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ヨーロッパの半導体産業を立て直すために試みられた政府による資金提供の歴史


ヨーロッパにはドイツやフランスなどの先進国が複数ありますが、半導体市場での存在感は薄めです。ヨーロッパにおける半導体産業の発展が遅れている理由について、経済や歴史に関する動画を投稿するYouTubeチャンネル・asianometryが解説しています。

Europe’s Lost Decades in Semiconductors - YouTube


近年の半導体製造市場シェアはIntelやTSMC、Samsungなど、アメリカやアジアの企業によって占められており、ヨーロッパ企業の存在感は薄めです。半導体製造市場においてヨーロッパの存在感が低い状況は今に始まったことではありません。1985年時点の半導体企業売上ランキング上位10社を確認すると、上位は日本やアメリカの企業で占められ、ヨーロッパの企業はフィリップスがかろうじて10位にランクインしているのみです。


ヨーロッパでは1980年代まで各国が国ごとに半導体産業を成長させようとしており、ヨーロッパ全体での協力関係が築かれていませんでした。このため、ヨーロッパ各国の半導体企業は国内では一定の影響力を確保できたものの、国際的な競争力は低い状態が続きました。


ヨーロッパ内で半導体産業が分断されている状況を改善するべく、当時欧州委員会の委員を務めていたエティエンヌ・ダヴィニオン氏が中心となって半導体産業の対外競争力の強化を目的とした10カ年計画「ヨーロッパ情報技術研究開発戦略(エスプリ計画)」が制定されました。エスプリ計画では10年以内に日米と同等の半導体技術を確立することを目指して、ヨーロッパ各国の半導体企業や研究機関に補助金が配られました。


エスプリ計画によって、ヨーロッパ各国の半導体企業は技術力を大きく改善することができた他、ヨーロッパ内の国々で密接に協力しながら半導体技術の研究開発を進める環境が構築されました。しかし、エスプリ計画の恩恵を受けられたのは大企業のみだったとのこと。

1985年には、フランスのフランソワ・ミッテラン大統領によってヨーロッパ中の企業に資金を提供してコンピューターや半導体関連の研究を進める計画「ユーレカ計画」が提唱されました。ユーレカ計画では約1200件という膨大な研究開発プロジェクトに資金が投入されましたが、「政府の支出が多すぎる」「民間企業が政府の補助金に依存している」といった批判も受けています。


1990年代に入ると、「半導体分野における日本の影響力が下がる」「半導体の微細化に伴って半導体製造装置が新世代のものに切り替わり、新型の製造装置に対応できない企業の成長が滞る」といった情勢の変化が発生しました。この間にヨーロッパでは何千億円もの資金を投じて研究開発を進めていましたが、結局、韓国や台湾の半導体企業がシェアを伸ばしただけで、ヨーロッパ企業が影響力を拡大することはできませんでした。


ただし、ヨーロッパの企業は半導体市場での影響力を完全に失っているわけではありません。例えば、オランダの「ASML」は数nmクラスまで微細化された半導体の製造に欠かせないEUVリソグラフィ装置を安定生産している世界で唯一の企業で、IntelもASMLのEUVリソグラフィ装置を用いてCPUを生産しています。asianometryはASMLを「ヨーロッパの最後の希望の光」と表現しています。

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in ハードウェア,   動画, Posted by log1o_hf

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