ハードウェア

クラウドの不具合で3Dプリンターが勝手に印刷し始める事態が発生


「3Dプリンターが突如勝手に印刷を始めた」という報告が、複数ユーザーから上がりました。これを受け、海外メディアからは「クラウドと接続されたデバイスが抱える危険性が露呈している」という指摘も上がっています。

3D printer nightmare fuel: Bambu X1C and P1P started printing while owners were asleep - The Verge
https://www.theverge.com/2023/8/16/23064592/bambu-print-asleep-cloud-outage


3D printers printing without consent is a cautionary tale on cloud reliance | Ars Technica
https://arstechnica.com/gadgets/2023/08/3d-printers-print-break-on-their-own-due-to-cloud-outage/


Cloud glitch causes 3D printers to start on their own, spooking owners | TechSpot
https://www.techspot.com/news/99884-cloud-glitch-causes-bambu-3d-printers-start-automatically.html

2023年8月15日頃から、Bambu Lab製の3Dプリンターが急に出力を開始したり、逆に起動しなくなったりするという問題が複数報告されるようになりました。


Reddit上でもBambu Lab製の3Dプリンターが所有者の入力なしで突如出力を開始するという問題が複数報告されています。


BambuLab bug causes printers to start printing in the middle of the night, damaging many peoples printers and causing a potential fire hazard.
by u/metal079 in 3Dprinting


なお、上記の問題により3Dプリンターのノズルやその他のコンポーネントが曲がったり破損したり、出力した印刷物の上に別の印刷物をプリントしてしまったりという問題が報告されていました。

ユーザーから寄せられた多数の不具合報告に対して、Bambu Labは2023年8月16日に公式ブログを更新し、問題についての初期調査結果を公開しました。これによると、Bambu Labのクラウドで2023年8月15日に予期しない障害が発生し、これによりオープンソースソフトウェアであるBambu Studioからの印刷ジョブを送信することができなくなった模様。その結果、障害発生時に電源が入っていた3Dプリンターで、障害回復後に印刷ジョブが送信され、「3Dプリンターが突如勝手に動き始めた」ように見えると事態が起きたのではと報告されています。

Initial Investigation in the Bambu Cloud Temporary Outage
https://blog.bambulab.com/cloud-temporary-outage-investigation/


Bambu Labは印刷ジョブの誤送を「ジョブジャミング」と呼んでおり、「クラウドで障害が発生したことで、サービスが不安定になり、印刷ジョブがプリンターに送信されたものの、システムは受信確認をできませんでした。この事態に混乱したユーザーが手動で印刷ジョブを再送したことで、印刷が繰り返し行われるという事態が発生したようです。これは十分に文書化されたいくつかの事例で確認されており、クラウドサービスによる自動再試行も影響している可能性があります。ただし、これについては引き続き調査を実行中です」と説明しています。

さらにその後、Bambu Labは8月18日にも公式ブログを更新し、今回の問題はクラウド接続で利用される「MQTT SDK」というソフトウェア開発キットが原因で発生したと報告しました。

Update for Cloud Downtime
https://blog.bambulab.com/update-for-cloud-downtime/


Bambu Labによると、2つのMQTT SDKクライアントのうち1つがタイムアウトにより切断されました。通常、サービスは自動的に接続を復元しますが、接続が再確立されていないにもかかわらずサービスは正常な接続レポートを返してしまった模様。その結果、多数の印刷ジョブが蓄積することとなり、障害回復後に3Dプリンターが勝手に印刷を開始するという事態が多発することにつながったそうです。

もうひとつの問題が、「APIアクセスリクエストがAPIサービスに影響をおよぼし、タイムリーに応答できなくなった」という点。Bambu Studioにはクラウドにアクセスした直後に印刷リクエストを再開するロジックが実装されているため、APIサービスの容量を超えるAPIアクセスの呼び出しが蓄積されることとなってしまった模様。

ジョブジャミングを起こさないように、LIDARを搭載したBambu Lab製の3DプリンターであるX1シリーズでは、プリンターで印刷したあとのモデルを取り外さないまま次の印刷を開始していないかどうか確認するための新しいファームウェアが配布されました。プリンターは毎回印刷前にこの検証を実行し、問題を検出した場合はユーザーの介入と確認を求めるメッセージをプリンター本体のディスプレイやBambu Studio、Bambu Handyに表示するようになります。

さらに、LIDAR非搭載のP1シリーズでは印刷を開始する前に出力台を清掃するよう促すメッセージが、印刷するたびにプリンター本体のディスプレイ、Bambu Studio、Bambu Handyに表示されるようになります

なお、どちらの3Dプリンターでもこれらのオプションを有効あるいは無効にすることができますが、デフォルトではこのオプションが有効になるそうです。


この他、3Dプリンターのセキュリティと安全性を高めるために、ホットエンドとヒートベッドの温度を継続的に監視し、障害が検出された際にはプリンター本体のディスプレイ、Bambu Studio、Bambu Handyに警告メッセージを表示するアップデートも実施予定です。

さらに、クラウド経由での印刷ロジックも大幅に改善し、印刷が開始されるたびにプリンターがタイムスタンプをチェックし、厳密な設定に従っていない古い印刷ジョブを自動で破棄するようにシステムを変更します。この変更はすでにサーバーに実装されていますが、ファームウェアアップデートでも実行される予定です。

加えて、将来のファームウェアアップデートではLANモード機能が実装され、セキュリティとシステムの機能が向上します。他にも、ファイル管理およびメディアダウンロード機能が実装されるほか、接続用のユーザー証明書認証が利用可能となり、共有ネットワーク環境での安全な接続を確保できるようになります。


Bambu Lab製の3Dプリンターで発生した不具合を受けて、海外メディアのArs Technicaは「深夜に突如起動して勝手に印刷を始める3Dプリンターは、クラウドに依存する消費者向けテクノロジー製品固有のリスクを思い出させるものです。3Dプリンターが発熱体を備えた遠隔制御可能なデバイスであることを考慮すると、この懸念は特に顕著です。3Dプリンターの所有者はプロジェクトを監督せずに印刷するためにプリンターを放置したり、誰もいないのに電源を入れたままにしたりすることがあります」と述べ、クラウド経由で利用する3Dプリンター特有の危険性を主張しています。

実際、ジョブジャミングを経験したユーザーの中には、「家にいてプリンターの電源を切ることができてよかったです。印刷ジョブの焼き付きにより、ホットエンドに損傷がみられました。今回の不具合はBambu Lab製3Dプリンターで初めて起きた不具合でしたが、自分がいない間に3Dプリンターで長時間印刷を行うことが怖くなっています」と語る人もいました。

なお、Bambu Labは今回のジョブジャミングにより3Dプリンターのパーツが故障したというユーザーに対して、交換部品を無料で提供すると約束しています。

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in ソフトウェア,   ハードウェア, Posted by logu_ii

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