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MetaがEU最高裁のプライバシー侵害訴訟で敗訴、競争規制当局も個人情報の取り扱いについての審査が可能に


EUの最高裁判所にあたる欧州司法裁判所(CJEU)が2023年7月4日に、Metaに対してユーザーの同意なくデータを収集することをやめるよう指示したドイツの規制当局の決定を支持する判決を行いました。

EU’s top court rules against Meta in key data privacy case - SiliconANGLE
https://siliconangle.com/2023/07/04/eus-top-court-rules-meta-key-data-privacy-case/


Meta loses as top EU court backs antitrust regulators over privacy breach checks | Reuters
https://www.reuters.com/technology/german-antitrust-watchdog-can-add-privacy-breaches-meta-probe-eu-court-says-2023-07-04/


今回のCJEUの判決は、ドイツの規制当局である連邦カルテル庁が2016年に行ったMeta(当時のFacebook)への調査が発端です。

Facebookが別のサービスの個人情報を流用してターゲット広告を表示したことが問題となったこの調査の結果から、連邦カルテル庁は2019年に「WhatsAppやInstagramといったほかのサービスからのデータや、ウェブサイトへのアクセスの追跡を通じて得られたデータを、ユーザーの同意なしでFacebookのデータと組み合わせて広告をパーソナライズするのは、EU一般データ保護規則(GDPR)違反」として、ユーザーの承認を得ずにFacebook外のデータを使用することを禁止すると発表しました。

規制当局の決定を不服としたMetaは、ドイツ・デュッセルドルフ高等地方裁判所の控訴審で「連邦カルテル庁の決定は権限の範囲を超えている」と主張して異議申し立てを行いました。これを受けて、ドイツの裁判所はこの件をCJEUに付託し、判断を委ねました。

ドイツの競争当局が、競争法ではないEUのGDPRを根拠として禁止命令を出すのが権限の逸脱にあたるかが焦点となったこの裁判で、CJEUは「事業者による支配的地位の乱用に関する審査においては、当該加盟国の競争当局が、GDPRの規則など競争法に関する規則ではないものを順守しているかどうかについても審査が必要な場合がある」として、連邦カルテル庁を支持する判決を下しました。


連邦カルテル庁のアンドレアス・ムント長官は、ロイターへの声明の中で「データは市場支配力を確立する上で決定的な要素ですので、大手IT企業が極めてプライベートなデータを扱うことは、独占禁止法で禁止される支配的地位の乱用に当たる可能性があるということです」と述べて、CJEUの判決を歓迎することを表明しました。

一方Metaはこの判決に対し、「私たちは裁判所の決定を吟味しており、いずれ詳細について発表する予定です」と述べるにとどめました。

競争当局が大手IT企業によるデータの使用を規制できるとしたこの判決は、ドイツ国外からも支持を集めています。フランス競争庁のBenoît Cœuré氏はTwitterで、判決を「競争の指標としてのデータ保護に関する画期的な決定」と評価しました。


一方、今後は競争当局もデータ保護に加わることに対し、慎重な見方もあります。法律事務所・Cleary Gottliebのトーマス・グラフ氏は、ロイターに対し「競争当局がデータ保護に乗り出すには、なぜそれが反トラスト法と関係があるのかを説明し、競争の制限や地位の乱用を証明し、GDPR当局と調整する必要があります。ですから、私は競争当局がGDPR当局にもなるかと問われれば、そうは思わないと答えます」と話しました。

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in ネットサービス, Posted by log1l_ks

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