サイエンス

読書をすることがメンタルヘルスやキャリアにも良い影響を与えると研究者が主張、読書習慣を身につけるためのアドバイスも


近年はTikTokやInstagramのショート動画やX(旧Twitter)の短文など、短時間で刺激が得られる娯楽が人気であり、楽しむのに長い時間がかかる読書からは遠ざかっているという人もいるはず。ところが、オーストラリア・ロイヤルメルボルン工科大学の行動経済学者であるメグ・エルキンス氏らは、読書をすることがメンタルヘルスや仕事のキャリアに良い影響をもたらすと主張し、実際にオーストラリアの若者を対象にした研究結果を報告しています。

Full article: Cognition and curiosity:Strategies for firms to recruit curious employees
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/00036846.2023.2174943


Why reading books is good for society, wellbeing and your career
https://theconversation.com/why-reading-books-is-good-for-society-wellbeing-and-your-career-200447

エルキンス氏らは、さまざまなSNSで短時間のコンテンツを大量に摂取することは集中力を損ない、SNSに気を取られることがストレスを増加させ、他人と自分を比較することによってメンタルヘルスが悪化すると指摘。「より良いメンタルヘルスのために、本を呼んでください」と主張しています。

これまでの研究では、本を読むことが多くのメリットをもたらすことが示唆されています。たとえば、フィクションを読むことはキャラクターの目で世界を見るプロセスを通じ、人の共感力を高めることが示されているほか、読書はヨガと同じくらいストレスを軽減するという研究結果も報告されています。


新たにエルキンス氏らの研究チームは、「読書が人の好奇心を発達させるのかどうか」を調べる研究を行いました。歴史に残るさまざまなイノベーションは好奇心によってもたらされたものであり、好奇心はGoogleなどのテクノロジー企業が採用時に重視する資質のひとつとなっているため、好奇心を育むことは人生のキャリアにおいて重要です。

研究チームは15歳~25歳の若いオーストラリア人を追跡調査するLongitudinal Surveys of Australian Youth(LSAY:オーストラリア若者縦断調査)からデータを抽出し、読書習慣と好奇心の関連について分析しました。LSAYにはこれまでに1998年・2003年・2006年・2009年・2015年の計5つの調査グループが存在しており、各グループごとに1万人を超える被験者を10年間にわたり追跡しています。被験者は毎年、達成したことや願望、教育レベル、雇用状況、人生の満足度といった項目について回答しており、それぞれの項目が時間と共にどのように変化したのかを知ることが可能です。

研究チームは被験者の多くが就職している、あるいは就職を考え始めている20歳の時点における好奇心のレベルと、それまでの人生における読書習慣の関連を調べました。調査データには被験者の読解力や数学、科学的な能力に関するテストのスコアや、娯楽目的の読書に費やした時間、新聞や雑誌を読む時間、図書館の利用頻度などに関するアンケート結果が含まれています。


また、好奇心の測定には「新しいものを学ぼうとするかどうか」「なぜ世界が今の状態にあるのかを考えるかどうか」「理解していないことについてもっと知りたいかどうか」「新しいアイデアを見つけたいと思うかどうか」「特定のものがどのように機能するか気になるかどうか」といった質問の答えが用いられました。

研究チームは統計モデリングを使用して環境や人口統計学的な要因を制御し、10代の頃の読書習慣が20歳時点における好奇心の程度に及ぼすかどうかを分析しました。その結果、すべての調査集団において本や新聞を娯楽のために読む傾向は、好奇心のレベルと正の相関がみられました。研究チームは、「読書の重要性を過小評価することはできません。文献は学問的に重要なことを教えてくれますが、より深いレベルで、青少年の重要な時期における知識と理解への渇望と関連しているようです」と述べています。


今回の研究結果は青少年を対象にしたものですが、より年齢が上であっても読書が好奇心を育む可能性は十分にあり、少なくともメンタルヘルスの点でSNSよりも優れていると研究チームは指摘。新たに読書習慣を身につけたい人に向けて、以下のようなアドバイスを送っています。

・本を常に持ち歩くか、家の中の手に取りやすい場所に本を置いておく。
・1日のうちに20分でいいから「読書する時間」を設定しておき、読書の習慣を強化する。
・ある本が楽しめない場合は、無理せず別の本を読む。

エルキンス氏らは、「読書はあなたの気分をよくしてくれるでしょう。そして、将来の雇用主から『どんな本を読んでいるのか?』と聞かれた時に備えておきましょう」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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