サイエンス

1800年前に種子島に住んでいた「広田人」はわざと幼児の頭蓋骨を変形させる風習を持っていた


かつて鹿児島県の種子島に住んでいた広田人と呼ばれる人々が、幼児の後頭部を意図的に変形させて絶壁頭にしていたことが、九州大学およびアメリカ・モンタナ大学の研究により判明しました。

Investigating intentional cranial modification: A hybridized two-dimensional/three-dimensional study of the Hirota site, Tanegashima, Japan | PLOS ONE
http://doi.org/10.1371/journal.pone.0289219

Unveiling Japan's ancient practice of cranial | EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/997922

Hirota people of Japan intentionally deformed infant skulls 1,800 years ago | Live Science
https://www.livescience.com/archaeology/hirota-people-of-japan-intentionally-deformed-infant-skulls-1800-years-ago

広田人とは、弥生時代末期から古墳時代まで、つまり3世紀から7世紀までの約400年間種子島に住んでいた人々のことです。種子島の南部には、広田人が海岸の砂丘に作った集団墓地である広田遺跡が残されており、そこでは数多くの人骨が見つかっています。

広田遺跡で出土した頭蓋骨は、後頭部が平らな傾向があることが指摘されてきましたが、この人為的な変形が意図的なものなのかそうでないのかは判然としていませんでした。

以下は、同じ時代の弥生人の頭蓋骨(上)と広田人の頭蓋骨(下)を比較したものです。後頭部の形がかなり違うことがわかります。


九州大学の瀬口典子氏らは、査読付き学術誌・PLOS Oneに論文が掲載された研究で、頭蓋骨の2D画像から頭蓋骨の輪郭の形状を分析し、頭蓋骨の表面の3Dスキャンの結果と組み合わせて、同年代の弥生人や縄文人と比較しました。

その結果、変形がある広田人の頭蓋骨には非常によく似た損傷があり、特に頭頂部で左右の頭蓋骨をつないでいる矢状縫合(しじょうほうごう)と、頭頂部と後頭部をつなぐラムダ縫合に異常な陥没があったことが確認されました。

広田人の頭蓋骨に見られる顕著な平板化と、今回の分析で見つかった縫合線のくぼみから、研究チームは「広田人の頭蓋変形(とうがいへんけい)は意図的なものである可能性が非常に高い」と結論づけました。


今回の研究ではまた、頭蓋骨の変形が男女を問わず行われていたことも判明しています。広田人が一体なぜわざわざ子どもの頭蓋骨の形を変えたのかまではわかっていませんが、研究チームは広田人としてのアイデンティティを保つためではないかと考えています。また、広田遺跡からは副葬品として見事な貝の装飾が見つかっていますが、一部の貝は種子島の周囲では採取できないものであったことから、貝の交易に関連したものであるともいわれています。

以下は、典型的な広田人の遺骨です。広田人は、貝でできた腕輪やペンダントなど数々の装飾品を身につけていました。


広田人以外の人々も頭蓋骨を変形させる風習を持っており、これまでに中世ヨーロッパの女性やユーラシアに住んでいたフン族、マヤ族、アメリカ先住民、ペルーのパラカス文化の人々など、多くの集団で頭蓋骨を変形が行われてきたことがわかっています。

瀬口氏は「今回の発見は、古代社会における意図的な頭蓋変形の実践についての理解に大きく貢献するものです。この地域でのさらなる調査により、東アジアや世界におけるこの習慣の社会的・文化的意義についてのさらなる洞察が得られることを期待しています」と話しました。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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