サイエンス

パーキンソン病の兆候を人の目をスキャンしてAI分析することで発症7年前までに検出可能であることが報告される


手の震えや歩行の困難といった運動所外を示す神経変性疾患であるパーキンソン病は、症状が進行すると車いすや寝たきりの生活になることもある深刻な病気です。その症状が出るよりも最長で7年前までにAIを用いた網膜スキャンを行うと兆候を見いだせることを、オックスフォード大学病院の専門家などの研究チームが発見しました。

Retinal Optical Coherence Tomography Features Associated With Incident and Prevalent Parkinson Disease | Neurology
https://doi.org/10.1212/WNL.0000000000207727


Eye scans detect signs of Parkinson's disease - Oxford University Hospitals
https://www.ouh.nhs.uk/research/news/article.aspx


Eye scans detect signs of Parkinson’s disease up to seven years before diagnosis | Moorfields Eye Hospital NHS Foundation Trust
https://www.moorfields.nhs.uk/news/eye-scans-detect-signs-parkinson-s-disease-seven-years-diagnosis

研究チームはロンドンの医療眼科に通う40歳以上の患者15万4830人の被験者のコホート研究であるAlzEyeデータセットを分析。さらにUKバイオバンクに登録した40~69歳の健康なボランティア6万7311人の網膜イメージングの分析を行いました。

また、研究チームはAIを使用してパーキンソン病を発症した約700人の患者の網膜スキャンデータと、パーキンソン病を発症しなかった被験者の網膜スキャンデータを比較しました。すると、パーキンソン病を発症する平均7年前に、網膜の内側細胞膜の厚さがパーキンソン病を発症した患者と発症しなかった被験者の間で異なることが判明。内側細胞層の厚さがパーキンソン病の発症に関連していることを特定しました。

これまでに網膜のスキャンを行うことで、心血管疾患腎臓病老化の兆候を検出する研究は行われていましたが、神経変性疾患の兆候を検出できる可能性を示したのは今回が初とのこと。網膜スキャンによる病気の兆候を検出する研究分野は「オキュロミクス」と呼ばれています。


今回の研究では、光干渉断層法(OCT)を用いて撮影された網膜の断面スキャンを基に、AIを利用して多数の網膜のスキャンを分析しました。

バーミンガム大学病院の眼科医であるアラステア・デニストン氏は「人間が見るには微妙すぎる兆候や変化について、AIを用いることで明らかになりました。今回の研究によって、パーキンソン病のごく最初期の兆候を検出できるようになり、パーキンソン病治療の新たな可能性が開かれました」と述べています。

一方で、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで人工知能の研究を行うピアース・キーン氏は「網膜スキャンによるパーキンソン病の診断が実現するにはさらなる研究が必要です」と述べています。しかし「定期的に網膜スキャンを行うことで、将来的にパーキンソン病を含めたその他の病気の兆候を発見できるようになるかもしれません」と語っています。


オックスフォード大学病院の眼科医であるジークフリート・ワグナー氏は「症状を発症する前に病気の兆候を見つけることは、患者が将来的な病気の発症を防ぐためにライフスタイルを改める時間を与えることが可能になります。個々の患者がパーキンソン病を発症する可能性があるかを予測する段階にはまだ到達していませんが、今後網膜スキャンを行うことでパーキンソン病のリスクのある人々の事前スクリーニングツールになることを願っています」と述べています。

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in サイエンス, Posted by log1r_ut

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