スマホのバッテリー交換をガラケー並みに簡単にする法案がEUで可決、スマホの使用可能期間延長に期待
記事作成時点で出回っているスマートフォンのバッテリーを交換するには、専門ショップへの依頼や専用工具の準備が必要です。新たに欧州議会でバッテリーに関する法案が可決し、将来的に「スマートフォンのバッテリーをユーザー自身で交換可能にする」という設計が各メーカーに義務付けられる可能性が浮上しました。
Making batteries more sustainable, more durable and better-performing | News | European Parliament
https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20230609IPR96210/
European Union votes to bring back replaceable phone batteries | TechSpot
https://www.techspot.com/news/99102-european-union-votes-bring-back-replaceable-phone-batteries.html
いわゆるガラケーでは裏面のフタをパカッと開けるだけでバッテリー交換が可能だったため、充電を忘れがちなユーザーや通信量の多いヘビーユーザーは「交換用のバッテリーを持ち歩いて、バッテリーが切れたら交換する」という運用方式でバッテリー切れの影響を最小減に抑えることができました。また、登場初期のスマートフォンには「背面がパカッと開く」という設計を採用しているものも多く存在しており、バッテリーを容易に交換できました。
しかし、「背面がパカッと開くスマートフォン」は徐々に数を減らし、バッテリー交換の困難な機種が増えました。記事作成時点で販売されているスマートフォンのほとんどは専用の工具がなければバッテリーを交換できず、「バッテリーが切れたらバッテリーを交換する」という運用が不可能になった他、バッテリーが劣化した際の交換も難しくなっています。
そんな中、2023年6月14日に欧州議会でバッテリーの持続可能な利用に関する法案が賛成多数で可決しました。EUは法案の成立によって予想される主な措置の1つに「持ち運び可能な家電製品のバッテリーは、ユーザーが容易に取外して交換できるようにする」というものを挙げており、EU圏内にスマートフォンを出荷するメーカーには将来的にバッテリー交換を容易にする義務が生じる可能性があります。
また、EUは家電製品のバッテリーを交換可能にする以外に、以下のような措置の可能性を指摘しています。
・電気自動車用バッテリーや電動移動体に使われるLMTバッテリーなど、容量が2kWhを超えるバッテリーへの二酸化炭素排出量ラベルの表示。
・容量が2kWhを超える産業用バッテリーにバッテリーの材料や組み立て工程を明文化する「バッテリーパスポート」の導入。
・厳格なバッテリー廃棄物収集目標の設定。具体的には、ポータブル機器用バッテリーでは2023年までに45%、2027年までに63%、2030年までに73%。LMTバッテリーの場合は2028年までに51%、2031年までに61%とすること。
・廃棄バッテリーから収集する資源量を増加。具体的には、リチウムは2027年までに50%、2031年までに80%。コバルト、銅、鉛、ニッケルは2027年までに90%、2031年までに95%とすること。
・バッテリー生産に使うリサイクル資源を増加。具体的には、発効後8年以内にコバルトは16%、鉛は85%、リチウムは6%、ニッケルは6%。発効後13年以内にコバルトは26%、鉛は85%、リチウムは12%、ニッケルは15%とすること。
なお、EUのバッテリーに関する法案可決を歓迎する声が上がる一方で、ニュース共有サイトのHacker Newsには「大きな問題はバッテリーではなくソフトウェアにあります。多くのメーカーはスマートフォンのハードウェアが使用不能になるまえにソフトウェアのサポートを終了します。さらに、メーカーはスマートフォンのブートローダーのロック解除を困難にして(任意のOSのインストールを妨げて)います」という「スマートフォンの使用可能期間が短い原因はバッテリーだけでなくソフトウェアの提供姿勢にもある」とする意見が投稿されています。
また、Hacker News上では2000年代に登場した超小型PC「hp Jornada 728」を2023年時点でも使い続けているという記事を参考に「スマートフォンのような小型かつ高性能なデバイスの性能を発揮させるには、自由にソフトウェアをインストールできる仕組みが必要」とする議論が巻き起こっています。
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