YouTubeチャンネルに著作権侵害の申し立てを何度も行い嫌がらせをした男性に「申し立てを永久に禁止する差し止め命令」が下される
イングランドおよびウェールズ高等裁判所は、音楽レーベルのYouTubeチャンネルに対して著作権侵害の申し立てを行った男性に対し、永久に申し立てを禁止する差し止め命令を出しました。男性は、YouTubeの3ストライク制の違反警告システムやポリシーを利用して、音楽出版社のYouTubeチャンネルを何度も通報して停止させたと報じられています。
Moviebox Megastores International Ltd & Ors v Rahi & Ors [2023] EWHC 501 (Ch) (08 March 2023)
https://www.bailii.org/ew/cases/EWHC/Ch/2023/501.html
High Court Bans Singer From Hitting YouTube Rival With DMCA Notices * TorrentFreak
https://torrentfreak.com/high-court-bans-singer-from-hitting-youtube-rival-with-dmca-notices-230114/
2017年2月、自称シンガーソングライターのモハマド・ラヒ氏は、イギリスの音楽出版社であるMovieboxに「自分のアルバムがMovieboxのYouTubeチャンネルとiTuneから削除されなければ法的措置を取る」と警告のメールを送りました。
しかし、アーメド氏はYouTubeチャンネルからラヒ氏のアルバムを削除することを拒否。すると、ラヒ氏は自身のYouTubeチャンネルを立ち上げ、自身が所有すると主張する楽曲を公開しました。さらにラヒ氏は、Movieboxによって公開されていた4つのアルバムと、別の音楽出版社であるOriental Star Agenciesが公開していた6つのアルバムについて、著作権侵害の申し立てを行いました。
2017年5月、MovieboxはYouTubeのContent IDを利用することで、ラヒ氏のYouTubeチャンネルにアップロードされた4つのアルバムの収益をすべてMovieboxが受け取るようにしました。ラヒ氏はMovieboxの動きに対抗して、パキスタンの知的財産局に楽曲の著作権を主張し、著作権所有証明書を提出。これにより、MovieboxはYouTubeから著作権侵害の警告を受けることとなりました。
2020年9月、著作権侵害の警告が3回行われたことで、YouTubeはMovieboxのYouTubeチャンネルを停止しました。Movieboxはラヒ氏に対して訴訟を起こし、裁判所はYouTubeでの著作権侵害警告を撤回することを要求する差し止め命令を下しました。この時、ラヒ氏はこの命令に素直に従ったそうです。
しかし、今度はアジーム・クレシ氏やシャツィア・マンズール氏という人物がラヒ氏とほぼ同じことをMovieboxに行いました。ただし、クレシ氏はあらかじめ裁判所にMovieboxの権利侵害を差し止める命令を申請していました。Movieboxはクレシ氏の著作権侵害警告に対してYouTubeへ反論を行いましたが、この差し止め命令によってYouTube側から反論を受け付けないと通告されたとのこと。
また、Moviebox系列である音楽レーベル・Oriental StarのYouTubeチャンネルも、ラヒ氏からの訴えによってチャンネル停止の警告を受けました。そのため、Oriental Starはラヒ氏に対して著作権侵害警告撤回を要求する差し止め命令を裁判所に求めました。
2020年12月、MovieboxとOriental Starはラヒ氏、クレシ氏、マンズール氏に対し、幾度にもわたるYouTubeへの著作権侵害申し入れによって事業に支障が出たとして、訴訟を起こしました。裁判の結果、クレシ氏とマンズール氏に対して損害賠償が請求されましたが、両者ともに債務不履行とみなされ損害賠償は保留、著作権所有証明はすべて無効となったそうです。
そして2023年3月8日に、イングランドおよびウェールズ高等裁判所は「ラヒ氏はMovieboxやOriental Starの経済的利益を損なうことを目的として、しつこく詐欺的なキャンペーンを行っていた」とみなし、ラヒ氏に対してYouTubeの著作権違反申告システムを使っていやがらせをすることを永久に禁止する命令を下しました。
なお、ラヒ氏は2023年1月にMovieboxを含むイギリスのレコードレーベルに著作権侵害の申し立てを行っているため、この法廷闘争の決着が付くのはかなり先のことになると予想されます。
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