the-marginal-user

ヴェンドロフ氏が例として挙げたアプリは、マッチングアプリの「OkCupid」です。OkCupidは、利用者の性格や夢、自分自身のこと、自分が何を求めているかについて、何百もの質問に答えさせるようなシステムを採用しています。この質問で得られたデータを元に0~100%の「マッチスコア」が表示され、そのスコアを見てデート相手を選ぶというシステムで、自身も積極的に使用していたというヴェンドロフ氏いわく「スコアは不気味なほど正確だった」とのこと。

しかし、OkCupidはすでに「Tinder」のクローンに過ぎない、一過性の出会いを求める場に成り下がってしまったとヴェンドロフ氏は嘆いています。多額の研究開発費が加わり、ツールやAIが急速な進歩を遂げる時代に生存しているにもかかわらず、なぜか使いづらく、品質が悪くなってしまうアプリは少なくありません。


ヴェンドロフ氏は、Googleで6年間働いた中で、アプリが衰退していく様子や、ユーザーが愛した機能が容赦なく奪われてしまう様子を目の当たりにしたとのこと。

根底にあるのは、開発者がより多くのユーザーを獲得しようとする強い動機です。より多くのユーザーを獲得すればするほど広告で稼ぐことが可能になるため、多くの開発者は日々利用してくれるユーザー(デイリーアクティブユーザー)を手放さないようにするのです。


しかし、多くのユーザーに利用してもらったとしても、使いづらくしてしまっては元も子もありません。なぜそのような事態が起こるのかというと、アプリ開発側が「限界ユーザー」を重視しているからだそうです。

ヴェンドロフ氏は限界ユーザーの特徴についてこう記しています。

・酸欠状態の金魚みたいな注意力
・アプリを開いたら1.3秒以内に「キラキラした画像」や「目を引く見出し」を求めだす
・アプリの設定をいじろうなどとは思わない
・インターフェースの複雑さへの耐性はゼロ、親指1本しか動かさない
・動かしても、何度も上方向にフリックするだけのゾンビのような動き

こうした限界ユーザーは、ヴェンドロフ氏いわく「ちょっとでもアプリにムカついたらスワイプでTikTokを開いて二度と戻ってこない」とのこと。


限界ユーザーは人に限らず、「状態」を指す場合もあります。ベッドの中でなかば無意識的にスクロールしたり、つらい記憶から気をそらすためにスマホを触ったりするような状態のことです。

ヴェンドロフ氏は「私たちのデジタル生活の大半は、この状態に沿うように設計されています。世界で最も優秀で、有能で、共感力のある人々の大多数が、限界ユーザーのためにアプリを設計しているのです。それとは対照的に、本質的に役立つアプリは多くの場合個人の趣味で作られ、一握りのオタクによって使われます。もしそのようなツールが成功しすぎると、広告や成長欲に満ちた、限界ユーザーに奉仕しようとする企業がツールを奪い、殺してしまうでしょう。そういうことなのです」と締めくくりました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「昔はワクワクさせられたテクノロジーを今や疑わなくてはならなくなった」という主張 - GIGAZINE

なぜ「出会い系アプリ」で出会えないのか? - GIGAZINE

使いにくいアプリ・ウェブサイトの原因である「認知的負荷」を削減するためのデザインの基本原則 - GIGAZINE

in ソフトウェア, Posted by log1p_kr

You can read the machine translated English article here.