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伝説上の大陸「アトランティス」の誤解と真実とは?


アトランティスとは古代ギリシアの哲学者・プラトンの著書で記述された、プラトンの時代から9000年前に存在していたとされる伝説上の大陸で、実在したかどうかは諸説ありますが、科学的には存在が否定されています。なぜアトランティスを信じる人がいるのか、根拠とされる説とそれを否定する理論について、歴史家のスペンサー・マクダニエル氏が解説しています。

The Truth about Atlantis - Tales of Times Forgotten
https://talesoftimesforgotten.com/2019/03/26/the-truth-about-atlantis/


アメリカのチャップマン大学が2014年に実施した調査ではアメリカ人の63%が、2018年の調査ではアメリカ人の57%が「アトランティスのような高度な古代文明がかつて存在していた」という考えに「同意する」と回答しました。マクダニエル氏は「アトランティスが完全なフィクションであることを考えると、これらの数字は実に驚異的です」と述べています。

アトランティスはプラトンの著書「ティマイオス」や「クリティアス」の中で、「強大な文明を築き上げていた大陸および文明」として記述されたもの。対話篇である「ティマイオス」では、ソクラテスが「理想国家とはどのようなものになるのか」という議題を提起したところ、プラトンの曽祖父であるクリティアスがまさにそのような物語を知っていると述べ、「間違いなく真実」だと主張しながらアトランティスについて語ります。

アトランティスが実在したと主張する人々はしばしば、プラトンは作家ではなく哲学者であり、作り話をでっち上げて真実のように語るはずがないと主張しています。例えば、ピーター・ジェームズ氏とニック・ソープ氏による1999年のベストセラー「Ancient Mysteries(古代の謎)」では、「プラトンは常に伝統的な資料に独自の解釈を加えてきましたが、大規模な捏造を行ったという証拠はこれまで一度も示されていません」と述べています。


一方でマクダニエル氏は、「プラトンが創作はしないという考えこそが誤解であり、哲学的な論点を説明するために精巧な物語を創作することは、プラトンの哲学的スタイルです」と指摘。例えば中期の対話篇である「国家」の中だけでも、それ以前の独立した史料には記録されていない、プラトンが創作した可能性が高い架空の寓話(ぐうわ)や神話が3つ語られています。

また、アトランティスの物語が語られている「ティマイオス」の中の状況自体が創作であるとマクダニエル氏は指摘しました。「ティマイオス」では、ソクラテス、プラトンの曽祖父であるクリティアス、中央ギリシアの古代都市・ロクリスの名士であるティマイオス、政治家で軍人のヘルモクラテスの対話が記されていますが、この対話が実際に行われたという証拠は存在していません。特に、クリティアス、ヘルモクラテス、ソクラテスはプラトンの著作以外にも記録されている一方で、ティマイオスはプラトンの著作以外で独立した言及がないため、架空の人物であるとも考えられています。


「ティマイオス」の中で、クリティアスはアトランティスの物語を祖父から聞いたと主張し、祖父は父から聞いたのだと話します。そして、クリティアスの曽祖父は古代アテナイの政治家であるソロンに聞いたとされていますが、マクダニエル氏によるとソロンに関連する詩は数多く残っている中で、アトランティスについて言及しているものはないそうです。「描写されている対話自体が虚構であるのに、語られている話が真実であるという主張をどうして真剣に受け止めることができるでしょうか」とマクダニエル氏は述べています。

さらに、マクダニエル氏は「アトランティスの話が歴史的に真実ではあり得ない理由」として、文学的および歴史的な理由だけではなく科学的根拠も挙げています。特に注目すべき点として、プラトンはアトランティスを「ジブラルタル海峡のすぐ向こうの大西洋に位置する巨大な島」として描写していますが、その位置関係はプレートテクトニクスに関する現代の科学的理解と矛盾しているそうです。古くはプラトンの主張を否定する科学的根拠はありませんでしたが、1912年にドイツの気象学者であるアルフレート・ヴェグナーが提唱した大陸移動説に基づくと、プラトンが記述したような「巨大な失われた大陸」が大西洋に存在するには、十分な空間がなかったと考えられます。


アトランティスの存在を支持する一部の人は、否定説の科学的根拠を聞いた上でも、プラトンの記述は口伝による勘違いや情報のずれが発生しており、実際には別の場所に違う形で存在していたという可能性を提唱する人もいます。古典学者のK・T・フロストは1909年に、アトランティスはミノア文明のことを指していたと提唱しました。この説はギリシャの考古学者であるスピリドン・マリナトスが、クレタ島北岸にあるミノア文明の集落の発掘調査から得た1939年の結論によって、大きく前進しています。しかし、プラトンが記述するアトランティスとミノア文明の居住地とでは、大きさや滅亡時期に大きな違いがあるため、「プラトンがミノア文明から影響を受けたとは考えにくいです」とマクダニエル氏は述べています。

アトランティスが架空の都市だとすると、そのイメージは「国家の横暴さを寓話的に描いたもの」だと考えられます。実際に、プラトンのアトランティスに関する記述の一部は、アトランティスというよりアテネについて語っており、「理想国家」とはアトランティスではなくアテネのことを指しているとマクダニエル氏は指摘しています。マクダニエル氏によると、プラトンのアトランティス物語は、本質的にはペルシア戦争を9000年前の時代に移植し、アケメネス朝をアトランティス帝国に置き換えただけのものであるとのこと。

マクダニエル氏の考えでは、アトランティスに関する記述は、哲学的なメッセージを伝えることを意図して、当時の近代史に基づいた意図的なフィクションを書いたものです。プラトンの最も有名な教義の一つはイデア論であり、イデア論では現実世界に存在するすべての事象の背後には不変で永遠の「イデア」という本質が存在すると考えます。マクダニエル氏は「プラトンにとっては、現実そのものさえも、ある意味では象徴的なものだったのです。アトランティスは、かつて存在したが今はもう存在しない、あらゆる帝国、あらゆる国家、あらゆる部族を象徴する寓話です」と述べています。

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in メモ, Posted by log1e_dh

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