YouTubeに「ワクチンの誤情報を広める動画を保持する義務」は課されないとの判決が下る
YouTubeにチャンネルの利用を停止された反ワクチン派の人物がアクセス権の回復を求めてYouTubeを訴えていた裁判で、「医学に関連する誤情報を削除するというYouTubeのガイドラインに基づくと、利用停止処分は妥当である」との判決が下りました。
YouTube under no obligation to host anti-vaccine advocate’s videos, court says | Ars Technica
https://arstechnica.com/tech-policy/2023/09/anti-vaccine-advocate-mercola-loses-lawsuit-over-youtube-channel-removal/
著名な反ワクチン活動家であるジョセフ・マーコラ氏は30万人のチャンネル登録者を擁するYouTuberとしても活動しており、「健康を促進する動画」のほか、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する独自の見解を主張する動画を投稿していました。
by Joseph Mercola
しかし、マーコラ氏のチャンネルは、同氏いわく「ある日突然何の前触れもなく」利用停止処分が下されてしまったとのこと。マーコラ氏は不服申し立てを行いましたが、「注意深く検討した結果、我々のコミュニティガイドラインに違反していることが確認されました」といった返答しかなく、これに不満を抱いたマーコラ氏はチャンネルへのアクセス権と動画の回復を求めてYouTubeを提訴しました。
マーコラ氏によれば、YouTubeは氏のチャンネルを「COVID-19とワクチンに関する医学的誤報を投稿し、YouTubeのコミュニティガイドラインに違反した」として停止し、チャンネルを回復させることはないと告げてきたとのこと。マーコラ氏は「停止前の事前通知がなかった」という点を問題視して「YouTubeは公正かつ誠実に行動しなかった」と主張。さらに、「YouTubeが動画へのアクセスを拒否したのは規約違反であり、YouTubeは7万5000ドル(約1100万円)以上の損害賠償を支払う義務がある」と訴えました。
この裁判を担当したカリフォルニア州北部地区連邦地裁のローレル・ビーラー判事は、「規約には、YouTubeは特定のコンテンツを維持する義務があるという文言や、ユーザーのコンテンツを保管する義務があるという文言はありません。コンテンツが規約に違反している、あるいは危害を及ぼす可能性があると合理的に判断される場合、YouTubeは自らの裁量でそのコンテンツを削除または停止することができます。このため、YouTubeのマーコラ氏に対する処分は妥当といえます」と指摘。マーコラ氏の主張をすべて退け、規約の違反はなく、損害賠償請求は認められないとの判決を下しました。
法律専門家のエリック・ゴールドマン氏は、オンラインサービスとコンテンツ削除に関する司法の見解をレビューした自身の論文を引用し、「コンテンツの削除をめぐる訴訟は決して成功しません」と指摘しました。
・関連記事
YouTubeチャンネルに著作権侵害の申し立てを何度も行い嫌がらせをした男性に「申し立てを永久に禁止する差し止め命令」が下される - GIGAZINE
EU司法裁が「オンラインサービスは原則として著作権侵害を行うユーザーに対する責任を負わない」と判断 - GIGAZINE
YouTubeのAIが資料価値のある戦争犯罪ムービーを「過激派の動画」として削除 - GIGAZINE
・関連コンテンツ