サイエンス

「人の目」をスキャンして早死にするかどうか予測するAI登場


「人の目をスキャンしてその人が早死にするかどうかを予測する深層学習モデル」を開発したと、中国・オーストラリア・ドイツの国際的研究チームが発表しました。新たに開発されたアルゴリズムは網膜から予測される生物学的年齢と実年齢のギャップを基に、その人が早死にするリスクを高い精度で予測できるとのことです。

Retinal age gap as a predictive biomarker for mortality risk | British Journal of Ophthalmology
https://bjo.bmj.com/content/early/2021/11/17/bjophthalmol-2021-319807

Something in Your Eyes May Reveal if You're at Risk of Early Death, Study Shows
https://www.sciencealert.com/looking-deep-into-your-eyes-could-reveal-whether-you-re-a-fast-ager

研究チームはUKバイオバンクに登録している4万6969人の被験者で撮影した合計8万169枚の眼底画像を基に、このうち事前の病歴がない1万1052人の眼底画像1万9200枚を用いて、深層学習モデルの学習と検証を行いました。研究チームが開発した深層学習モデルは、視覚情報を神経信号に変換する網膜をスキャンするだけで、その人の生物学的年齢を予測するように訓練されたとのこと。

その後、開発した深層学習モデルを利用して残る3万5917人を含む眼底画像データをスキャンし、予測された年齢と被験者の実年齢を比較しました。すると、深層学習モデルは被験者の実年齢を平均3.55年以内の誤差で予測することができたと研究チームは報告しています。

また、眼底画像が撮影されてから約11年後までに1871人の被験者が死亡していたとのことで、網膜スキャンによる生物学的年齢と実年齢のギャップを、この死亡率データと比較する分析も行いました。その結果、網膜スキャンで予測された生物学的年齢が実年齢より高齢な人ほど、早死にするリスクが高いことも判明。たとえば、深層学習モデルが予測した年齢が実年齢より1歳年上だった場合、その後11年における死亡リスクが2%上昇したとのこと。一方、心血管系疾患やがんによる死亡は、網膜スキャンによる生物学的年齢と実年齢のギャップと関連しなかったそうです。


今回の研究結果はあくまで観察に基づくものであり、網膜スキャンによる年齢と死亡率の上昇をリンクさせる生物学的要因は不明ですが、「網膜が老化に対して非常に敏感な組織である」とする過去の研究を裏付けるものといえます。網膜には血管と神経の両方が含まれており、血管や脳の健康に関する重要な情報を伝達してくれる可能性があるとのこと。

これまでにも網膜スキャンから心血管疾患腎臓病老化の兆候を検出する研究は行われていましたが、「網膜スキャンによる生物学的年齢と実年齢のギャップ」が死亡率予測に使用できる可能性を示したのは今回が初だそうです。研究チームは、「網膜と実年齢のギャップと、心血管疾患やがん以外の要因による死亡率の重要な関連は、脳と目におけるリンクを示す証拠の増大と合わせて、網膜が神経学的疾患の『窓』であるという概念を支持する可能性があります」と述べています。

過去の研究では眼底画像から心血管疾患のリスクを予測できることも示されていますが、近年は医学の発展により心血管疾患に関連する死亡が減少しているため、網膜の生物学的年齢と心血管系疾患による死亡率の関連が低くなった可能性もあるそうです。なお、認知症を患って死亡した被験者は全体でわずか20人だったため、研究チームは網膜から予想される生物学的年齢と認知症の発生リスクを結びつけることはできなかったとのこと。

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身体の生物学的年齢を調べる他の手法には、DNAメチル化トランスクリプトームの測定などがありますが、これらの方法は網膜スキャンより正確ではなく、コストや身体的負担の問題もあります。一方、網膜スキャンは5分以内で簡単に完了できるため、網膜と身体の生物学的関連についての研究がさらに進めば、臨床医が患者の死亡リスクを測定する優れたツールが開発される可能性があるとのことです。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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