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900万円払ってウェブサイト改善のため「SEO代理店」を利用したらサイトがぐちゃぐちゃになった上に何の成果も得られなかったという体験談


ウェブサイトやウェブサービスにアクセスしてくれる訪問者を増やすためには、検索結果の上位に表示されるためのSEO(検索エンジン最適化)が重要になります。SEO対策のためにはさまざまな方法が考えられますが、より大きな効果を期待して「SEO代理店」に頼った結果、うまくいかないどころかサイトの見た目や構造がぐちゃぐちゃに悪化し、まるで良い結果が得られなかったのに6万2000ドル(約900万円)も費用がかかったという体験談を、ウェブサイトやアプリを開発する代理店のTinloofがブログで詳細に語っています。

The SEO scam: 62,000 dollars later
https://tinloof.com/blog/the-seo-scam-62000-dollars-later


Tinloofの共同創設者であるオマール・ベンセディク氏によると、Tinloofはサービスを宣伝する一環として技術的なブログコンテンツを投稿していましたが、ブログの読者と顧客が一致しないなど、うまく誘導をできていなかったそうです。そこで、Tinloofの適切なターゲットにブログを届けるためにSEO対策を開始し、SEOに関する助言と提案を行う代理店の中から1つを選択してサポートを依頼することにしました。

ベンセディク氏は代理店がSEO戦略を提案してくるまでの1カ月間を興奮しながら待っていたそうですが、最初に新しいURLを提案された時、「興奮は失望に変わりました」と語っています。代理店が提案したものは、現在のサイトマップのURLに複雑な構造を付け加えるというもので、ベンセディク氏は「私たちは長くて複雑なURLに満足していませんでした」と話しています。ただ、「SEOの専門家」を信頼して、提案に従うことにしたそうです。


また、サイト内の記事を戦略的にグループ化して、内部リンクで関連記事同士をつなぐことで、記事全体のSEO評価を高める「トピック・クラスター」という方法も代理店から提案されました。結果としてTinloofのブログは、以下の画像のように相互リンクされることとなりました。


その後、主にSEO代理店が実施した取り組みとしては、「コンテンツ制作」「デジタルPR」「SEO戦略」の3分野がありました。

「コンテンツ制作」では、Tinloofのサービスをより伝えられるように、サイトのページ構造を変更し、コンテンツを追加することを代理店は提案しました。しかし、実際に代理店がTinloofに書いてきたコンテンツは「退屈で、繰り返しが多く、間違いまみれで、表面的なもの」だったとのこと。ベンセディク氏は「私たちは専門的なトピックを扱っているため、一般のコピーライターがこのようなトピックを効果的に扱うことを期待するのは無理があります。私たちのウェブサイトにこのような低品質のコンテンツが掲載されることは、全く容認できませんでした」と話しています。

結果として、ページヘッダーやよくある質問、キーワードの量やその他の詳細に関する代理店の指示を参考にしながら、Tinloofは自分たちでコンテンツを書いて追加したそうです。また、代理店は「同じサービスに対して異なる文言で別のページを作成する」ということも提案しましたが、必須ではないのに維持しなければいけないページが増えることになった模様。


SEO対策として行ったコンテンツの追加と更新ですが、ベンセディク氏は「私たちは、このアプローチがユーザーの獲得率に悪影響を及ぼし、ブランドイメージを損なうことになると確信していました」と述べ、「訪問者を惹きつけないコンテンツで上位にランクインしても何の意味があるでしょうか。これが検索エンジンでのランク付けに必要な条件である場合、検索エンジン自体に何か問題があることになります」と問いかけています。

「デジタルPR」に関しては、代理店が行ったのは「バックリンクの購入」でした。バックリンクとは他のウェブサイトからのリンクであり、リンクが増えるとサイトへの流入を増やすことができるほか、「外部からの信頼を多く得ているサイト」と見なされるドメインオーソリティを高めることができます。しかし、バックリンクを購入することはGoogleによって禁止されています。

ベンセディク氏は怪しく低品質なビジネス雑誌からのリンクを確認しましたが、そのビジネス雑誌のサイトは驚くほど高いドメインオーソリティを持っていたため、「インターネットの汚い部分に入ってしまったような気分でした」と語っています。なお、Tinloofは代理店から「10月分のリンク代」として560ドル(約8万円)が請求されたそうです。


「SEO戦略」については、構造化データを記述するフォーマットであるJSON-LDを活用することや、内部リンク戦略、構造化マークアップについてアドバイスがありました。内部リンク戦略は効果的ですが、できるだけ多くの内部リンクを詰め込もうとした結果、コンテンツがサイト内で過負荷になってしまったそうです。

また、Tinloofは代理店によるSEO対策をまとめた月次レポートを毎月受け取っており、「SEOのための戦略と言うより、彼らの仕事をより正当なものに見せるための戦術だったのではないか」とベンセディク氏は述べています。


ベンセディク氏は代理店にSEOを任せた問題点として、SEO代理店の仕事は媒体に関係なく検索エンジンでランク付けすることであり、その意味では正当なものであったかもしれないと指摘しつつ、その方策への疑問を呈しています。

結果として、多くの時間と資金を投資したにもかかわらず、TinloofにおけるSEO対策の取り組みは何の成果も得られなかったとのこと。しかし、SEO対策の中止を代理店に伝えたところ、「契約を更新せずにキャンセルするのは遅すぎる」と言われ、その後は何の役にも立たないと感じているサービスに資金を費やし続けることになったそうです。


ベンセディク氏が「TinloofはSEO対策を行う必要はなくなりましたが、契約は続きます。その時間はどうするつもりですか」と代理店に尋ねたところ、代理店からは「リードがまったく見られなかったと聞いて残念です。私の率直な意見としては、私たちがお客様に提供するこのプランが、お金をかけてリードを獲得するための最善の方法だと考えています。ご指摘の通り、私たちは契約条件によってかなり制約を受けており、できる限りのことをせずに、ただ料金を受け取って何も提供しないのは本当に嫌なのです。そのため、リードが得られるとは約束できませんが、今後数カ月間、Tinloofを潜在的な買い手の目に触れさせるために全力を尽くします」という返答があったそうです。

TinloofはSEO代理店との契約で、最初は月額4000ドル(約58万円)を支払っていましたが、月によってはより効果的な結果を期待してオプションを追加するなどして、より高額な支払いを行っています。その結果、契約終了までに61,806.71ドル(約897万円)を費やす羽目になっています。


ベンセディク氏は「契約は終了し、経済的な打撃は受けましたが、多くのことを学びました。私たちはこの知識を皆さんと共有し、皆さんが私たちよりもしっかりと準備できるようにしたいと考えました。私たちは、それらを使用して作成されたすべてのコンテンツをサイトから削除しました。削除する時は非常に癒されると感じました。そして今、私たちは質の高いコンテンツを提供することに集中することに戻っています。読者に届いて顧客につながるコンテンツは、SEOガイドラインを使用せずに作った『本物のコンテンツ』であり、上位表示だけを目指して作成されたものではありません」と語っています。

また、このようなSEO対策がサイトやコンテンツの質を下げる要因になる不毛なものであると指摘し、「検索エンジンがアルゴリズムを改善するか、人々がChatGPTのようなソリューションにもっと頼って、検索エンジンへの依存度を下げるかのどちらかになることを願っています」と主張しています。

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in ネットサービス, Posted by log1e_dh

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