iFixitがすぐ壊れるマクドナルドのアイスクリームマシンを誰でも修理できるようにすべきだと主張する嘆願書を当局に提出
by Alpha
アメリカのマクドナルドではアイスクリームがスイーツカテゴリの売上の60%を占めるほどの人気ですが、店舗を訪れると「アイスクリームマシンの故障により提供できません」と断られるケースがよくあるといわれています。そんなマクドナルドのアイスクリームマシンの修理をもっと簡単にできるようにすべきだと主張し、法的な手続きを進めていることを明らかにしました。
What’s Inside That McDonald’s Ice Cream Machine? Broken Copyright Law | iFixit News
https://www.ifixit.com/News/80215/whats-inside-that-mcdonalds-ice-cream-machine-broken-copyright-law
Public Knowledge Petitions Copyright Office for DMCA Exemption for Ice Cream Machines - Public Knowledge
https://publicknowledge.org/public-knowledge-petitions-copyright-office-for-dmca-exemption-for-ice-cream-machines/
マクドナルドのアイスクリームマシンが頻繁に壊れるという現象は都市伝説ではなく実際にある話で、店舗ごとにアイスクリームマシンが壊れているかどうかをリアルタイムできるウェブサービスが登場しているほか、アメリカの連邦取引委員会が調査に乗り出したと報じられたこともあります。
「マクドナルドのアイスクリームマシンが頻繁に壊れる理由」を連邦取引委員会が調査か - GIGAZINE
by Mike Mozart
iFixitは実際にマクドナルドの店舗で使われるアイスクリームマシンを購入し、以下のムービーで内部をチェックしています。
Why McDonald's Ice Cream Machines Are Always Broken and How To Fix Them - YouTube
問題のアイスクリームマシンはTaylorというメーカーのC709 ソフトクリームサーブフリーザーです。
このアイスクリームマシンの大きな問題は、立ち上げて使えるようになるまで4時間のウォームアップが必要になるということ。しかもこの4時間でエラーが頻発したそうですが、説明書を見てもエラーの種類と対処法が一切記載されておらず、どういうエラーが起こっているのかが皆目見当がつかなかったとのこと。
アイスクリームマシンを開けて中を見てみると、数枚のプリント基板とモーター、ベルト、熱交換器など、簡単に交換できる部品で構成されていました。
しかし、マクドナルドとの契約により、フランチャイズのオーナーはTaylorの修理サービスでしかアイスクリームマシンを直すことができません。iFixitによると、Taylorは利益の25%を修理サービスで稼いでおり、サービス15分あたり350ドル(約5万1000円)の料金を請求しているそうです。
過去にはKytchという企業が、Taylorのアイスクリームマシンのエラーを読み取るRaspberry Piベースの装置を開発したそうですが、iFixitによるとマクドナルドがフランチャイズオーナーに「Kytchの装置を絶対に使わないように」という指示を送っていたとのこと。
iFixitのサステナビリティ担当ディレクターのエリザベス・チェンバレン氏は「私たちはKytchが開発していたように、このアイスクリームマシンのエラーコードを読み取る装置を作りたいと考えていますが、法律によってそれは不可能です」と述べています。
チェンバレン氏によると、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)の第1201条に「デバイスのソフトウェアなどの著作権で保護された作品のデジタルロックをバイパスしてはならない」と定められているとのこと。この第1201条の免除プロセス自体は存在するのですが、消費者向けデバイスに限定されているため、業務用のアイスクリームマシンには免除プロセスを適用できません。
iFixitと非営利団体のPublic Knoledgeは、Taylorのアイスクリームマシンなどの業務用機器のデジタルセキュリティ対策を回避することは違法ではないと主張する嘆願書を著作権局に提出しました。この嘆願書ではアイスクリームマシンの他、ビルの管理システムなどにも言及されています。
Petition for New Exemption Under 17 U.S.C. § 1201
(PDFファイル)https://publicknowledge.org/wp-content/uploads/2023/08/Public-Knowledge_iFixit_Petition-for-New-Exemption-Under-17-USC-1201-Commercial-Device-Repair.pdf
しかし、iFixitによれば、著作権局が嘆願書を受け入れたとしても、ハッキングできるのはあくまでも個々のアイスクリームマシンの所有者だけであり、iFixitがアイスクリームマシンを修理するためのハッキングツールを配布することはできないとのこと。そこで、iFixitはDMCAの第1201条を修正して修理する権利を確保するため、消費者用・業務用を問わずすべての電子機器の修理を合法化する「修理自由法(The Freedom to Repair Act)」を再度検討するよう連邦議会に求めています。
Public Knoledgeの政策顧問であるキャスリーン・パーク氏は「原則として、著作権はそのデバイスが消費者用か業務用かに関係なく、所有するデバイスの修理を妨げるべきではありません。この原則がまだ法律に恒久的に組み込まれていないという事実は、私たちの著作権システムがマクドナルドのアイスクリームマシンと同じくらい壊れやすいことの表れです」と述べています。
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