仕事にAIを使う労働者は「不眠症や飲酒量の増加」に悩まされやすいことが判明、「AIは人間っぽくすべき」と専門家
大手コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーが、社員の半分以上がAIを活用していると公表するなど、AI技術の発展によりAIと働く機会は今後増加していくことが予想されます。AIとの協力には作業の負担を軽減して燃え尽き症候群を回避するのに役立つというメリットがあると報告されていますが、新たな研究により「AIと頻繁にやりとりする労働者はメンタル上の問題に直面する可能性が高い」ことも判明しました。
No person is an island: Unpacking the work and after-work consequences of interacting with artificial intelligence.
https://doi.org/10.1037/apl0001103
Loneliness, Insomnia, Drinking: The Costs of Working With AI Systems
https://scitechdaily.com/loneliness-insomnia-drinking-the-costs-of-working-with-ai-systems/
AI革命が到来し、AIシステムが労働者の仕事や生活にますます深く組み込まれるようになるにつれて、労働者はこれまでの仕事が一変し、人間の同僚ではなくAIとやりとりするようになるといった変化を経験します。
前職で勤務した投資銀行でAIシステムを使っており、このことからAIの研究に関心を持つようになったというジョージア大学テリー・カレッジ・オブ・ビジネスのポック・マン・タン氏は、「AIシステムの急速な進歩は、新たな産業革命の火付け役として多くの利益をもたらす一方で、従業員に精神的もしくは肉体的なダメージを与える可能性など、未知の危険もはらんでいます。人間は社会的動物ですので、AIシステムの使用により孤立することは、私生活にも有害な影響を及ぼすかもしれません」と語りました。
AIとともに働くことの影響を調べるため、タン氏らの研究チームはアメリカ、台湾、インドネシア、マレーシアの4カ所で、実際に職場にAIを導入している企業で働く人を対象とした調査を実施しました。
その結果、社会とのつながりに不安感や心配を感じる傾向である「愛着不安(attachment anxiety)」のレベルが高い労働者ほど、AIシステムを使った仕事に対する孤独感や不眠症といったネガティブな反応と、同僚を手助けする可能性が高いというポジティブな反応の両方が強く出ることがわかりました。
例えば、台湾のバイオメディカル企業でAIシステムを扱うエンジニア166人を対象とした3週間の調査では、AIとのやりとりが多い従業員ほど孤独感、不眠症、終業後のアルコール摂取を経験しやすかった一方で、同僚を助ける行動も多く見られました。
また、インドネシアの不動産コンサルタント126人を対象とした別の実験では、対象者を「3日間できるだけAIを使うグループ」と「AIを使わないグループ」に分けたところ、AIを積極的に使用したグループでは孤独感や不眠症などが多く発生するという結果になりました。ただし、インドネシアでは飲酒が禁じられているイスラム教を信仰している人が多いためか、飲酒量の増加はありませんでした。
アメリカの社会人214人を対象としたオンラインでの実験や、マレーシアのハイテク企業の従業員294人を対象にした実験でも、台湾やインドネシアのケースと同様の結果が得られたとのことです。
一連の調査と実験の中では、AIをよく使う労働者は同僚をよく助けるという一見するとポジティブな結果も得られましたが、研究チームは「この反応は彼らが孤独感を覚えたり、社会的接触を求めたりしたことによって引き起こされた可能性があります」と指摘しています。
この研究はあくまでAIの使用と孤独感などの症状との間の相関関係を示したもので、AIの使用がメンタルヘルスの問題を引き起こしたという因果関係を証明したものではない点に注意が必要です。
その上で、タン氏は「今後AI技術の開発者は、AIに人間の声のような社会的機能を持たせ、人間のようなやりとりをエミュレートすることを検討すべきです。また、雇用主がAIを使った作業の頻度を制限し、従業員に社会的な接触の機会を提供するのもいいでしょう。AIの利用は今後も拡大し続けるでしょうから、そうしたシステムを使って働く人々への潜在的な悪影響を軽減するために、私たちはすぐに行動を始める必要があります」と話しました。
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