メモ

1830年代に発生したフランス情報通信網への侵入事件とは?


政府機関、病院、学校、テクノロジー企業に至るまで、各組織のネットワークに攻撃を仕掛ける事件は枚挙に暇がありません。こうした攻撃の始まりはしばしば「最近のこと」として考えられることが多く、早くともプログラム内蔵方式のコンピューターが流通しだした20世紀後半に始まったことだろうと思われがちですが、実は1830年代に情報通信網を侵害する最初期の事件が確認されています。フランスで発生した事件について、ジャーナリストのトム・スタンデージ氏が解説しました。

The crooked timber of humanity
https://www.economist.com/1843/2017/10/05/the-crooked-timber-of-humanity


18世紀後半、遠く離れた場所に情報を素早く伝えるためのシステム「腕木通信」がフランスで発明されました。これは塔の屋根の上に「腕木」と呼ばれる複数の棒を掲げ、腕木の向きなどを符号として遠くの塔に情報を伝えるというものでした。情報を伝える速度は郵便馬車よりも早く、全盛期には情報網が総延長1万4000kmにも達したといわれています。

by ITU Pictures

1834年、銀行家兄弟のフランソワ・ブランとジョゼフ・ブランが腕木通信のネットワークに侵入する方法を考案します。ブラン兄弟はボルドー市内の取引所で国債を取引していましたが、当時は市場の動きに関する情報がパリからボルドーに届くまで郵便馬車で数日を要していたとのこと。より早く情報を入手できるトレーダーは市場の動きを先読みしてもうけることができるということに目を付けたブラン兄弟は、腕木通信を使ってひそかに情報を伝える方法を実行に移しました。

当時、腕木通信のオペレーターが使う文字の中には「バックスペース」と呼ばれる符号が含まれており、これには「前の文字を無視せよ」という意味が込められていたとのこと。「バックスペースを受け取ったオペレーターは前の文字を次の塔に伝えない」というルールをブラン兄弟はうまく利用し、2人は通信オペレーターに賄賂を渡して「バックスペースの前に相場の動きを示す文字を差し込んでくれ」と依頼したそうです。

こうして送信されたメッセージを受け取ったブラン兄弟は、誰にもばれることなく、お金を稼ぐことに成功しました。

by Guilhem Vellut

しかし1836年、賄賂を受け取っていたオペレーターが病に倒れ、自分の後任として白羽の矢を立てた友人にすべてを打ち明けてたことをきっかけに悪事が露呈し、ブラン兄弟は裁判にかけられることになってしまいました。ただ、当時はネットワークの悪用を禁じる法律がなかったため、2人は無罪放免となったそうです。

スタンデージ氏は「腕木電信は、現代人の目には絶望的に安全でないように見えますが、重要な弱点は『利用者の人間的欠陥』であるという点では、技術が進んだ今日のシステムも同じように安全ではないと言えます。ブラン兄弟の物語は、どんなに新しい発明でも、それを悪意を持って利用する人間が必ず現れるということを思い起こさせるものであり、これは人間の本質として未来永劫変わらないものなのです」と述べました。

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in Posted by log1p_kr

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