スマートフォンは2027年までに交換可能なバッテリーを搭載する必要があるという規制案を欧州理事会が採択、世界中のスマートフォンに影響を与える可能性
欧州理事会がポータブルバッテリーやリチウム電池等に関する規制案を採択しました。後は法案の署名を待つのみとなり、法案が成立すれば、メーカーはスマートフォンを含む家電製品全般に組み込まれたバッテリーを取り外し可能にすることを求められます。
Council adopts new regulation on batteries and waste batteries - Consilium
https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2023/07/10/council-adopts-new-regulation-on-batteries-and-waste-batteries/
Phones with replaceable batteries to be required by 2027 thanks to the EU
https://www.androidauthority.com/phones-with-replaceable-batteries-2027-3345155/
2023年時点で出回っているスマートフォンの多くは内蔵バッテリーを容易に取り外すことができず、無理やり取り外すと補償の対象外となることもあります。バッテリーの交換が難しいとバッテリーの回収率にも悪影響が生じ、バッテリーに含まれている貴重な資源を再利用することができなくなるという問題にも発展することから、欧州理事会および欧州議会がバッテリーに関する規制案の採択を押し進めていました。
スマホのバッテリー交換をガラケー並みに簡単にする法案がEUで可決、スマホの使用可能期間延長に期待 - GIGAZINE
2023年6月14日には欧州議会による関連法案の承認が行われ、続いて2023年7月10日に欧州理事会でも採択が行われたため、後は法律の制定に向けて欧州議会および欧州理事会の署名を待つのみとなっています。
この法案では、生産者に対して廃ポータブルバッテリーの回収目標値を設定するほか、リサイクルの際の要件を定め、家電製品に組み込まれたバッテリーをエンドユーザーが取り外せるよう設計することを求めています。
法案ではバッテリーを交換可能にする条項の猶予を2027年までとしており、メーカーは期限までに端末の設計を大きく見直す必要があります。なお、欧州側は「十分な時間を与えている」との姿勢。
テクノロジー系メディアのAndroid Authorityは「欧州理事会が管轄するのはヨーロッパだけで、この法律は他の地域には影響しません。しかし、SamsungやGoogle、Appleなどの企業はヨーロッパに特化したデバイスを設計しているわけではないというのも事実です。バッテリー交換可能な欧州向けデバイスと、交換不可能なその他地域向けデバイスの2種類をメーカーが作るわけはなく、つまるところ今回の法律は世界中のスマートフォンを変えることにつながるわけです。タブレットやノートパソコン、電気自動車など、充電式バッテリーを搭載するすべてのものも変わることになります」と指摘しています。
バッテリー交換が容易になるという点ではユーザーにとって歓迎され得る法律ですが、設計が変更されることによるコストの増加や、高度な防水規格を保てなくなる可能性への懸念も生じます。Android Authorityは「すぐに何かが変わることはないでしょう。しかし、メーカーがこの新しい法律への準拠を進めるにつれて、少し変わったデザインのスマートフォンを目にするようになるのは間違いありません」と述べました。
・関連記事
スマホのバッテリー交換をガラケー並みに簡単にする法案がEUで可決、スマホの使用可能期間延長に期待 - GIGAZINE
バッテリーやカメラなどのパーツを簡単に交換できるスマホ「Fairphone 4」が脱GoogleなOS「/e/OS」搭載になりアメリカで販売開始 - GIGAZINE
iPhoneのバッテリー交換費用が2023年3月から3000円値上げ - GIGAZINE
MacBook Proのバッテリー交換マニュアルは162ページの分厚さ、「AppleはMacを修理しにくくさせている」とiFixitが苦言 - GIGAZINE
バッテリーを搭載する製品について「バッテリーを交換可能にすること」を義務づける規則を欧州議会が採択 - GIGAZINE
「AirPodsのバッテリー交換は不可能」問題の焦点は「修理する権利」という主張 - GIGAZINE
・関連コンテンツ