サイエンス

「恐竜VSほ乳類」の瞬間を記録した化石が見つかる、意外にもほ乳類が優勢だった可能性


約1億2500万年前に起きた「恐竜VSほ乳類」の戦いの様子を保存した化石についての論文が、学術誌のScientific Reportsに掲載されました。恐竜が生息していた中生代のほ乳類については、「捕食者である恐竜から隠れるように生きていた被捕食者」というイメージがあるかもしれませんが、意外にもこの戦いはほ乳類が優勢だったことが化石から示唆されています。

An extraordinary fossil captures the struggle for existence during the Mesozoic | Scientific Reports
https://doi.org/10.1038/s41598-023-37545-8


Unusual fossil shows rare evidence of a mamma | EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/995575

Final moments of dinosaur and mammal's epic 'mortal combat' battle preserved by volcanic eruption | Live Science
https://www.livescience.com/planet-earth/fossils/final-moments-of-dinosaur-and-mammals-epic-mortal-combat-battle-preserved-by-volcanic-eruption

It Turns Out An Ancient Creature Actually Preyed Upon Dinosaurs : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/it-turns-out-an-ancient-creature-actually-preyed-upon-dinosaurs

2012年に中国東北部の遼寧省で、ほぼ完全な恐竜とほ乳類の体が含まれる約1億2500万年前の化石が発掘されました。中生代は現代の遼寧省に当たる地域の火山活動が活発であり、この化石は火山灰や溶岩が水と混ざった火山泥流に覆われた生き物が完全な化石となって保存されている、「中国の恐竜ポンペイ」と呼ばれる地層で発見されたとのこと。

恐竜の方はオウムのようなくちばしが特徴の草食恐竜・プシッタコサウルスの一種であるプシッタコサウルス・ルジアトゥネンシス(Psittacosaurus lujiatunensis)であり、ほ乳類の方は中生代で最大のほ乳類・レペノマムスの一種であるレペノマムス・ロブストゥス(Repenomamus robustus)と特定されています。

写真の化石が以下。左側に頭があるプシッタコサウルスと、それにしがみつくような格好のレペノマムスの姿が確認できます。プシッタコサウルスの尻尾を含めた全長は約120cm、レペノマムスの全長は約47cmとのこと。いずれも成体になるとより大きなサイズになるため、今回化石となった個体は成長途中だったとみられています。


レペノマムスの頭部や脚をわかりやすく示した写真がこれ。プシッタコサウルスは後ろ脚を折り畳んで丸まっており、そのくちばしにレペノマムスの前脚が、胸のあたりにレペノマムスの頭部が、すねのあたりにレペノマムスの後ろ脚が絡みついています。


レペノマムスの頭部をよく観察すると、プシッタコサウルスの肋骨に歯が食い込んでいます。研究チームは、プシッタコサウルスの骨格はきれいに整っており、死んだ後にレペノマムスが死骸をあさったとは考えにくい上に、死骸を食べるならこのように2体の体は絡み合わないと指摘。これらの点から、この化石は「ほ乳類であるレペノマムスが、恐竜であるプシッタコサウルスを攻撃している最中のもの」だと結論付けました。


研究チームが「火山泥流に埋もれる直前のレペノマムスとプシッタコサウルスの姿」を想像して描いたスケッチが以下。現代の自然界でもより小さな肉食動物が大きな草食動物を倒すことはありますが、中生代から同様の事態が起こっていた可能性があるとのこと。


これまでにもレペノマムスの胃からプシッタコサウルスの骨が発見された事例はあったそうですが、その化石ではレペノマムスがすでに死んでいるプシッタコサウルスの死骸を食べたのか、それともプシッタコサウルスを襲って食べたのか判別できませんでした。今回の化石は、レペノマムスが定期的にプシッタコサウルスを襲って食べていた可能性が高いことを示しています。

論文の共著者でカナダ自然博物館の考古学者であるジョーダン・マロン氏は、「2体の動物は致命的な戦闘に陥って密接に絡み合っており、ほ乳類が恐竜の捕食者として行動したことを示す最初の証拠の1つです。この2種が共存していることは目新しくありませんが、この驚くべき化石を通して示された捕食行動は新しいものです」と述べました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

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